第45話 妖精さんも大満足! はぐはぐもぐもぐ一ポンド特上ステーキセット(後)
倉橋みすず その2 後
言ってから健悟は私達の反応を待った。
横目に翔太さんはビックリした様子でオロオロしていた。
「ど、どうして……そ、そう思うんですか?」
「どうしても何も、あからさまだよ」
「そう、ですか……」
「それにみすちぃが君みたいな奴と付き合う訳無いっしょ? この娘凄いメンクイだし」
うわー、何それすげー失礼だ。
「それは……そうかも知れませんけど、でもみすずちゃんは顔で人を判断する子じゃ無いって思います」
翔太さん……嬉しい。私とっても嬉しい。
でもごめんね。翔太さんってとっても優しいし男らしいし素敵過ぎるけど、私って翔太さんの見た目にもやられてるの。こいつの言うとおりメンクイなの。貴方みたいに格好良く無かったら、もしかしたらここまで想う事は無かったかも知れない。そんな浅ましくて愚かな女です、私は。
ん? でも私がメンクイだとしたら全然問題無いじゃん。翔太さん以上の格好良い男の人だなんて居るはずないし、何言ってんだこいつ。
馬鹿じゃねーの? 寝取られてラリってんのか? そうだ、サレ夫のラリって奴だきっと。
「みすちぃもこんな奴連れてきてどうしたかった訳? そんなに俺と別れたかったの? そんなに俺の事が嫌いなの?」
「……こんな奴?」
やっぱりラリってる。
こんな奴だなんて、まるで翔太さんが駄目な男みたいじゃないか。
負け惜しみか? ああきっとそうだろう。
ほんと情け無い奴だ。もし翔太さんが居なかったとしても別れて正解だな。
「そうじゃ無いよ。別に嫌いになった訳じゃ無い。だけど私は翔太さんが好きなの」
本当は「うん、そうだよ」って言ってやってサクッと終わらせられるけど、そうなると計画がオジャンになってしまう。
「あのさ……まだそんな嘘吐く訳? 有り得ないでしょ、こんなのとさ」
はあ? 本当何言ってんだこいつ、さっきから意味わからん。
ああ、あれか、私と翔太さんが釣り合わないって意味か、あーなるほどねー、わかるっ!
……って死ねっ!!!
こちとらんなこたぁ百も承知よっ! それでも頑張ってんだよっ! わざわざお前になんて言われたく無いわ。
「そんな事無いよね? 翔太さん私達付き合ってるもんね?」
「あ、ああ。うん……」
あれ? 何で翔太さん辛そうな顔してるの?
そうか、もしかして健悟の言葉が気に障ったのかな。
これ以上は翔太さんにも悪いし、ここはもうちゃっちゃとやってしまおう。
「いい加減にしろよ。お前ら俺の事舐めてんのか?」
そう言って凄む健悟。
おお怖-。
もう頃合だな。
「止めて、そんな怖い顔で怒らないで……仕方ありません、翔太さん、私とキスしましょう」
「え? キス?」
そう、これが私の計画であり、願望であった。
本当はもっとロマンチックな場所でとか雰囲気でとか妄想した事もあるけれど、二人の彼女が出来てしまった現在、四の五の言っていられない。こんな真似でもしなければ翔太さんがどんどん手の届かない所にいってしまうのだ。
「そうです。どうしても嘘だって思われているんです。だからキスしましょう。キスで証明するんです」
「それはマズイよ。だって皆見てるし、それにいくらなんでも」
「いいえ、見せ付けてやりましょう。私達がどれくらい愛し合っているかを」
「いや、だけどみすずちゃん、それにしたって」
ええいっ!
