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第46話 エンジェルラダー

副々題「私にしか聞こえない」


倉橋よりこ その13



 翔ちゃんに逢えない時間は拷問に等しいと云える。


 朝に溜め込んだ翔ちゃん分が、一秒ごとに吐息から毛穴から抜け出てしまう。

 翔ちゃんと相思相愛である事がわかる以前であれば耐えられたこの拷問も、愛し合う喜びを、私、倉橋よりこにとっての人生の本当を知った今となっては、とても耐えられそうに無かった。

 翔ちゃん分は確実に以前よりも摂取しているのに何故だろうと自問はするが、実は理由はわかっている。そう、以前は、以前からも知らず悲鳴を上げていたのだ、私の心と体は。

 多量の翔ちゃん分を摂取するなど所詮敵わぬ願いであると無意識に諦めていたからこそ耐える事が出来たわけで、要するに、どうにか自分に嘘を吐き、誤魔化していただけなのであった。

 それがまさかである、これほど翔ちゃん分を採取するを叶うとは夢にも思わなかった。今日こんにちの至福は僥倖であるが、それは60ヵ年計画でいえば後1年以上先であったので、想定外だった。つまり準備が出来ていなかったのだ。

 だからであろう。

 私の心と、そして体は、今まで必要であった翔ちゃん分を取り戻すかの様に、まるでからからに乾燥した海綿体スポンジが水を貪欲に吸い取るが如く、それとも待ち望んだ雨に踊る砂漠の生き物のみたいに、貪欲に彼と、翔ちゃん分を求めているのである。

 そもそも翔ちゃん分とは、彼の香りであり、一部であったりする訳なのだが、翔ちゃんという至上にして最愛の存在と通じ合う喜びが相乗し、その摂取は悦楽を副次的に生み出す。そしてそれは私にとっての全ての原動力。

 それが枯渇霧散する事は、即ち精神的な、そして肉体的な死であるとすら云える。

 しかもここ最近リリィちゃんと妹が、私と翔ちゃんの神聖な朝の部屋サンクチュアリに侵入してくるせいで、十分な翔ちゃん分の補充が出来ないのがまた私をさいなむのだ。

 そこで私は考えた。ならば翔ちゃん分の流出を防げば良いのでは無いかと。

 無論翔ちゃん分の流出はいついかなる時も起こっていて、それを止める術は翔ちゃんにペロペロするかすーはーすーはーするかぐりぐりするか等、つまりは補給する以外手段は無いのだが、それらより数段劣るとはいえ実は代償行為が存在する。

 その行為とは――。





――可愛いね、翔ちゃん君人形。


 私は心の中で、目の前のミドル翔ちゃん君人形に話しかけた。

 初めての体験で多少疲れた彼ではあるが、私に心配掛けまいとしているのか、すぐさま返事が返ってくる。


「…………」


 私だけに聞こえる彼の声無き声。

 翔ちゃん君人形は呆れた声でそう言った。

 そんな風に話す声も翔ちゃんにそっくりだ。

 それがまた一層可愛く思えるのだが、私は彼のご機嫌をこれ以上損ねたくないから黙っていようと思う。


――ごめんごめん、もう今日で何度目だろうね、しつこかったね。


「…………」


 ふう、どうやらご機嫌斜めになったのは彼の冗談だったみたい。


 苦笑するみたいにそう言う翔ちゃん君人形は、だけど満更でも無いご様子だ。


「…………」


 翔ちゃん君人形はふと気になったのかそう言った。


――うん、リリィちゃんちに行ってるよ。部屋に飾ってるみたい。ごめんね、相談も無しに……。


 やはり自分の兄弟の事なのだ。気になって当然だろう。

 私は無断でリリィちゃんに預けた事を謝った。


「…………」


――心配することないよ、きっと大事にしてくれてる。リリィちゃんはいい子だもん。


「…………」


 安心してくれたみたいで何よりだ。


 しかしどうやら翔ちゃん君人形は、ここへきて漸く気持ちが落ち着いたようだ。

 声色が、いくらか始めに比べて良くなっている。


――今更だけど、こんな騒がしい場所へは初めてだよね、今日は大丈夫だったかな。


「…………」


――そっか、ごめんね無理言って。ところでどう? 今日の感想は?


「…………」


――うーん、やっぱり翔ちゃん君人形もそう思うよね、というのもね、いつもは静かなんだよ。本当だよ。どうしてかな、今日は騒がしかったね。


 そうなんだよね、翔ちゃん君人形の言うとおりなんだよ。だけど私にはその理由がわからない。


「…………」


――だけど明日もお願いしたいんだけど、駄目かな?


