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ケイ少年の物語  作者: ASD
3/15

レム・イルネス(本人視点)

午前四時に上げた前作をタイトル通り他人視点で書き直したものです。

三時間で出来ちゃったインスタントです。正直、徹夜で書き続けたんで、ぼちぼちおかしな点があるかもしれませんがご容赦下さい。

========================================




―――ヴァレリア騎士養成学校―――


―――校長室―――




「私が迎えに、ですか?」

「そうよ、今日来る学生の内片方はアンタのルームメイトなんだから、

 アンタが迎えに行きな。わかったかいレム・イルネス?」

「ハイ、了解しましたミリアーナ校長先生!」


今朝、学校へ着くなり校長先生から呼び出しを受けた。

何事かと思い急いで駆けつけてみれば先の通りだ。


何でも去年から入学式に一年以上遅刻し続け、

さらには今年の入学式にも間に合わなかった新入生が二人この学校へ来るのだそうだ。


正直なところ面倒である。

そんな事をしているよりも、私はもっと強くなる為に授業へ出ていたいのに。


しかし、校長直々のお願いである上に、新入生の二人の内片方は私のルームメイトだ。

であれば早期に良好な人間関係を構築する事も大事だろう。

私はそう判断し、二つ返事で了承した。


学校から新入生が来るという北門までは数十分もあれば到着する。

校長先生は今日の授業は全部免除してくれると言ったが、そんなに急ぐ必要もないだろう

私は午前の授業を全て受けてから北門へと向かった。




========================================




―――帝都グラン・メルト―――


―――北門近くの馬小屋―――




道すがら屋台で売っていた何かの串焼きを食べ終えて、

私はただひたすらに新入生の到着を待っていた。


正直に言ってすごく暇である。

なので、筋トレしながら到着を待つ事にした。

まずは腹筋百回からだ。


「一、二、三、………」


しかし、今日やってくる新入生とはどのような人物なのだろうか?


「二十七、二十八、二十九、………」


一年遅れで入学する。

という事は私よりも一つ年上という事になる。


「五十四、五十五、五十六、………」


敬語は使うべきだろうか?

いや、同じ学び舎で学ぶ一年生なのだ。

年上だからと変に壁を作るのはやめよう。

普通に接すればそれで良いのだ。


「八十九、八十…うん? 今は何回だ…?

 ……まぁ、いい。また一から始めるか。一、二、三、………」


私が腹筋をやめたのは、

外から来た新入生らしき二人組が何やら揉めているのに気付いた時だった。


あ、危ない。危うく無視してしまうところだった。


どうやら二人は学校への行き方が分からずに揉めているようだった。

ふむ、汚名挽回のチャンス。私は意気揚々と二人の前に躍り出た。




「ふふ、どうやらお困りのようだね?」




「「いえ、別にお困りではないのでお引き取り下さい」」




予想のはるか上空を行く返しがやってきた。


「え? ちょ! まっ!?」


当然私を頼ってくるものだとばかり思っていた私は予想外の反応に面食らう。


私がショックで動けなくなっている間に、

二人は私を置いてスタスタとどこかへ歩いていく。


「ま、待った! 君らヴァ学の新入生だろう?

 私は君らをヴァ学に案内する為にここに来たんだよ!」


必死に私は二人に言い寄っていく。


「そうですか。では、次からは勿体ぶらずに最初からそう言う事を僕はお勧めしますよ」

「全く、私なんてどこの不審者が話し掛けてきたのかと思ってつい、逃走経路の確認ま

 でしてしまいましたよ」


さっきの一瞬でそんな事までしてたのかこのメイドの子!?