言葉はもう不要、後は行動あるのみ。
私は翔太さんに抱きつきそのまま唇を奉げた。奉げたというより迫った訳だが。
目を瞑り一気に彼の唇にチュッと触れた。
だけど、少し思っていた感触とは違った。
あれっ? おかしいな。
そう思ってはいたものの、何せ生まれて初めての、そして熱望していた翔太さんとのキスだ。気にする余裕などなかった。
それよりも、私は舌を突き入れて翔太さんの口の中を舐り回そうとして、そこで今まで感じていた物の正体を知った。
これ、誰かの手だ。
「よりちゃん!?」
翔太さんの上げた声にはっとして、私と翔太さんとの間に差し込まれた手の平の主を仰ぎ見れば、そこには確かにお姉ちゃんが居た。
「そい、だったかな? 間一髪、だね?」
口元だけをにっこりと、しかし目が座ったままの笑顔を見せるお姉ちゃん。
翔太さんの慈愛を感じさせるそれとは真逆の、見る者に不安と恐怖を抱かせるアルカイックスマイルだ。
「お姉ちゃん、いつの間に!?」
全く気が付かなかった。
「最初の最初からだよ」
「最初の最初って……」
「えっとねー、みすずちゃんがやって来る前から別の席で待ってたんだー」
「そんな……」
何で、どうして、そんな疑問は直ぐに解消された。
当たり前だ。お姉ちゃん達が居る前で翔太さんだけを誘ったのだ。
むしろお姉ちゃんが怪しまないはずが、邪魔しようとしないはずが無い。
私は、翔太さんとのキスという至高の甘露に、オアシスを見出し無我夢中で駆け寄る砂漠の遭難者の如く、そんな当たり前の事すら気付かないほど逆上せ上がり我を忘れていたのだ。
私は夢から覚める様に、はたまた頭から冷水を浴びせかけられたみたいに興奮が、熱が引いていくのを感じた。今では底冷えする寒さすら感じる。
お姉ちゃんはそんな私を、笑みを口元に貼り付けたまま冷えた目で見つめた。その瞳に宿るのは怒りと、そして嘲笑だろう。
私は自分の浅はかさが恥ずかしくなり、頭は冷えたが、頬にだけ熱を感じた。
お姉ちゃんはにそんな私をにやりと笑い、次に健悟を見た。
「初めましてー、みすずの姉のよりこですー」
「……あっ、初めまして」
健悟は驚いてポカンと口を開けていたが、お姉ちゃんが自己紹介すると我を取り戻した。
しかしお姉ちゃんの姿をその眼に収め、今度は違う意味で口を馬鹿みたいに開けた。
大人っぽくて美しい顔立ちに完璧すぎるプロポーションのお姉ちゃん。
健悟はそう、またもや見とれているのだ。
こいつが私を初めて見た時よりも、更に。さっきのチビ外人の時よりも更にだ。
こんな言い方屈辱以外の何物でも無いが、敢えて言うと、お姉ちゃんは私の上位互換だ。
私が持っている魅力を全て持ち、そして上回っている。
その事実を健悟の反応が浮き彫りにしてしまった。
私が今抱いているこの気持ちは嫉妬だろうか劣等感だろうか、ああきっとその両方だろう。
私は急に泣きたくなった。
いいや訂正しよう。
まだ零れていないとはいえ、既に涙で視界が滲んでいるのだ。
こんなお姉ちゃんモドキといえる私がお姉ちゃんに打ち勝つだなんてありえるのだろうか、健悟や他の男がそうである様に、翔太さんも絶対お姉ちゃんの方が良いに決まっているのだ。
きっと翔太さんもお姉ちゃんにしか興味が無いんだろう。
私はそう思い、だけどつい翔太さんの方を向いた。
はっきりとわかってしまえば辛いだけだというのに……。
「あれ、みすずちゃん、泣いてるの?」
だけどそんな私の予想とは裏腹に、翔太さんは泣き出しそうな私の顔を心配そうに見ていた。
場所が無いにも関わらず、何とか隣に座ろうと努力しているお姉ちゃんを片手であやす様にして制しながらだ。。
「あっ……」
「えっ? どうしたの? どこか痛いの?」
私には予想外過ぎて、驚いて言葉を失ってしまった。
私の泣き顔に戸惑った翔太さんが、見当違いの心配をしている。
普段の私であればそんな翔太さんがおかしくあったろうけれど、今はそれどころでは無かった。
だって、お姉ちゃんが来たんだよ。
私なんかより綺麗でセクシーで、可愛い所も一杯あって、優しくて、それでいて大人で……。
言うなればスーパースターがやって来たんだ。皆お姉ちゃんに首ったけになるはずでしょ?
なのに、翔太さんはグイグイと押しくら饅頭の様に強引に隣に座ろうとしているお姉ちゃんを、あろう事か見向きもしないで、私なんかの心配をしている。
どうして?