「…………」


――あ、ありがとう……ありがとう翔ちゃん君人形! 流石は翔ちゃんの分身だね。


「…………」


 私の無神経な一言に、翔ちゃん君人形は俯き加減でそう言った。

 その内心を吐露する様は、自分をまるで切りつける様に、震えて、痛みを耐えているかに見えた。

 そこで私は自分の過ちに気づいたのだった。


 しまった、やってしまった。


――あっ、ごめんなさい、悲しまないで。今のはデリカシーなかったよ。 ……だからそんな自分を否定するみたいな事言わないでっ! もう絶対にあんな事言わないから……。


 言いながら私は涙が目に溜まるのを感じた。


 悲しいのは翔ちゃん君人形のはずなのに、どうして私が泣いてしまうのか。

 自己中心的で堪え性の無い自分が嫌になる。

 そしてこんな私を見かねて、オロオロとした口調で私を慰める翔ちゃん君人形。


「…………」


――ありがとう、翔ちゃん君人形。


 そう言って微笑みながら許してくれた彼がいとおしくて、私も思わず笑顔になった。


 やっぱり翔ちゃん君人形は翔ちゃん君人形だ。

 昔からちっとも変わらない。

 私が酷い事を言っても、そしてどんな馬鹿な事を言っても、いつも笑って許してくれる。

 翔ちゃん君人形には悪いけど、だけどやっぱりそういう所がマスターである翔ちゃんとそっくりなのだ。


 そんな風に、私と翔ちゃん君人形がお喋りしていると、横から小さく声が掛かった。


「よ、よりこさん? 今日は一体どうしちゃったの……」


 ひそひそ声の主はミカちゃんだった。

 ミカちゃんは高校生になってからの友達で、私の唯一と言っていい親友だ。

 私よりは低いけど、そこそこ高い身長にスレンダーな体。短めの髪の可愛いというよりは綺麗な感じの凛々しい顔立ちの子で、下級生の女の子にもそう云った意味で人気がある。だけどやっぱり私にとっては親友という目線からだろうか、とっても可愛い女の子だと思う。


 いつもはリコちゃんとかリコピンさんとか可愛く名前をもじって言ってくるのに、そのまま名前で呼ぶのは珍しい。

 それに、どうしちゃったのとはどういう意味だろう。

 あっ、そっか。

 いつもは不機嫌な顔でいるから珍しいねって事だろうきっと。


「へっへーん。今日はね、翔ちゃん君人形がいるからね」


 私もミカちゃんに習ってひそひそ声で返した。


「へっへーんってよりこさん? いつもとキャラ違い過ぎるんだけど……」

「私のキャラって……えーなにー? それってどんなのー?」

「どんなのって、何と言うかクールキャラ?」

「クール? 私が? 嘘!? 本当に?」

「いや、そんな驚かれても困るんだけど?」


 うーん。

 私がクールなキャラって有り得ないんだけど……。

 って、あっそっか。

 ようく考えてみればそういやそうだったかも。

 こういうキャラにしたのはいつの頃だったか忘れたけど、翔ちゃんに心配掛けまいとして必然的にこんな感じにしたんだったか。

 最近色々あり過ぎてそんな事忘れてたよ。


「……ああ、うん。そうなのかな? でもそれって演技だから」

「ええっ!? ここでまさかのカミングアウト!?」

「え~、というかミカちゃん。何度も一緒してるのに知らなかったの?」


 ミカちゃんまさかの勘違い?

 やだぁ。ちょっとショックだよ。


「あっ、ごめん。リコピンさんがそうだっていうのは知ってるけど、学校じゃ違うじゃん」

「そういう意味か。良かった。だったらミカちゃんにだけ教えるけど、もう良いの」

「もういい? 本当の自分を見せるって事?」

「うん、そうだよ。駄目かな?」

「全然、よりこはよりこだから」


 ミカちゃん。

 やっぱり良い子だよぉ。

 男前ってやつかな? 下級生に人気なのも頷ける。


「それにしてもその人形凄い名前だね……それってやっぱり相川の?」

「違うよ、翔ちゃん君人形は翔ちゃん君人形だよ」

「お、おう……」


 ミカちゃん今日はどうしたんだろう。珍しい事に引きつり笑いしてる。

 何か言いたい事があるのだろうか。いつもならもっとどんどんガンガンつっこんでくるのに、今日はいつもと違うみたい。

 サバサバしてて竹を割った様な性格というか、男前というか、そんな裏表の無い彼女は、こんな引きつり笑いを滅多にしない。

 だけど、過去に一度だけあるのを私は思い出した。

 以前カラオケに行った時の事だ。

 私が歌い終わった後、彼女は今の様な表情で「上手いね」って言ってくれたのだけれども、その後、時間が余っているにも関わらず「直ぐに店を出よう」って言ってたな。

 私が「何で」と聞くと「用事があるから」とか「お父さんが禿げを患わせて、そのお見舞い」だとかいかにも嘘っぽい理由でお店を出た。それから直ぐに体調が悪くなったからって言って帰っちゃった。

「お見舞い」じゃなかったのだろうか。

 その次の日もお休みしてたみたいだったし。

……いつも元気な彼女があんな態度とったというのは、もしかしたら私の歌が上手すぎて逆に嫌だったのかな?

