第6話 税金の乱入者
メルミーがパエリアを食べ終わるとこんなことを言った。
「…………そういえばフィリナ今月の税金徴収って大丈夫なの?」
「正直言って厳しいですね……」
フィリナ営業スマイルが崩れ不安そうな顔になる。
この世界に来たばかりだが俺もその顔と言葉だけで意味は十分理解できた。
「実際に税金ってどれくらいとられるんだ?」
「貧民だと現在は500ナールですね」
貧民に求められる500ナール、これはどうやら貧民の平均月収の8割を占めるらしい。
そんな法外な税金が発生してるのならいくら良心的な値段だとしても外食なんてできないはずだ。フィリナのこのお店の売り上げが一気に下がるのも納得がいく。
「…………今月はいつも以上にお客さんいないけど」
「最低3000ナール程の売り上げは欲しいですね」
「…………税金徴収は明日。フィリナのお店の平均売上を考えると厳しい」
メルミーがあまり変わりない表情を少し暗くさせる。
確かに現状は厳しいと思う。俺が食べたチャーハンで10ナール、そしてメルミーが食べたパエリアでも30ナールだ。単純計算ならパエリアをあと100皿は作らないといけない計算となる。
「…………リク、いくら今日持ってる」
「無一文だ」
「…………使えない男」
すっごい汚物を見る目で見られた。いや仕方ないじゃん?だってほんの1時間前くらいに異世界召喚されたばかりなんですよ?この世界の通貨持ってる方がおかしいんですよ。
「…………なんかいい案ないの?」
メルミーが俺に聞いてくる。んーいい案ねーそうポンポンと思い着いたら楽なんだけどな。
あーでもそうだな、例えば…………
「メルミーが肩代わりしてあげたら?」
「…………そこで俺が払うって男らしさがないのが残念」
「いや、俺無一文っていったよね!?」
もうこの子かわいい顔して毒舌過ぎませんかね!?
いや、お金の貸し借りってあんましいいイメージないけどこの二人意外と仲が良いみたいだし貸し借りしてもよっぽどトラブルは起きないと思ったんだけどな。
「…………でも確かにいい案かもしれない」
だが俺の案は納得してくれたようだ。
「だ、ダメです!!大切なお客様のメルミーさんからそんなことできません!!」
とフィリナは拒否する。お金を借りればこのお店は来月は問題はない、もし俺がフィリナノ立場ならすぐに買うんだが。
「確かにそうすればしばらくは安泰化もしれません。しかしお金を借りてまで私はこのお店をやっていこうとは思っていません」
フィリナは静かにそう言った。経営者としてのプライドのようだ。
「…………フィリナがそこまで言うのなら私はなにもしません」
「すみませんせっかくの好意を」
フィリナが頭を下げる。
「でもさすがに明日じゃ間に合わないんだろ?結局どうするんだ?」
税金徴収の期日は明日までだ。
「そうですね、もしダメなら最悪このお母さんのブローチを売ろうと思います」
「それは…………」
と言いかけてやめた。確かに形見のブローチだとはいえ自分で決めたことを否定するのはよくないだろう。
少しの沈黙が起きた後ドアの金が鳴る音がした。
「それにこうやってお客様が来てくれる可能性だってまだあり……ます……し」
そしてフィリナの声がとぎれとぎれになる。
どうしたのだろうと振り返るとそこには青色の軍服を着た偉そうな男とその男と同じ服装を着た二人が入ってきた。
「税金徴収官です」
その男は汚い笑みでそう言った。
様々なトラブルがありやっと投稿できました。しかも結構短い話で申し訳ありません。次からちゃんと毎日更新していきたいと思います。
次話明日15日の18時ごろ投稿予定。