私のその疑問は、しかし今度もまた簡単に解決したのだ。
私を心配する翔太さんの仕草や表情はいつもと変わらない。だからこそわかってしまう、その公平性を、翔太さんにとってお姉ちゃんや私、チビ外人や健悟やその他の人、きっと皆翔太さんにとっては同じなのだ。だけど同じとはいってもお姉ちゃんは彼女でチビ外人もそうなのだから、二人と私達では全然立場が違うのだけれど。だけどさっきの私みたいにしていたら真っ先に心配してくれる。そんな人なんだ、翔太さんって。
「え、その……」
「うん」
「目にゴミが入っちゃって」
「ああ、あるある。……そっか、急に表情が暗くなったからどうしたのかなって思ってたけど、それってあるあるだよね?」
「あっ、はい。あるあるです」
「特にみすずちゃんは目が大きいからゴミが入り易いのかな? 目が大きいと可愛いけど、そういうの大変だね」
「いえっ、そんな!」
そんな事無いです。
翔太さんに可愛いって言って貰えるならゴミの一つや二つどうって事ないです。
……本当はそうじゃないんだけど。
「あっ、ごめんね。ちょっと詰めて貰えるかな。よりちゃんが……」
未だ隣に座ろうとああでも無いこうでもないとしているお姉ちゃんを見かねて翔太さんが言った。
私は言われた通り席を詰めると翔太さんも詰めてきて私にピタリとくっ付く形になった。
するとお姉ちゃんは滑り込む様に翔太さんの隣に座り、瞬く間に腕を組んだ。
お姉ちゃんに腕を組まれたのは気に入らないけれど、翔太さんとくっ付けたからプラスマイナスでいうとプラスだ。それもプラス百くらい。
「それで、みすずちゃんの事なんですけど」
私が落ち着くのを待って、翔太さんはいつまでもポケーっとしている健悟に話しかけた。
健悟はそれまでずっとお姉ちゃんを見つめていたけれど、翔太さんの声に気付き我に返った。
「貴方の言うとおり、みすずちゃんと僕は付き合ってません。 ……だけど、みすずちゃんは貴方と別れたがっています」
「…………そう、なの?」
健悟は心底しょんぼりした表情で言った。
その顔を見て、何を一丁前に残念がっているんだとも思ったので、またいつも通りの返答をしてやろうと思った。
でも私を見つめる翔太さんの真剣な眼差しが私を射抜き、もう絶対にそんな事を言ってはいけないのだと悟った。
翔太さんの信頼を得たいのならば、ここでちゃんとしないと。
「うん、ごめんね。その……私にはまだ、その早すぎるっていうか……最初はそんなつもりじゃなくて、ちゃんとしようって思ってたけど……でもやっぱりそういうんじゃ無いから……」
「そういうんじゃって何? 早すぎるって言うんなら、俺全然待つし、みすちぃが良いって言うまで待つし……俺はとにかく別れたく無いよ。 ……大好きなんだ、みすちぃの事、愛してるんだ!」
もし、私がさっきまでの私なら、この健悟の台詞は一笑に付しただろう。だけど翔太さんが見ている。
ならば私も真剣に向き合わなければいけない。このザ〇メン製造機と……!