 あれってもしかして劣等感?

 そうだとしたら悪い事しちゃったかも。

 でもでも誰にだって得手不得手があるんだもん。私には歌ぐらいしか得意な事って無いのだから、明るく可愛くて、私よりもずっと社交的でそれに頭も良くて運動も出来るミカちゃんはそのくらい譲っても良いと思うの。


 それはそれとして、今みたいな表情をするって事は、じゃあ翔ちゃん君人形が可愛いから欲しいって事になるのかな?


――ミカちゃん、翔ちゃん君人形が欲しいのかな? ねえ、どう思う。


「…………」


――あはは、大丈夫だよ。例えミカちゃんであったとしても、渡さないよ。


 私は慌ててそんな事を言った翔ちゃん君人形が微笑ましくて、笑顔でそう返した。


「く、倉橋さん?」


 そんな私達を見て、何故かいぶかしんだ様子の、今度は苗字で呼ぶミカちゃん。


「なあにさっきから。何が言いたいの?」

「いや、あの、あんたそれに……」


 ミカちゃんが指差した先にあるのは翔ちゃん君人形だった。


 もしかして本当に翔ちゃん君人形が欲しいんじゃ無いだろうか……。

 どうしよう。

 リリィちゃんに付いて行った翔ちゃん君人形は、望んで付いて行ったのだから何の問題も無いとして、ミカちゃんはどうしてだかこの翔ちゃん君人形に嫌われているみたいだ。

 本人が望まないのに、あげるだなんて言えないよ。それって人身売買だよぉ……。


「ごめんね、この翔ちゃん君人形はあげらんないよ……」

「え、うん。要らない」


 即答ですか。

 元々あげるつもりは無いから助かるけど、何だか複雑な気分だ。


「その……今日は一体どうしちゃったの? もしかして、相川催眠術説は本当だったとか?」

「相川催眠術説?」


 早口言葉みたい。

 3回連続で言えるかな、今日帰ったら練習してみよう。


「そう、相川がリコちゃんとあのリリィにも催眠術を掛けてるって噂……じゃないと説明がつかないって……だから人形に向かって……」

「リリィちゃんにも? 説明つかないって何が」

「あー、えーと、それはここじゃ何とも……」


 何だろう、歯切れ悪いなぁ……本当にいつものミカちゃんじゃ無いみたいだ。


「ふーん、変なミカちゃん」

「変ってあんたが言うかっ!?」


 私の呟きに、急に大きな声を上げたミカちゃん。


「あっ、ごめん……」


 ミカちゃんのその声に驚いた私と翔ちゃん君人形。それにさっきからずっとチラチラこちらを見ていたクラスの皆も突然の大声に驚いたみたいで、目を丸くしたのを見てミカちゃんは謝ってくれた。

 私はどうしていいかわからなくて、おろおろしていると、教室の教壇に立っていた先生が、頭痛を堪えるみたくこめかみを押さえて言った。


「倉橋……放課後生徒指導室に来なさい」


 先生がそういい終わると同時に、ホームルームの終わり、放課後を知らせるチャイムがなった。





「失礼しまーす」


 教室のと同じ引き戸をガラガラ開けて、難しい顔で座っている先生に挨拶した。

 初めて来た生徒指導室は、資料らしき分厚いファイルが入っている棚と、デスク、それにテーブルを挟んで二つのソファがあった。

 私は先生に促されてソファに座ると、早速話が始まった。


「倉橋ぃ、お前一体どうしちゃったんだぁ? 真面目なお前が、何でぬいぐるみなんか授業中に出したんだ?」

「はぁ」

「はあじゃないだろ? 他の先生も気にしてたぞ、どうしたって今日に限って朝からお前そんな……」


 さっき私を生徒指導室に呼び出した担任の先生が、心底困った様子で言った。


「すみません……あの、どうして私が呼び出しなんて受けたんでしょうか」


 まるで意味がわからない。

 私は普段通りにしていたと言うのに、こんな事初めてだ。


「お前どうしてって……だからいいか倉橋。そのぬいぐるみだよ」


 先生は私の抱いている翔ちゃん君人形を指差して、大げさに嘆いた様な仕草をとった。


「翔ちゃん君人形です先生」

「翔ちゃん君、人形? 凄い名前だな、いや、それは良いんだが、学校に持ってきちゃ駄目だろう。それに授業中何をしてたんだ? 一人で百面相していたりして、はっきり言って不気味だぞ。 ……しかし真面目なお前の事だ。もしかしたら何か理由があるのか知らんが。まあ、今日はもういいから、他の先生には俺が言っておいてやるから、明日からは持ってきちゃ駄目だぞ」