「ウッ! す、すまない。まさかそんな反応されるとは思ってなくて…その、ごめん」


確かに、見ず知らずの人間にいきなり声を掛けられれば多少はは警戒する。

流石に先程の反応は大げさすぎる気もするが、こちらが悪いのは事実なので謝罪する。


「いえ、僕らも過剰に反応しすぎました」

「案内をしてくださるのですよね? よろしくお願いします」


しかし、二人はもう先程の事など気にした様子もない。

…もしかすると私の事を気遣ってくれているのかもしれない。

であれば、私もいつまで先の失敗でクヨクヨしていられない。


「ぁ、ああ! 私に任せてくれ!」


元気いっぱいに返事をする。


「そういえば、貴女のお名前はなんと言うのですか?」


少年の方が私に訪ねてくる。


ハッ! 未だ未熟とはいえ、

騎士を志す者として名を名乗らねば、言葉通りの意味で騎士の名折れではないか!?


そう思い私は名乗ろうとするのだが、その前にメイドの少女が少年を咎めるように言う。


「ケイ様、人に名前を尋ねる時はまず自分からですよ?」


いや、きっと、この少年。(いや、一つ年上であるから先輩と呼ぼう。

壁を作るつもりはないが年上を敬う気持ちは大事にせねばならないだろう。うん。)

先輩はきっと私に栄誉を譲ってくれているのだろう。


騎士にとって、名を上げる事こそが一番の誉れ。

例え平時における日常の中でも騎士たる精神を忘れるなと言外に言っておられるのだ。


「いえいえ、キュリア。世の中にはレディファーストという言葉もあるのですよ?」


しかし、先輩も謙遜されずとも良いでしょうに。


……いや? それとも、私を試そうとしているのか?

私がその意味を理解できるような人間かどうかを。


成程…それならこんなに体の起伏に乏しい女性らしくない私を、

あえてレディファーストなどと言って女性扱いしたのも頷ける。


であれば、私もこの小芝居に乗るとしよう。

言外に問われた事には行動によって言外に答えるのが筋というものだ。


「あ、あの、喧嘩しないでくれ。私の名前はレム・イルネスだ」

「これはご丁寧にどうも、僕の名前はケイ・ノードです。

 あぁ、あとついでに僕の背後にいるのは背後霊のキュリア・トーデスです」


は、背後霊?


「え? えぇと?」


はて、また何かの問いかけだろうか?

しかし、今回はまるでわからない…。

…私ではまだ彼の求めるほどの騎士ではないという事か…。


そのまま、なんとなく件のメイドの少女を見ていると、


「そんな心配そうな顔で見なくても私は背後霊ではありませんよ?」


無表情のまま笑うという奇怪な笑われ方をした。


「だ、だよね! い、いや、分かっていたよ冗談だってわかってた!」


特に何も失敗などはしていないはずだが、

私はなんとなく恥ずかしくなって、まくし立てるように言っていた。


「ちなみに実は私は人間ではなく悪魔なのですよ?」

「えぇッ!」


なんと、このメイドの少女は悪魔族だったのか!

どおりで感情の抜け落ちたような表情をしているわけである。

それとは対照的にメイドの主らしい先輩は常に薄く笑っているのだが…もしや先輩も?


私の出口のない思考の迷路は延々と続いていく。






「なるほど。つまりはレムもヴァ学の一年生、つまりは僕の同級生というわけですか」


私と先輩とキュリアは雑談しながら学校へと向かっていた。


「そう。そして、私はキュリアと寮でルームメイトになるから迎えに来たんだ」

「なるほど。……少し疑問なのですが、

 僕のルームメイトさんは迎えに来てくれないのでしょうか?」


あ。そういえばそうだ。

何故先輩の方のルームメイトは迎えに来ないのだろう?


いや、待てよ?