「ごめん! 私、本当は健悟の事好きでも何でもなかったの。今まで期待させる様な事言っててごめんなさい!」
私は両手を拝む様に合わせていった。
ショックを受けた様に体を強張らせる健悟。
「でも、もしかしたら好きになるかもって思ってたんだけど、でも、やっぱり駄目だった」
「そう……か」
健悟はショックの余り、声が思うように出ないらしい。
私はそんな彼に申し訳無く思いながらも、何とか納得してくれそうな雰囲気になっている事に気付き、続けて別れを告げようとした。
だがそこでお姉ちゃんが口を挟んだ。
「あの、ちょっといいですか?」
「は……い」
健悟が擦れ声で答えた。
「みすずちゃんと健悟? さんはどこで知り合ったんですか?」
「あ……それは……」
健気に答えようとする健悟が可哀想で、私が代わりに答える事にした。
「私の友達のお兄さんの友達。遊びに行った時に偶々居て、その時に紹介された」
「へえ……」
「それが何? お姉ちゃん」
「あ、別に……ちょっと知りたかっただけだから」
「そう」
「あの……何か問題でも」
健悟が動揺を抑えて、不安げに言った。
「あっ、本当にちょっと知りたかっただけなんで……それだけです」
「はあ……」
良い感じでに別れ話を進めてきたのに、無意味な質問で水を差すお姉ちゃん。
私は気持ちの盛り上がりをどこへぶつけて良いのやらわからず悶えそうになる。
……因みに、この質問は本当に意味が無い。
普通はこんな知的な美人がこんな意味深な事いったら、絶対何か考えがあるって思う人が殆どだろうが、お姉ちゃんに限ってそれは無い。本当に興味本位で聞いただけなのだ。
その証拠に、お姉ちゃんは興味が失せたのだろう、ストローの袋に水を掛けて遊んでいる。
そしてそんなお姉ちゃんを苦笑いで見ている翔太さんも、取り立てて何かあるとは思っていないみたいだ。
お姉ちゃんって昔っからそうなのだ。翔太さんが隣にいると特にそれが顕著になる。
仕切りなおしだ。
溜息を吐いてから言った。
「はぁ……取り合えずそういう事だから、私あんたとは付き合えない」
「…………でも、俺は好きなんだ」
「うん、ありがとう……でも無理だから……ごめんね」
「なあ、ちょっと待ってくれないか。俺の事嫌いになっちゃったのか? みすちぃの言った事はわかるつもりだけど、だからってはいそうですかって言えないよ俺。友達からとかも駄目なのか?」
「……うーん」
何と言えば納得してくれるのだろう。
さっきまで納得してくれる雰囲気だったのに……それもこれもお姉ちゃんが横槍を入れたからだ。
――もしかしてお姉ちゃん、本当はそれを狙って!? 私と健悟がくっつけばいいと思ってわざと?
……ないか。
普段ならそのぐらいしてくるだろうが、翔太さんの腕に顔を押し付けて、足りなくなった「翔太さん分」をすんすんと補給している今のお姉ちゃんには興味の無い事だろう。
「みすずちゃん、友達からでも駄目なの?」
「うーん」と考えあぐねている私を見かねて翔太さんが口を開いた。
「そうだよ、みすちぃ。良さそうな人じゃん。別れることなんて無いよ」
言ったのはお姉ちゃんだ。
みすちぃ……その呼び方、止めてくれないだろうか。
第一、本当にこいつを良さそうな人だなんて思っているのか。どうみても屑夫じゃん、自分の彼氏と比べて見ろよ、一目瞭然だろうが。
大方お姉ちゃんは翔太さんから遠ざけたいが為に無責任に言ってるだけだ。
全く、翔太さんが関わると、普段優しいお姉ちゃんは人が変わって形振り構わなくなる。
「そうよ、良い人っぽいじゃん。あんたたち付き合っちゃいなヨ!」
茶々を入れたのは、トレイに飲み物を載せてやってきたチビ外人であった。
「って……よりこも来たの? いつの間に……」
「いつの間にも何も、最初から居たよ……だってラーメン……」
「ラーメン? あっ、もしかしてあっちの席の伸びきったラーメンてあんたの?」
「そうだよ、だってあれは……」
「止めてよね、食べないなら注文するの。勿体無いじゃん」
「だって私は紅茶を……」
「はい? 紅茶が何?」
「何でも無い……」
以上の会話で大体話がわかった。
お姉ちゃんも私と同じだ。
そもそもお姉ちゃんがラーメンを頼むはずが無い。
ダイエット中であるらしいのは別としても、頼むとすれば好物のうどんだろう。
「ふーんまいっか。んでもさ、大体翔太は私っていう可愛い彼女が居る訳、そいつとは付き合って無いってのは、聞いた?」
そのチビ外人の発言に、辺りがざわざわとざわめいた。
「えっ、こいつと君付き合ってんの?」
「えっと……」
「私とも付き合ってますっ!」
お姉ちゃん。話がややこしくなるから今は……。
「……何それ、マジで言ってんの?」
「マジですっ!」
キリッとした表情でお姉ちゃんが言う。
するとショックを受けた顔の健悟。
ああ、あれか。
可愛いと綺麗だと思った二人の女の子の両方に彼氏がいるって言われたからか。
最低だなこいつ。
だとしても相手は翔太さん、こいつでは太刀打ち出来まい。
不細工に生まれた己を呪うが良い。
「君最低だな。しかも有り得ないでしょ、君みたい奴と」
健悟は何を思ったのか、いきなりそんな事を言い始めた。
何が君みたいな奴なのかはわからないけれど、翔太さんが二股を掛ける最低な男だというのは、確かにそうだと思う。しかしだからと言って、蛆虫野朗であるこいつが言って言い台詞では無い。
言うに事欠いて、しかもお前如きが翔太さんに対してっ!