 先生は言うだけは言ったという風にして、この話はこれで終わりだとでも言いたいみたいだったが、私にとっては聞き捨てなら無い一言があった。


「そんな! ……それだと私、死んじゃいますっ!」

「は? お前は何を言ってるんだ」


 先生は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして言った。


「だって……翔ちゃんに逢えないと私辛くって……だから翔ちゃん君人形にお願いして付いて来てもらったんです」

「おう……え? ああ、うんそうか、なるほど……えっ?」


 先生は何とも複雑な返事をした。


「先生! 私知ってます。相川が悪いんです!」


 私の隣に座る、一緒に付いて来ていたミカちゃんが割り込んで言った。


「相川って、2組のか?」

「はい、あいつです」

「あいつが? どうして悪いんだ、もしかして脅しているとか言うんじゃ無いだろうな」

「似た様なもんです」

「咲島お前な……」


 咲島というのはミカちゃんの苗字だ。ミカちゃんは咲島美佳さきしまみかちゃんという素敵で可愛い名前なのだ。


「いいか咲島、相川はああ見えて凄い奴なんだぞ、成績も良いし、性格も穏やかだし、落ちこぼれの面倒をみたりして、それから先生が受け持っている環境保全部の手伝いやボランティアなんかも頼んだら快く引き受けてくれてな。他の部員は来てくれないのにも関わらず、部員でも無いあいつだけが来てくれるんだ。だから何度もあいつと二人でゴミ拾いしたしな。だからこそ言える。あいつは決してそんな事する奴じゃ無い、きっとそれは誤解だ」

「先生……」


 私とミカちゃんの声が重なった。

 私は翔ちゃんの事をしっかり理解してくれている事に感動した為漏れた呟きだったが、ミカちゃんは何と言うか呆れている風だ。


「でも先生、相川は2組のリリィとも付き合ってるって話だし、おかしいと思いませんか。私は絶対催眠術か何かだと思いますけど」

「うん……ああ、うん? 何だお前たち付き合ってたのか? それに2組のアンダーソンとも……本当か?」


 先生は知らなかったみたいだ。

 勢いに任せて、見せつけて、周知させる為に皆の前でキスしたりしたから、当然知ってるって思っていたから想定外だ。

……これはマズイかも知れない。

 知らない子が、もしかしたら翔ちゃんを狙ってしまうかも。

……だとすれば、もっと強烈な……それこそペロペロを皆の前でするのも一つの「手」であろう。


「本当です。私翔ちゃんと付き合ってます」

「へぇ~……いやぁ、お前みたいな奴と付き合えるなんて、はっきり言って羨ましいな。ははっ。けどだが、それが相川だと何とも応援したくなってくるから不思議だよ」

「そうなんです」


 私如きが翔ちゃんと付き合えるのは、寧ろ私にとって最大級の幸運であるのは疑い無いのだけれど、私は私がどの様に周りに思われているか知っているし、最近では翔ちゃんが周りにどの様に受け止められているか知ったので、ここは肯定だけしておこう。


「しかし、そういうのは出来るだけおおっぴらにするんじゃないぞ。ここは学校で、勉強をしにくる所だからな」


 そんな建前は糞食らえだよ、先生。

 学校は翔ちゃんとイチャラブする所。決まってるんだから。


「先生! リリィの事は良いんですか?」

「おっ、そうだったな。それで? アンダーソンとも付き合ってるのは本当か?」

「……一応」

「そうか……それは困ったな……実はさっき言った落ちこぼれってのはアンダーソンの事なんだが、あっ、先生が落ちこぼれって言ってたって他所じゃ言うなよ。それでやっぱり二人は付き合ってるんじゃ無いかと噂してたんだな、これが。優等生である相川が彼女を助けてやってるって先生の間でも、かなり好感持っている人は多いしな、勿論俺もその内の一人な訳だが……いやぁ、やっぱり本当に付き合ってたのかぁ……しかし、だとすればそれをお前が割って入ったって事になるのか?」