そういえば今年の一年男子生徒の総数(先輩を除いて)は確か偶数だったはすだ。

そして、寮の部屋は必ず二人一組。つまり先輩にはルームメイトはいないのか。


「いや、ケイは寮だと一人部屋なんだよ。

 厳密には寮には二人部屋しかないけど、丁度ケイは一人だけ溢れたんだ」

「なるほど、そういうわけですか」


ふむ。先輩のお役にたてたようでなによりだ。と、そこで、


「あぁ、ケイ様は学校ではイジメられ寮では一人寂しく生きるのですね。お労しや」


キュリアが変な事を言い出した。

そして、それを火種に二人の会話はどんどんエスカレートしていった。


「キュリア。勝手に人をイジメられっ子にしないで下さい」

「でも寮でボッチなのは事実ですよ?」

「一人の方が気楽でいいではないですか」

「またまたそのような…強がらなくても良いのですよ?」

「では僕が一人寂しいと言えば、キュリアは僕の部屋で寝泊まりしてくれるのですか?」

「土下座して「お願いしますキュリア様」って言えたら考えてあげますよ?」

「本当に良い性格をしていますね。ご覧なさい、レムが怯えた目で貴女を見てますよ?」

「え、いや、その…」


私はただどうすればいいかわからず、あたふたしていただけなのだが…。


「何を言ってるのです、あれはケイ様の境遇に同情した慈愛の目ではないですか」


だが、これだけははっきりしている―――喧嘩は良くない!


私は二人の喧嘩の仲裁に入る事を決意する。


「そ、その。喧嘩はしないでくれ二人共!」


人の喧嘩に仲裁に入る事により緊張していたのか、

私は自分で思っていた以上に大声を出してしまった。


「何をいきなり大声をあげているのですかレム?

 周りの人々が驚いてこちらを見ていますよ?」


ウッ! これは流石に少し恥ずかしい…だが、成果はある。

二人共私の大声に驚いたのか、今までの熱の入った語気は消えていた。


「レム様。公衆の面前であまり大声を出すと迷惑になりますよ?」


そして、いつの間にか私だけがダメな子みたいになっていた。


「あ、あれぇ? 君達喧嘩してたんじゃないのか?

 そして、なんで私が悪いみたいになっているのだ!?」 

「今のはただのコミュニケーションですよ。

 僕とキュリアは大体いつもこんな感じですから」

「まさか、メイドである私が主であるケイ様と喧嘩するわけがないではありませんか」


そ、そうだったのか…。

ただの私の取り越し苦労だったわけか…。


………いや、でも…。


「そ、それにしてはどちらも本気で毒を吐いていたように感じるのだが…?」

「「気のせいですよ」」

「そ、そうか。私の気のせいだったか」


気のせいだと二人に言われては、何も言いかせない私だった。


「まぁ、あまり気にしない事を僕はお勧めしますよ」

「そうだな…努力しよう」


うん。確かどこかの国の言葉で「喧嘩するほど仲がいい」と言う名言がある。

二人はきっとそういった関係なのだろう。


私はそう解釈して無理やり自分を納得させた。


そして、少し前から何かを気にしていたらしいキュリアが、


「…そういえばレム様は授業に行かれなくてもよろしいのですか?」


そう質問してきた。


ふむ。確かに今日は平日で普通に授業が行われている。しかし、


「私は校長先生に頼まれてここに来ているからね。

 だから、今日は午後の分の授業を免除されているのさ」


正確には朝の分もだが、今朝の授業は普通に受けたので関係ない。


「という事は今学校では午後の授業の真っ最中なのかな?」


先輩は早くも学校の事に興味があるのか、さらに聞いてくる。


「そうだよ。ちなみに原則的に午前は座学、午後が実技となっている」

「……少し聞きたいのだけど座学は何を習うんですか?」

「さぁ? 私も学生だからこれから先何を学ぶのかは知らないんだ。

 でも、少なくとも今習っているのは、実践を想定した陣形や隊列などがメインだよ」

「そうですか、それは良かったです。

 国の歴史の勉強なんかだったらどうしようかと思いましたよ」


おや? 先輩はもしかして歴史などは苦手なのだろうか?