遂に堪忍袋の尾が切れた。
「お前、ふざけっ……」
「ふざけないでっ! 翔ちゃん悪く無いよっ! それにそっちこそ淫行じゃんっ! 犯罪じゃんっ!」
私の激昂を遮ってお姉ちゃんが鋭く言った。
「そうよっ! インコーじゃん、犯罪じゃん! 大体あんたみたいな他人にとやかく言われる筋合いなんて無いわっ!」
「うっ……」
チビ外人も同じ様に言った。
二人とも健悟を親の敵か何かみたいに睨んだ。
まさかの反撃に怯む健悟。
そうやっていると、はてといった様子でチビ外人がお姉ちゃんに聞いた。
「ところでインコーって何?」
「えっ、淫行っていうのは……未成年の子をそういう風にして……つまりロリコンって事だよ」
「そっか、やっぱそういう意味か。おいロリコン! 社会のゴミめっ! ロリコンは翔太だけで沢山よっ!」
「ええっ! リリィ!?」
ロリコン呼ばわりされた翔太さん。
残念ながら間違ってはいないのだから、下手に私がフォローすれば思わぬ失態を演じそうで怖い。
だからと言って、好きな人が変態呼ばわりでは女が廃る。
「ちがっ……」
「違うよっ! 翔ちゃんロリコンじゃないよっ! ちょっと小さい女の子が好きなだけだよっ!」
またしても私の抗議は遮られた。
……いや、別にいいんだけども。
「それってロリコンじゃん、意味わかんねぇわ」
「そ、それは……じゃ、じゃあ私はショタコンだねっ!」
ショタコン? お姉ちゃんがガキを好きだって? そんな話聞いたこと無いんだけど……あっ、もしかしてそれって……。
「うん? どういう意味? あんたはジャリ(小さい男の子)が好きだって事? そうなの?」
「えっ、よりちゃんそうだったの?」
翔太さんも気になったようだ。
「へっへ~ん、違うよー」
「違うの? じゃあどんな意味よ」
「それはねー……」
「翔太コンプレックスって意味でしょお姉ちゃん」
「うっ……」
やっぱりね。
ああくだんねぇ……。
「ああ、なるほどね」
「そうか、流石はよりちゃんだね、上手い!」
「えへへ~、ありがとう」
と思ったけど、翔太さんに褒められるなんてお姉ちゃん凄いよ。
でも劣等感って、ちょっと意味違うような……。
「あのさぁ、お前ら舐めてんの?」
私達は本題を忘れてお喋りに興じている最中。
割り込む様に不穏な言葉遣いの低い声が聞こえた。
自分を蔑ろにされたとでも思ったのか、健悟がいつの間にかキレてしまったようだった。
何こいつ、逆切れ?
自分は犯罪者の癖に何言ってんの?
しかし今の健悟にそんな理屈は通用しなさそうだ。
二十歳の男の怒りとやらは、私が今まで知った中では一番危険に感じる、怖いとすら思えた。
「いえ、そんな事は無いです」
翔太さんは、漂う健悟の危うさを機敏に感じ取った様で、自ら進んで、臆する事無く真剣な顔でそう返した。
「おい! ふざけんなデブ! お前さっきから何なんだ、あ?」
健悟はあろう事か、翔太さんの胸倉を乱暴に掴んで引き寄せた。
ガシャンとテーブルの上のグラスが倒れた。
皆何事かとこちらを注目され、ざわつく店内がピタリと静かになった。
「何なんだって言われましても……」
「お前調子乗ってんなよ、マジで何なんだよお前」
「だから何なんだって何ですか」
目を逸らさずに、尚も健悟をじっと見つめる翔太さん。心なしか声が震え上擦っている。
お姉ちゃんは助け舟を出そうとしたが、翔太さんが腕をお姉ちゃんの前に出して止めた。
チビ外人に至っては目を大きく見開き、体を硬直させているだけだった。
こいつは突然のこの事態に付いていけていないようだ。
「お前、ちょっと表出ろよ」
こいつっ!!!