「違います! 私と翔ちゃんは昔からの幼馴染で……リリィちゃんの方が後です! 第一、うちは親公認ですから!」

「ええ!? リコさんマジですか?」

「え、うん、そうだよ?」

「そんな話初耳だよっ!」

「あれっ? 言って無かったっけ?」

「言って無いよ!」

「そっか、ごめんね……」

「別にいいけどさ……ちょっと悲しいかも……」

「ご、ごめんね。今度からはちゃんと言うからね」

「うん、絶対ね」

「うん」

「んー、なるほど、そういう事なら、良いのか? いや、だが問題起こすなよ。相川は大丈夫だろうが、問題はお前らだからな」

「はい」

「頼むぞ。……と、それはそれとして、ぬいぐるみは別だからな」

「あっ……」

「あ、じゃないよ。呼び出したのはそれなんだからな。もう持ってくるなよ」

「それは……嫌です」

「嫌ですってお前な……」

「駄目なら、私を2組にして下さい。じゃないと死んでしまいます」

「死んでしまいますって、んな大げさな。そんな事出来るわけないだろう」

「大げさじゃ無いです。翔ちゃんのクラスにして貰うか、それとも翔ちゃんが私のクラスにこない限り、翔ちゃん君人形は手放せません」


――だよね、翔ちゃん君人形。


「…………」


 そう困った顔で言う翔ちゃん君人形。


 そんな……翔ちゃん君人形は「そうだよ」って言ってくれると思ったのに。


「先生を困らせないでくれ、頼むから」

「リコちゃんやっぱり……先生! やっぱおかしいですよ。明らかにリコちゃんがおかしいです。やっぱりこれは相川が催眠術を掛けたからに決まってます」

「催眠術ってお前な」


 何なんだろうさっきから、催眠術催眠術って、翔ちゃんが私に催眠術を掛けてるなんて有り得ないよ。


「だってそうじゃ無いですか、それは先生は相川の事気に入ってるからそういうかも知れませんが、あの相川ですよ。しかもリリィも一緒だし、これって絶対おかしいですよ」

「うーん、確かに言いたい事はわかるが、それにしても催眠というのはちょっとな……倉橋、身に覚えは無いか」

「そう言われても……身に覚えがありません。第一、翔ちゃんがそんな事する筈無いじゃないですか」

「そんな、本人に言ってもわかる筈ありませんよ。そういうのは巧妙に隠してるに決まってますから。リコちゃんだって知らず催眠を掛けられていたらわかりっこ無いし」

「それはっ……」

「わかんないよ、それにどちらにせよ二股なんて普通じゃないじゃん。考え直した方が良いと思う」

「ミカちゃん……」


 ミカちゃんが私を思って言ってくれているのはわかる。

 だけど、こればっかりは違うって言わなくちゃ。


 そんな事を考えていると、生徒指導室の扉がコンコンとノックされ、声が聞こえた。


「すみませーん、お取り込み中の所申し訳ありません。2組の相川ですけど、ここに倉橋さん来てますか?」


 翔ちゃんだった。

 私はだけど、ノックされた瞬間には翔ちゃんが来たと確信していた。

 だからこそソファから勢い良く、結果跳ねるみたいに立ち上がり、駆けて扉に触れるか触れないかの所でピタリと止まった。


 ああ翔ちゃんが、扉の前に居る。


 そう思うだけで胸がドキドキする。


「翔ちゃん!」

「あっ、よりちゃん。やっぱりここに居たんだ」


 私の声を聞きつけて、ドアを開けた翔ちゃんは、私を見つけるとニコリと笑ってそう言った。


「相川か」

「あっ、はい。先生。 ……えっと、4組の人から聞いたんですけど、何でもよりちゃん、倉橋さんが学校にぬいぐるみを持ってきて、それで先生に怒られてるって」

「いや、まあ、そうなんだがな。取り敢えず座りなさい」


 言われて翔ちゃんは先生の隣に座った。

 本当は私の隣に座って貰いたかったのだが、生憎私の隣にはミカちゃんが……恨むよ、ミカちゃん。


「えっと……あ、そのぬいぐるみだね、確か翔ちゃん君人形だっけ? 駄目だよよりちゃん、学校に持って来ちゃ」

「だって……寂しいんだもん」


 それもあるけど、本当は翔ちゃん分の枯渇が原因だ。


「寂しいって……うーん」


 翔ちゃんは腕を組んで悩んでいるってポーズをとった。


 ごめんね翔ちゃん。だけどこればっかりは駄目だよ、じゃないと私、死んでしまいます。


「あ、そう言えば、よりちゃんのお友達ですよね? いつもいつもよりちゃんがお世話になってます」

「あ、うん。まあ……」


 ミカちゃんに気付いた翔ちゃんは、丁寧に挨拶をした。

 だけどミカちゃんは折角翔ちゃんがこんなに紳士な態度であるにも関わらず、そっけない返事しか返さない。


