夢を追い求めし愚者の軍団
新しい登場人物
ヴィルヘルム・ラミン
レムのクラスの担任。
悪魔族の男性(見た目は人間と変わらない)。
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―――女子更衣室―――
素晴らしい…。
無駄な肉のない引き締まった肉体。
己が存在を強く主張する紅のポニーテール。
男性からも女性からも目を引きそうな綺麗な顔立ち。
これで男だったなら秘密裏にでも処理すべき対象ですが、嬉しい事に彼女は女性である。
そう。今。僕の目の前に――― 着替えかけの美女がいた。
「あ…う……? ふ、ふぇぇ…?」
何やら奇怪な声を発しているが、今はそんな事を気にしている暇はない。
何故なら今! 彼女は事態の推移について行けず、茫然自失としているからだ!
そして、それ以上に大切な事がある。
先程も言ったようにレムの体には無駄な肉がない。
そう――― 無駄な肉がないのだ!
そしてぇ!
胸がないと言う事はぁ!
女性の聖なる性具が装着されていないという事だぁ!!!
(※念の為言っておきますが無乳の人でもブラは付けます。
レムがそれを付けていないのは、本人が個人的に要らないと思ってるからです)
さぁ!
以上の要素から! 僕は今! ここで!
彼女のその素晴らしい平原を見つめ続ける事を―――強いられていr…
「キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!????」
ふっふっふっ。
いくら泣き叫ぼうが誰も来n…
「な、なんだ! 今の悲鳴は!」
「女子更衣室の方から聞こえたわ!」
「先生を! ヴィルヘルム先生を呼んで来い!」
……神よ、何故貴方はこうも僕に試練をお与えになるのだろうか…?
「おやおや、これはもう弁解のしようもありませんねケイ様?」
死神さんまでご到着してしまいましたよ?
「うわ! 何でこんな所にメイド!?」
「って、更衣室にいるのってレム様じゃない!
皆! 男子の目ぇ潰して! 私達のレム様が視線で穢されちゃう!!」
「おぃいいいいいい!!! 俺達はただ悲鳴を聞きつけてやって来ただk……(ブスっ)
んぁああああああああああ!? 俺の 高画質レンズがぁあああああああ!?!?」
あっという間にすごい騒ぎになってしまった。
…というか、やはりレムは同性にもモテてたのですね。
躊躇いもなく人の目を潰す辺り、最早狂信と呼べるレベルかもしれませんが。
そんな中、か細く震えた声で絞り出すようにレムは言う。
「あ…、あの、ケイ…頼むから、扉閉めて…みんな、見てる……///」
ふむ。その様にお願いされては紳士として答えないわけにはいきませんね?
―――ガチャン。ガチャ。
「って、おぃいいいいいいいいぃぃぃぃッ!?!?!?
なんでさっきの奴自分が更衣室に入ってから扉閉めてんだぁあああああああ!?!?」
「んなぁッ!? うわ! しかも鍵まで掛けてる!!」
「ケイ様~無駄な抵抗はやめて出てきて下さ~い。
今ならまだ、眼球を抉り出すくらいで済ませてあげますよ~?」
ふむ。これで外野は気にしなくて良いですね。
これでやっと二人きりになれました♪
「け、ケイ…? 何で更衣室に入ってくるの…?」
僕の知る凛々しいレムはどこへやら。
そこにはまるで小動物のようにプルプル震える可愛い兎のようなレムがいました。
「おや? レムは僕と一緒にいるのはお嫌ですか?」
「いや、別にケイといるのは嬉し…いや、でも…」
何やら声が小さすぎて聞き取れませんね。
まぁ、本気で嫌がっているようにも見えないので大丈夫でしょう。
「どうしましたレム? 少し前までの貴方はどこへ行きました?
そんないつまでも腕で胸を隠してないで、騎士ならばもっと堂々としていなさい」
「う、うぅぅぅ…そんなの無理だよぉ……」
おぉ!
あまりに追い詰められたせいか軽く幼児退行を起こしてますよ?