私はいよいよマズイと思い、誰か助けを呼ぼうと通路の方を振り向くとチビ外人がビックリした表情で隣を見上げている。私はもうこれ以上何があるのだとその視線の先を追うと、そこには何故なのか、ウェイター姿の兄である祐一が立っていた。
こいつ、バイトしてるとは聞いていたが、まさかここだったとは。
祐一は無言で腕を伸ばし、健悟の胸元をいきなり掴むと、何とそのまま持ち上げたでは無いか。健悟は備え付けのテーブルから引き出されるように座ったまま無理やり持ち上げられた。
そしてその拍子に翔太さんを掴む手が解けた。
「お前誰だ?」
ゆっくりとした静かな声で祐一は聞いた。
一般的な体格の男性の筈の健悟を、足が床に付いているものの、片手で軽々と持ち上げながらそう言った。
「祐一君!? ちょっと……」
「すんません、お兄ちゃん口を出さないで下さい。 ……なあお前、誰なんだ? もしかして妹の彼氏か?」
「あっ、うっ……」
祐一は今まで見た事も無いほど怖い顔をして健悟を睨んだ。
健悟はさっきまでの威勢はどこへやら、すっかり大人しくなってしまった。
私は何も言わない健悟の代わりに答えた。
「お兄ちゃん! もうこんな奴彼氏じゃねえよっ!」
ナイスタイミングで現れた祐一を褒めてやろうと「お兄ちゃん」といつもの「兄貴」では無く、最大級の親しさで以って呼んだつもりであったが。
「煩い糞餓鬼、お前は黙ってろ」
だが、祐一は私をギロリと睨んでそう言った。
怖い――。
こんなきつい表情の祐一は今まで見た事無かった。
お姉ちゃんも怖い表情で睨んでくる事はあったけれど、この祐一の視線はそれよりも遥かに恐ろしくて、睨まれるだけで怯んでしまう。先ほどの健悟に対して感じた恐怖心など記憶から消し飛ぶくらいだ。
「お前誰に手ぇ出したかわかってんのか? 俺のお兄ちゃんに何してくれてんだ、おいっ」
祐一は更に健悟を睨み、益々怯える健悟。
いよいよマズイ事になってきたかと思っている内に、翔太さんが祐一の腕をそっと掴んで言った。
「祐一君、もう良いよ。ありがとう」
祐一は迷った様な表情を浮かべた後、ゆっくりと健悟を席に下ろした。
それで終われば良かったのだが、健悟の気が済まなかったのだろう。
ごほごほと咳き込みながら、健悟はキッとチビ外人を睨んだ。
「おい、責任者を呼べ」
考えてみれば当然だろう、チビ外人や私は今まで知らなかったが祐一はここの店員だ。
その店員が客に手を出したとなれば、もう負け犬である健悟がプライドを守る為に、最後にそういう手段に出る事はわかりきっていたのだった。
健悟は祐一が恐ろしいのか、決して目を合わさず、その指示はチビ外人に対して行われた。
言われてチビ外人は戸惑っていた。しかし諦めた様に頷き、動こうとすると、通路から歩いてくる男性の姿に「あっ」と呟いた。
「はい。お客様。どういったご用件でしょうか」
どちらかというと背の低い男性がそう答えた。
騒ぎを聞きつけたこの店の店長らしき人物が既にこの場に来ていたのだった。
「あんた店長か?」
「はい、そうです」
「はいそうですってな……お前、さっきまでの見てたんだろう? どういう事か説明してくれよ」
説明を求められても、今さっききたばかりで事情が良く飲み込めていないらしく、店長は困った顔でチビ外人と祐一を交互に見た。
その店長の仕草に我を取り戻したチビ外人が言った。
「店長! いやパパっ! こいつ悪い奴だよっ!」
何だ?
この店の店長ってチビ外人の親父なのか?
「……っ! パパ……!? リリィちゃん。お客様をそんな風に言ってはいけないよ」
「でもパパ……」
「おふっ!」
うん?