 何なのミカちゃん。いくらなんでも酷いよ。

 ミカちゃんはさっきの催眠がどうだとか言ってたからだろうか、それにしても翔ちゃんを睨む様にしているのはちょっとどうかと思う。


 だけど翔ちゃんは、そんなミカちゃんを気にした様子もなく、また腕を組んでうんうん考え込んだ。

 それからちょっとして、何かを閃いたのか、そうだとばかりに顔を上げて言った。


「そういえばさ、よりちゃんのカバンについてたストラップ? かな。あれって翔ちゃん君人形だよね」


 翔ちゃん、良く見てくれている。

 確かに昔から私はカバンに翔ちゃん君人形を付けている、名前はミニマム翔ちゃん君人形といって、最小の翔ちゃん君人形である。

 しかし、あれはデザインが可愛いから何となくカバンに付けているだけの物であって、翔ちゃん君人形でありながら、翔ちゃん君人形で無い、云わば紛い品なのである。


「うん、一応」

「一応? あれじゃ駄目なの?」

「うん、あれは……ミニマム翔ちゃん君人形っていうんだけど、ソウルが入って無い奴だから」

「またソウルか……ねえ、そのソウルって何なの」

「それは……」


 言えないよぉ……翔ちゃんの部屋に落ちてた翔ちゃんの縮れた毛だなんて……。


 黙っている私を、翔ちゃんは咎めもせずに続けた。


「そっか。じゃあさ、そのソウルって言うのは増やしたりとか移動したりとか出来ないの?」

「えっ?」


 考えてもみなかった。

 今までソウルは選ばれた翔ちゃん君人形にしか入れる事が出来ないと思っていた。

――だけど本当にそうなのだろうか。

 ソウルを入れるに相応しい翔ちゃん君人形にはソウルを縫い付ける。そんな風に自然に、漠然と思ってた。

 けどその相応しいって何なのだろう。

 思えば今までどうやってその相応しいを見分けていたのか、わからない。


「わからないよ」

「そっか、わからないか……じゃあやってみようか。そのミニマム翔ちゃん君人形? っていうのを貸して、それからその中位ちゅうくらいのも」


 混乱する私。

 言われたとおり、ミニマム翔ちゃん君人形をカバンから取り外して渡し、次いでミドル翔ちゃん君人形も翔ちゃんに渡した。


 やってみるって、一体何をする気なの。


 翔ちゃんはミドル翔ちゃん君人形をテーブルに置いて、片手の平を翔ちゃん君人形のお腹の辺りに軽く押し付ける様にした。


「じゃあいくよ、えーい、はっ!」


 掛け声と共に、掴んで引く様な動作を、言い換えれば何かを引き抜く動作をした。


「どう?」


 翔ちゃんはその引き抜いた何かを見せてきた。だけどその翔ちゃんの手の平には何も無いし、私にはその行動の意味がわからない。


「あれ? よりちゃんには霊視えない? これがソウルだよ」

「なっ!?」


 何を言っているの……?


 翔ちゃんのいきなりの発言に戸惑う私。

 そんな私の様子に気づいてかいないのか、構わず「ほらこれ、わからない?」と、しっかり霊視てという風に何も乗っていない手の平を見せ付けてくる翔ちゃん。


 どうしよう、どうしたらいいのかわからない。

 だって翔ちゃんの手の平には何も霊視えないんだよ、どうすれば、どんな反応を返せば良いの?

 

 翔ちゃんのとった行動により、呆気にとられてシーンと静まった指導室。

 ミカちゃんは眉間に皺を寄せているし、先生は目を少しだけ見開いている。

 この反応は、バラエティ番組とかで芸人が面白く無い時に言われる「すべった」という状況に似ている。

 どうしよう、このままじゃ翔ちゃんが変な人になっちゃうよ。

 だけどどうしても私には何も見えない、どうしてなの私、どうして何も……何も……何も?

 待って、良く霊視て私、本当に何も無いと云える?

 だって翔ちゃんがここにあると言ってるんだよ?

 だったらあるはず……。


「相川、お前何を言ってるんだ」

「キモ……」


 一般人である二人には、当然の如く霊視えてない。


 だったらそれはそれでいいから黙っていて欲しい。今、霊視る為に集中しているんだから気が散ってしまう。


 翔ちゃんは霊視えない憐れな私達に、申し訳無さそうにしてあははと頭を掻いた。


「で、どう? 霊視えた? って、霊視える訳ないけど、確かにここにソウルはあるんだよ」

「う、うん……」


 しかし、努力の甲斐無く、どうしたってソウルが霊視えない。


 そんなっ!

 翔ちゃんが霊視えているのに、私には霊視えないなんて、そんなの無いよ!

