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11. 『地獄骸』の実力

「やってしまえ、警備兵諸君!」


 村長の号令が村の入り口に響き渡る。

 それと同時、剣や槍を持った警備兵たちが投げやりな雄叫びと共に、俺たちへと突っ込んできた。


「これマジでシャレにならないぞ……」


 動揺する俺を、相手は待ってくれない。


 アンデッドたちの先頭に立っていた俺が、まず初めに攻撃を受けることは必然だった。

 俺と同年代くらいの青年が恐怖を瞳に宿らせて、手に持った槍を一直線に突く。

 その切っ先は、俺の鼻先をかすめた。


 一筋、傷口から血が流れ落ち、それにより大きな反応をしてみせたのは、攻撃を受けた俺自身ではなく、背後のアンデッドたち。


 低音の唸り声のようなものが幾重にも聞こえ、俺はそちらに視線を向けると、目を見開く。


 そこにあったのは、主を傷つけられて憤怒に身を落としたアンデッドの姿だった。


「お前ら、落ち着け!」


 俺は槍を持った青年から後ずさり、十分に距離を取った。

 相手の勘違いとはいえ、実際に俺が攻撃を受けてしまったのは良くなかった。


 主が傷ついたとなれば、通常好戦的なアンデッドたちの枷を解き放ちかねない。対話を優先することにも限界はある。一番言いつけをよく守る『地獄骸』でさえ、その身体には見たことのない邪悪な黒いオーラを纏っていた。


 レーナはアリカに手を引かれて、集団の後方へと避難したようだ。その判断は賢明である。

 この世界の文字召喚術師はその性質上、リアルタイムの交戦が苦手だ。実際の戦場でも、後方で召喚に徹するのが普通なのだと思う。


「早くあの召喚術師をやってしまえ! そうすれば、奴の軍は崩壊するだろう」


 そう喚く村長の瞳は恐怖で曇っていた。それもそうだろう。彼には現状が見えていない。


 たとえ、俺を倒したところでこのアンデッドたちは逆上して襲い掛かるのみだ。

 むしろ、アンデッドたちの暴走をせき止めている俺がいなくなれば、この村は壊滅してしまうだろう。


 剣と槍で武装した十数人の警備兵たちがじりじりと間合いを詰めてくる。

 完全無傷の決着はどうやら難しそうだ。


 ならば、最低限の武力で相手の武装を解除させるしかない。

 俺は目配せで『地獄骸』をそばへと呼んだ。


「ご指示を。召喚主」


『地獄骸』は俺が行動を起こすことを悟ったようで、最少の言葉で返答をする。

 つくづく、良い配下だ。……って、この発想がもうほぼ魔王なんだけれど。


 ともかく、俺は久しぶりに真面目な顔して命令する。


「いいか。戦意のある村人から戦闘能力を奪え。だけど、絶対に殺すな。重傷を負わせるな。最高の戦績は全員無傷であることを覚えておけ」


「やむを得ない場合は、どこまで負傷させても大丈夫でしょうか?」


 そんな責任重大な質問、してこないでほしい……。


「あーまあ、全治一日くらいだったらいいんじゃない? 後遺症残るようなのはなしで」


 すまん、村人たち。あんたたちが先に攻撃してきたのが悪いってことで、一つ許して欲しい。


「かしこまりました」


 恭しくお辞儀をする『地獄骸』。

 そして、彼は次の瞬間、村の入り口上空十メートルほどの高さへと跳躍した。


「えーー! そんな飛べたの!?」


 真顔を崩して、素直に驚く俺。

 それは村人たちも同じだ。


『地獄骸』が八つの手を握り締めると、その手の平に黒い光が収束し、八つの剣が顕現する。

 あー、そんな設定あったわと思っていると、彼は猛スピードで落下し、着地の激しい衝撃波で周囲の警備兵を全て吹き飛ばした。


 思っていた以上にS級モンスターの戦闘能力は凄まじいようだ。

 警備兵たちは全員、近くの地面に弾き飛ばされて、呻き声を上げている。

 あれ、大丈夫? 骨いってない? と心配になるが、見た目でそこまで重傷そうな人はいなかった。それでいて、起き上がれるほど元気な者もいない。


『地獄骸』は俺の命令通り、確かにちょうどいい塩梅で戦闘を終わらせてみせたのだ。

 すげえな、あいつ。


 警備兵が全滅したのを目の当たりにして、善良な村人たちは悲鳴を上げる。信じられないと言った目で俺を非難するように見てきた。


 俺は初めから戦う気がないと言っているのに、なんでこっちが悪者になるんだ……。

 村長は腰を抜かしたようで、地面に尻餅をついていた。


 俺もそろそろこの茶番に付き合ってはいられないので、少し威圧した態度を作って、彼に告げる。


「あの、すいません。とりあえず、俺の話をきちんと、正確に、聞いてもらえますか?」


『地獄骸』の動きの後では効果もてきめんだったのだろう。


 完全に怯えきった村長はようやく、俺の平和的な言葉の前に首を縦に振った。

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