この店長。パパって呼ばれるたんびにビクッビクッて震えている。
「……お、お客様、ウチの従業員が何か粗相を?」
だが店長はどうにか持ち直した様だ。
「粗相どころじゃないぞ、こいつが、俺に暴力を振るったんだ。なあ、そうだろ?」
健悟は祐一に対して煽る様に言ったが、祐一は眉間に皺を寄せ黙っている。
「おい! お前何とか言えよ。お前も見てただろうが」
今度は翔太さんに対して偉そうにそう言った。
「それは……」
翔太さんは困った顔でそれきり何も言わない。
「……お前らふざけんなっ! ……まあいい、で? どうやって責任とってくれる訳?」
「そう仰られましても……取り合えずお話は、他のお客様のご迷惑になりますので、出来れば奥のスタッフルームに来て頂いて宜しいでしょうか……」
「チッ! わかった、そうする」
健悟は翔太さんを睨みながら立ち上がり店長について歩き出した。
そこへ、私の席から見て斜め後ろの席に体格の良い男性が立ち上がり声を掛けた。
「ああ、会長。私が代わりますよ」
「あっ、いつもご苦労様です。じゃあお願い出来ますか?」
ん? 会長?
「はい」
「いつもいつもすみません」
「いいえ、その為の我々ですから」
「そう言って頂けると……署長に……会員ナンバー二番によろしくお伝え下さい」
「なぁに、同じ志を共にする者同士、協力は当たり前ですよ。署長……会員ナンバー二番もしっかり務めを果たせと言っていました」
「それは心強い」
「それに私も会員ナンバー四十五番である事を自負しています。妖精の為ならば、例え火の中水の中もなんのその」
「ありがとうございます。このお礼は直接……」
「いやいや、それは困ります。妖精は皆で分かち合う物。そのお気持ちは是非サイトで……」
「そうですね、失礼しました」
「いやぁ、娘も妖精の大ファンでしてね。早く次の写真は無いのかとせがまれまして、ナンバー二番もお孫さんにせっつかれて大変だとか、ですのでお願いしますよ」
「おお、そうでしたか、それは勿論……確か会員ナンバー二番のお孫さんは女の子でしたよね」
「ええ、今年で小学校に上がったとか……」
意味不明な会話。
二人のおっさんが、そのまま謎の世間話を始めそうになっているのに業を煮やして、健悟が聞いた。
「あんた誰だ」
「ん? ああ、とある会の会員とだけ名乗っておこう」
「いや、マジで意味わかんねえし。だからあんた誰だよ」
「まあまあ、いいじゃないか私が誰でも。さっ、行こうか?」
「えっ? あの、えっ?」
おっさんは健悟の隣にやってきて、肩をガッチリと抱き寄せ身動きを取れなくしてしまった。
焦ってもがく健悟だったが、もはやおっさんの虜となってしまってはどうにも逃げ出せない。
がっしりとしたおっさんと、どちらかというと華奢な健悟は、こんな時にこんな事を思う私は不謹慎かも知れないが、見ようによっては特定の趣味を持っているカップル風に見えてしまうのも否めない感じだった。
そうして健悟は「えっ」だの「あのっ」だの言いながら店の奥へと連行されてしまった。
健悟が去ってから、店の中に幾ばくかの静寂が訪れたが、数人の女性がヒソヒソと話し始めたのをきっかけに、何事も無かったかのように活気が戻ってきた。
しかし、その話題はやはり先ほどの事で、特段耳に付いたのは――
「倉橋キュン、さっきあのデブの事お兄ちゃんって……全然似てないから兄弟じゃ無いだろうし、やっぱり倉橋キュンはつまりそういう……」
「祐一君はノンケ、ソースは私。でも……この間振られたけど……」
「マジでか? あんた祐一君と付き合ってたん? ってかやった?」
「やった……でも、うぅ……祐一君……あんなに好きって言ってたのに……メールでさよならなんて……」
「へぇ、そうなんだぁ……だけど羨ましい……私も一度でいいから……」
「何言ってる! 倉橋キュンがノンケな訳無いだろ、いい加減にしろ!」
といった声や。
「祐一キュン×デブオタって事?」
「いや、デブのへたれ攻め祐一キュンの鬼畜受け、はっきりわかんだね」
といった声。それから。
「カップリングとしてはつまらないね、マッチョ親父×チャラ男とか今更過ぎて、もう……俺得だろ」
「って、おいいいいいぃ!? お前得かよっ!」
等と意味不明な会話をする女性の声であった。