 酷いよ神様。


 私の心の叫びは、絶望を加速させ、神を呪う程だ。

 だけど一度だけと、縋る思いで神に祈った。


――私にも翔ちゃん君人形のソウル霊視えるようにして下さいっ!


 その時だった。

 そう願った瞬間。

 誰かからの「うん、わかった」という、何故か翔ちゃんに似た声が頭の中で響くと、突然、天から降り注ぐような眩い光と共に、体を包む爽快感に包まれた。

 私はだが、慌てずその感覚を瞳を閉じて享受した。

 すると私は、私が変わっていく事に、変身ともとれる変化を受け入れる事に成功したのだ。

 それから刹那の後、全てがクリアになっていく様な感覚に包まれた。

 そして私は悟ってしまった。

 神とは、主とは、やっぱり翔ちゃんであって、それ以外は全て紛い物の偽者で、本来翔ちゃんがあってそれから全ての宗教や宗派へと派生していったのだ。

 今目の前に居る彼は、正しく翔ちゃんなのだけれども、それは翔ちゃんであってもその本体は何処か遠く高い次元から私達を慈愛の眼差しで見つめるアストラルパワーの集合体なのだ。

 この世の全ては翔ちゃんによって包まれている。


 ああ、何て世界は美しく、慈愛に満ちているのだろう。

 全てを理解した私は、徐に目を開け、そうして漸く、必然的に、壁を越え、翔ちゃんの手の平に乗ったソウルをついに見出したのだった。


「よ、よりちゃん?」


 恐る恐る声を掛けてくれる翔ちゃんは、急に目を閉じて黙ってしまった私を心配してくれたのだろう。それとも霊視えない私に対する心配か。


 だけどもう大丈夫、二人を邪魔する物など何も無い。そうだ、何も、怖く、無い。


「ううん、霊視えるっ、霊視えるよ翔ちゃん!」

「えっ、霊視えるの? ……あー、そっか。あはは、そうかもね」

「うん、確かにそこに光り輝く黄金色の玉が霊視えてるよ。少し浮いてもいるよ」

「あはは、うん、うん? え……霊視えてる? え、見えてるの? 黄金色の、玉? え? これ浮いてんの!?」

「う、うん……」


 あれ、違うのかな。でも私にはそこに黄金色の玉が霊視えている訳なのだけれども。


「えっと、それは福引の一等賞みたいな感じの?」

「うん、光輝いているよ」

「へ、へぇ……そっか……ま、まあいいかそういう事もあるよね。よりちゃんだもの……それでね、この玉を今からストラップに入れたいと思います」


 翔ちゃんは口元をヒクヒクさせて言った。

 まさか霊視える様になるとは思っていなかったのだろう。私の潜在的霊能力ポテンシャルの高さに驚いているのだ、きっと。


 翔ちゃんは手に持った黄金色の玉を、ミニマム翔ちゃん君人形に先ほどと同じ様な掛け声と共にえいやと玉ごと手の平を押し当てる様にした。すると見事黄金色の玉はミニマム翔ちゃん君人形に吸い込まれていったのだ。


「凄い!」


 私は興奮して思わずといった感じでそう言った。


「凄い、凄いよね。ね? ミカちゃん凄いよね! 先生も、見ましたか?」

「あ、ああ……」

「うん……」


 二人はだけど、こんな素晴らしい奇跡を前にしても、眉間に皺を寄せ困った表情をしていた。

 私は一瞬不思議に思ったが、直ぐに思い出した。そう、二人は霊視えていないという事を。

 翔ちゃんはそんな二人の反応を、私と違ってさも当然の様に受け止めているようだ。

 私はその事に怒りよりも、言い表しようの無い優越感を覚えた。

 だって翔ちゃんが霊視えている世界は、私達二人だけの物だという事、きっとリリィちゃんにだって霊視えはしない。

 ここは二人だけの世界、それって無茶苦茶ロマンチックなのだから。


「それでどうかな? もうこれでそのぬいぐるみは持ってこなくてもいいでしょ」


 言われてハッと気付いた。

 そうだった、その話をしていたのだった。


 私は新しくソウルが入った翔ちゃん君人形と、今までの翔ちゃん君人形を見比べた。

 その違いは一目瞭然だった。

 今まで長い間魂ソウルが入っていた翔ちゃん君人形の姿かたちは全く変わらないながらも、しかし宿した生命いのちの輝きがまるで違ったのだ。

 そうして私は今までの認識を改める事にした。

 ソウルとは翔ちゃんの縮れ毛に非ず!