間違いなくレア物ですね。いやぁ、今日はとても良い日になりそうです。
「は、恥ずかしくて……死にそうだよぉ」
「安心しなさいレム。人間どれだけ恥をかいても、それで死ぬ事はありません」
「そ、そういう事じゃないよぉ、ケイのばかぁ! うわぁあああん!」
おっと、ついには泣き出してしまいましたか。これは、さすがにまずいですね。
私は泣き出す寸前くらいまで苛めるのが大好きな紳士であって、
泣き出した人間をさらに言葉で痛めつけるような鬼畜とは違いますので。
「ほら、レム。顔を上げて、もう一度自分の体をご覧なさい。
貴女の体のどこに恥じ入る所があるというのですか?」
「で、でも、私…女の子っぽくないし」
「僕から見れば十二分に貴女は魅力的な人ですよ?」
貴女ほどからかいがいのある人を、僕は他に知りませんからねぇ。
「………!! で、でも、胸もないし…!」
「胸なんてただの飾りですよ。 えらい人にはそれがわからんのです。
僕くらいの紳士であればどんな胸だろうと関係はありません」
「………!」
前にも言いましたが僕はオールラウンダーですから。
「さぁ、では、もう一度聞きます。
レム? 貴女の体に―――恥じ入るべき部分はありますか?」
「そ、そうだな…私の体に恥じるべき所などない!!」
「そうでしょう、そうでしょう。では、改めて腕をどかして僕によォく見せt…」
「確かにレム様の体に恥じ入るべき点はございませんが、
ケイ様のお心には恥じ入るべき点が山のようにあるようですね?」
「わぁお、何で僕は今背後からアイアンクローをキメられているのでしょうか?」
「さぁ? この部屋の鍵を持ってきてくれた女子生徒にでも聞いてみて下さい」
「分かりました。ではそろそろ僕を降ろしてはくれませんか?
ねぇ? ちょっと? 聞いてますか? 頭からミシミシと聞こえてはいけない感じの音
が聞こえてくるので早く降ろして下さいお願いします」
「扉付近にいる人~危ないので離れて下さ~い」
僕の言う事を気にも止めずに避難勧告を出すキュリア。
そして、僕の頭を鷲掴みにしたまま大きく振りかぶって…
―――僕は今日、お空を飛びました(水平に)
そして、徐々に高度が下がっていき―――胴体着陸!
………に失敗。
「あいだだだだだだだだ!!!!」
きりもみしながら、回転しながら、世界を廻りながら、
慣性の法則に従って地面を転がりまわっていく。
そして、何かすごく逞しい木のような物に当たってようやく止まる。
「よぉ、坊主。まさかこれで終わりだとぁ思ってねぇよな?」
おやおや、木だと思っていたのは人の足ですか。
「初めまして。僕の名前はケイと言うのですが貴方は?」
「まさか地面に寝転がったまま自己紹介されるとぁ俺も思ってなかったなぁ…。
…俺の名前はヴィルヘルム。レム達のクラスの担任だぁ」
「おやおや、学校の先生でしたか。
ガンのキメ方といい、言葉遣いといい、どこの組の者かと思いましたよ」
「そりゃぁ、俺は生まれついての悪魔族だからなぁ。ガラがわりぃのはそのせいだ。
あと、人は見た目で判断するもんじゃないぜぇ? コレ、先生としてのアドバイスな」
ほう。悪魔族ですか。
まぁ、身体能力が人間族より高いというだけで、
基本的に見た目には差異がないので言われなければ気づきませんが。
確か、悪魔も天使も羽は自在に出し入れできるとキュリアが言ってましたっけね。
ますます見分けがつかない。
「で、俺はこれからお前に教育的指導をしなきゃなんねぇんだよ。
あ、コレは先生として生徒に手ぇ出された事に対する報復の言い訳な?」
言い訳があれば何をしてもいいというわけではありませんよ?
「清々しい程に裏表のない人ですねヴィルヘルム先生は」
「だろう? 俺は裏表のある人間は嫌いなんだよ。つーか苦手だ。
俺ぁ頭の出来は良くないから、裏で考えられても気付いてやれねぇからよぉ?」
意外と言葉遣いなどに反して心優しい人なのでしょうかね?
少なくとも他人の事を気にかけてくれる人なのでしょう。
でなければ、気付いてやれない、なんて言葉は出ない。
人の事を気にかけない人はそもそも気付こうという努力すらしませんし。
「それなら僕なんてどうでしょう? 裏表のないとても素直な好青年ですよ?」
「わりぃなぁ、俺自身バカだからよ。裏から表までバカの奴は面倒見きれねぇんだよ」
「これは失敬な。僕の一体どこが馬鹿だというのでしょう?」
「覗きした上に初対面の先生相手に喧嘩ふっかける奴を表現する言葉として、
俺は馬鹿という言葉しか頭に浮かんでこねぇんだわ」
これは異な事を仰る。
私はただレムの肢体を観察しようとしただけなのですが。
「ふむ。確かに天才と馬鹿は紙一重と言いますしね。
ごく少数の人から見れば、この僕ですら馬鹿者に見えるのかもしれませんね」
「なぁ、いい加減オメェとの会話に疲れてきたんだが?