私は歴史は好きなのだが…

いや、正確には歴史に登場するような名のある騎士に憧れて、

色々と調べている内に詳しくなってしまっただけだが。


「また、実技では模擬戦で実際にクラスメイトと戦ったり、

 今はまだないけど、外に出てから魔物を倒すクエスト方式もあるらしいよ」

「へぇ、実際に戦って経験の中から学んでいくわけですか。

 ……どこそこの流派の型を練習したりはしないのですか?」

「原則的にそんなものはないはずだよ。

 戦い方を型にはめ込んで制限しても合う人間と合わない人間がいるからね」



そもそも、騎士の目下のところ一番の目的は魔物から国民の生命を守る事にある。

魔物相手に形式に沿った、実戦向きではない型通りの動きなど通用しないのだ。


そもそも型は対人戦の時くらいにしか役には立たない。

だが、現状どこの国も魔物から国を守るのが精一杯の状態。

そんな時に役に立たない型を覚えるくらいなら、走り込みでもしていた方がマシなのだ。






程なくしてヴァレリア騎士養成学校へ到着し、校長室の前まで来た。


「さ、ここが校長室だよ。

 私の案内はここまでだ。後の事は中で校長先生から詳しく聞いてくれ」

「はい、分かりました。それと、道案内ありがとうございました」

「どういたしまして。二人共、同じクラスになれるといいな!」

「はい、私もレム様と同じクラスになれる事を祈ります」

「僕も同感です」

「ああ。それじゃ、私は授業に戻るよ」

「おや? 今日の午後の分の授業は免除されていたのでは?」

「折角の実技の時間なんだ。免除されたからといって、私は出ないつもりなど毛頭ない」


そもそも、それなら最初から午前の授業に出たりもしない。


「レムは生徒の鏡のような人ですねー」


先輩に褒められた…。


……ふむ。やはり、人に褒められるのは嬉しいものだな!


「それではな二人共!」


私は元気よく別れの挨拶をし、グラウンド脇にある女子更衣室へと急いだ。




========================================




―――グラウンド―――




つい走ってきてしまったので、グラウンドまではすぐに着いた。


「あ? おい、イルネス!」

「はい、何でしょうかヴィルヘルム先生?」

「お前何でここにいんだ? 今日は校長のお使いで授業免除じゃなかったのか?」

「確かに私は授業を免除されています。

 なので自主的に実技の訓練を行いたいと思います!」

「お前ホント真面目なのなぁ。少しは気ィ抜いた方がいいぜ? 

 あ、コレ先生としてのアドバイスな!……まぁ、生徒がやる気なのはいい事だがな!

 よし!事情はわぁったからさっさと着替えてこい!今日はお前だけ特別メニューだ!」

「はい!よろしくお願いします!」


ヴィルヘルム先生は騎士というにはやや粗暴な感じだが、

アレで結構生徒達の事を気にしてくれる良い先生だ。


最初は悪魔族だという事で生徒の大半が気後れしていたが、

そんなものは彼の最初の授業で吹き飛んだ


『よし、お前ら!鬼ごっこしようぜ!

 俺に捕まった奴は罰としてグラウンドを授業が終わるまでランニングな!

 それが嫌なら授業が終わるまで走って逃げろ!ともかく走れ!さぁ、走れ!!!』


どちらにしても授業中ずっと走らなければならないため、

最後の頃になると、皆歩いた方が早いのではないか?というような感じになっていた。


授業が終わる五分前に先生が生徒全員に配ってくれた、

スポーツ飲料の味はきっと生涯忘れられないだろう。


「……ハッ!イカンイカン!思い出に浸っている場合ではないぞ私!」


私は急いで女子更衣室に入る。


―――ガチャン。


と、そこでふと我に返る。


いや、騎士たる者いつ何時でも焦らず落ち着いて行動すべきだろう。

騎士が慌てていればそれだけで国民の不安を煽ってしまうのだから。


そう思い私は落ち着いて服を脱ぎ、


―――ガチャン。


不意に開いた扉へ落ち着いて向き直り、そこに先輩の姿を確認し、




「………ふぇ?」

「………Oh…♪」




とても間の抜けた声を出した。




========================================


あるぇ~? 何でケイ君こんなにレムから慕われてるん?

というか、なんかレムがヒロインみたいな感じになっちゃったなぁ…。

いや、まぁ、楽しいからいいんだけどさ。


……え? これから先の展開? 

嫌だなぁ、そんなん俺が考えてるわけないじゃないですか(ノ≧ڡ≦)

これから必死こいて考えんだよ(´∀`)

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