 そしてソウルとは物ですら無い。

 ソウルとは翔ちゃんが、或いは高次元に居るアストラルパワーの集合体としての翔ちゃんかが作りだす何か不思議な物であって、必然的にその移動はやはり翔ちゃん以外には適わないのだ。


 やはりそうだったのだ。

 私の愛した人はそんな事を、そんな奇跡をいとも簡単に起こした正に神であったのだ。

 だとしたら神は、いえ、しゅはいつでも私の傍に居るべき存在なはずで、それだというのに私ときたら翔ちゃん分が足りなくて辛いだなんて言って、周りや翔ちゃんに迷惑を掛けて、未熟な精神を恥じる事もせずに、なんと愚かなのだろう。


「…………」


 翔ちゃん君人形が心配そうに声を掛けてくれた、そこで私は初めて自分が泣いている事実を知った。

 気付かず流れ落ちた涙が、新しい体に戸惑い自分だけで精一杯のはずの翔ちゃん君人形を心配させたみたいだ。


――ごめんね、心配かけて。私は平気だよ。それよりも新しい体の調子はいかが?


「…………」


――それは良かった。これからも一緒だよ。


「…………」


――うふふ、ありがとう。


「おい、倉橋またお前……」

「りこちゃん……」


 私達の声無きお喋りの様子は、翔ちゃんを除く二人の目には奇異な姿に映った様だ。


「もしかしてよりちゃん、お人形とお話してるのかな?」


 でも翔ちゃんだけは少し苦笑するだけで、その二人とは全く別の反応で、大人が幼い子供語りかけるようにしてきた。。

 私もそうされると何だか子供になったみたいに嬉しくなって、大人に甘えるのが仕事の子供みたいに「うん、そうだよー」と返すと、翔ちゃんは「全く、相変わらずよりちゃんはよりちゃんだね」なんて、少し呆れてるみたいにして、だけどにっこり微笑んでくれる。

 他の人とはまるきり違う反応、それを確信を持って待てる私の信頼。

 やっぱりやっぱり翔ちゃんって凄い。

 私の行動が少しだけ変だって事は、実は私自身ある程度理解しているのだ。

 リリィちゃんの云う「アレ」がこの事なのかどうかは定かでは無いが、私は他の「普通」とは少し違う子なのだ。

 翔ちゃん君人形とお喋りしたり、ペロペロにしたって、ティッシュを食べちゃったりするのだって絶対変だって自分でもわかってる。「普通」の人がそういうのを嫌ってるというのも知っている。

 だけど翔ちゃんはそんな私を丸ごと全部受け止めてくれるのだ。きっと翔ちゃんなら私の行動を今みたいに「全くもう」なんて言いながら許してくれる。そう信じられるのだ。

 思えばこの間のティッシュモチャモチャ白子事件にしても、お顔ペロペロ忍法帳にしても、思い切って打ち明けてしまえば良かったのではなかろうか。

 そうしても翔ちゃんはきっと呆れはするだろうけれど、咎めたりはしないだろうし、そうなれば誰に憚ることなく、大手を振って翔ちゃん分を補充できるというものだ。


「えへ、えへへ……ぐひひぃ……」


 思い描いた明るい未来が、暗雲広がる憂鬱な空に差し込む一筋のエンジェルラダーみたく私を照らす様だ。


 思わず溢れ出た愉悦の声に、もとい乙女の甘い恋心のそれに、翔ちゃん以外の絶句する二人の反応も、今の私にはどうでも良い事であった。





 この後滅茶苦茶芋虫した(したとは言っていない)


 お久しぶりでございます。

 99割の人にはどうでもよい話でしょうが、とりま、ラブラボからパクって無いって主張しときます。

 あのアニメ、原作は漫画らしくて、恐らく拙作よりも随分早くに雑誌に掲載されていたはずです。

 んで、一話を見てヒロインの名前がかなり似てて、しかも友達? から「りこぴんさん」って呼ばれたのを聞いて、怖くなりました。

 いや、りこって名前なら当然考え付くだろうあだ名でしょうが、脳内にのみあるプロットの中にしか存在してなかったよりこのあだ名がどうしてこんな所に、ってなって、恐怖でそこで視聴を止めてしまいましたw ちょっと自分を疑ってしまったwww 仕方ないねw

 繰り返しになりますが、パクって無いです。私がパクってるのは、元ネタをわかり易く書いているか、タイムマシーン(銀魂)とかだけです。それ以外は殆どオリジナルのネタの筈。

……等と書きつつ勿論プロットを代える気もありませんでしたがw

 さて、とりあえずここまで書けましたので、改めてラブラボ視聴したいと思います。レズでは無い、少女の恋物語の良アニメとの評判。期待してます。


 それはさておき、お次もよりこです。

 今回は色々あって更新が滞ってしまいました。

 さーせん。

 これからも拙文ではありますが、よろしくどうぞです。

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