……とりあえずお前俺の足元に転がってるわけだし踏み潰してもいいか?」
「どうぞご自由に。しかし、その頃には僕は既に起き上がっているでsy…(ガスッ!)
……最初から顔面狙いで踏みつけてくるとか貴方正気ですか?
咄嗟に起き上がらなければ、今頃僕の綺麗な顔に足跡が付くところでしたよ?」
言いながら、少しずつ後ずさって距離を離す。
「あぁ? なんだオメェ意外とすばしっこいじゃねぇか。
ほら、大人しくしてろ。そうすりゃ一発でカタがつくからよぉ」
「ちなみにカタがついた場合、僕はどうなるのでしょうかね?」
「あぁ~……顔から起伏がなくなるんじゃねぇ?」
鼻を陥没させる気ですかそうですか。
「そうですか。おっと! もうこんな時間ですか。
ヴィルヘルム先生、すいませんが僕にはちょっと用事が出来たので帰りますね?」
「悪魔族である俺に、足で敵うと思ってんのか?」
「いえいえ、僕なんてただの常人ですからね。とてもそれは無理です。
なので、僕は人間らしく―――数で攻めたいと思います」
そう言って僕は懐からある物を取り出す。
「「「あ、あれは!!??」」」
それが何なのか、いち早く理解した男子生徒達から声が漏れる。
「そう、これこそが男子の夢と希望の詰まった夢のアイテム―――パンツです!」
さっき、更衣室で適当に拾いました。
ダメですよねぇ、いくら女子しか来ない所だからって脱ぎ捨てては。
しかし、これだけでは何の意味もない。
言葉通りの意味で単なる布切れですからね。
だが、僕は魔法の言葉を唱える事によって、
この布切れを―――万軍を率いる旗印へと変える事ができる。
「さぁ、男子諸君! 刮目しなさい! これが! これこそが!
先程までレムの履いていた―――脱ぎたてほやほやのパンツです!!!」
―――まぁ、ウソだが。
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」
しかし、問題なのは事の真偽ではない。
それが、本当の事だと信じ込ませる事が出来るかどうかだ。
そして、今の反応を見るに僕の言葉を疑っている人間はいないようだ。
さぁ、今ここに。 愚者の軍団は誕生した!!
「さぁ、我らが戦士達よ! 己が魂の声に従い、我を助けよ!
最も良き働きをした者には褒美を与える! ヴィルヘルム先生を打ち倒すのです!」
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」
「ちょ! おい、コラ! この馬鹿共!
踊らされてんじゃねぇ!! ぁいった!! おいゴラァ!
今俺のスネ蹴りやがったの誰だ!? あ!? テメェかぁアルフレットぉ!!!」
ふむ。まぁ、いくら数が多いとは言っても学生が教師に勝つのは無理でしょうね。
入学三日目という事もあって皆さん素人同然の動きですし。
まぁ、足止め位にはなってくれるでしょう。
それよりも、彼らが正気を取り戻す前に寮へと退散するとしますか。
「キュリア、帰りますよ」
「……相変わらず、ケイ様は場の空気をかき混ぜて、
自分だけは蚊帳の外に居るという状況を作るのがお得意ですね」
「僕はただ言葉を使っただけですよ、言葉こそが最強の武器ですから。
ところでキュリア、随分素直に付いてきますが貴方も怒っていたのでは?」
「傍から見ていたら、何だかバカらしくなってきたのでやめました
それよりも早く寮へと戻りましょう? でないと大変な事になりますよ?」
「ええ。それでは行きましょう」
僕とキュリアは、グラウンドを後にした。
………………………。
………………。
………。
ところで…、
…僕は男子だけ巻き込めれば良かったのに、女子の大半も愚者の軍団にいるのは一体…。
………恐るべきはレムの美貌ですね。
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はい、どうもタイトル詐欺回でした。
しっかし、まぁ、めちゃくちゃですねぇ。
先の展開も考えずにその場の勢いだけで書くとこんな事になるんですね。
ちなみにこの作品はかなり気分で書いてるので、今日みたいに一日で三話も更新される事もあれば、しばらく音信不通の事もあると思います。
なので、どうか気長に生温い目で見守ってやって下さい。