……いや、意味は知ってるんだけれども。一応乙女としては知らないと言っておこう。
それから翔太さんの事デブって言った奴は死ね。今すぐ死ね。
翔太さんはデブで無くぽっちゃりだ、間違えんな糞ドブスども。
んなんだからケツメドクセェんだよお前ら、一回死んで地獄行って、その吹き出物だらけのきたねぇ尻に焼けた金棒でも突っ込まれて消毒して来い。
そんで祐一は普通に死んで来い。リアルに。最低すぎんだろ常識的に考えて……妹としてよりも女としてよりも人間として引くわ。
そんな女性達の声が聞こえたのは私だけだったのか、誰も何とも反応しなかった。
もしかしたらそれどころじゃ無かったからかも知れない。
店長さんはその場に残り翔太さんをじっと見つめ、翔太さんは緊張した面持ちでいたからだ。
「ええと……もしかして君が相川君?」
「はい、そうです」
店長が口を開いたが、それにはどこか棘が感じられた。
翔太さんはそれに気付いたのか、更に緊張を高めて答えた。
「そうか君が……初めまして、リリィちゃんの『パパ』です。君の事は雪絵さんとリリィちゃんから聞いてるよ」
「そうだったんですか……あの……ところでパパって?」
「ああ、今度雪絵さんと結婚する事になったんだ。だからね、リリィちゃんとも『家族』になるからね『パパ』って言うのはそういう意味だよ」
店長の威圧的な笑みを浮かべておっさんは「パパ」と「家族」やたらに強調して言った。
迫力に押されてか、翔太さんは若干引きつった笑みで「はあ、そうですか」と返した。
翔太さんは確認をとるようにチビ外人に視線を合わせると、チビ外人はうんと頷いてから口を開いた。
「うんまあ、そんな感じ」
チビ外人の肯定の言葉で、店長は更に威圧的な笑みを深くした。
だが、続けて放たれた明らかに棘を多分に含ませた台詞によって、顔色がさっと変わってしまった。
「でも店長。私まだママに言って無いです。言うの忘れてました、すんません」
「え……」
「多分今日くらいに言っときます。……あ、でもデリケートな問題なんで、もうちょい考えさせて貰っていいですか、デリケートなんで、ハートが。やっぱ『他人』をパパって呼ぶには抵抗があるんで」
「お、おう……」
あれ? お前さっきまでパパって呼んでなかったっけ?
「てか私、今色々あれなんで、一杯一杯なんで、もし店長が応援とかしてくれたらあれですけど、そうでなかったら時間掛かるかも知れません」
「そ、それは……」
「無理ですよね? 応援は。ママに言われてますもんね。じゃあちょっと待って下さい。色々あるんで、実際」
「うぅ……」
店長のテンションはみるみる落ちて、がっくりと肩を落としてしまった。
先ほどまでの自信に溢れた様子からは見る影も無く、いかな私とて哀れに思うほどであった。
ふーむ、どうやら複雑な事情みたいだ。
チビ外人が何を言ったか言わないかは知らないが、ああいう風な態度なのは、もしかしたらその結婚に不満でもあるからだろうか。それとも、チビ外人の表情を見れば悪びれた所が全く無い、それどころかむしろ怒ってる感じなので、翔太さんに対して威圧的に接した意趣返しなのかも知れない。
「店長、もういいわ、後俺らやっとくし。事務所戻っててよ。あの糞野朗の相手しといてよ」
「そうね、後は任せて下さい。そんであいつをとっちめてやって」
見かねた祐一が言って店長を追い返そうとし、追従してチビ外人もそう言った。
「あ、ああ……」
店長はうな垂れたまま、ゆっくりと踵を返そうとすると、何を思ったかチビ外人が擦り寄って言った。
「ね? パパお願い」
そして可愛らしくウインクをして見せた。
この時代にウインクって……。
しかしそう思うのは次世代の担い手となる私達だけ。若く見えるが、恐らくこの店長もおっさんなのであろう、チビ外人がその古臭い仕草をした瞬間、傍目からもわかるくらいに慄き、先ほどまで落ち込んでいたのもどこへやら、カンフル剤を注入されたが如く元気になり背筋をピーンと伸ばして事務所へと歩き出した。
「まかせとけっ! よーし、パパ頑張っちゃうぞ~!」
背中越しにコブシを振り上げて、上げたおっさんの気勢が営業中の店内に響き渡った。
そしておっさんが立ち去った後、チビ外人が先ほどの機械の様な無表情でぽつりと呟いた。
「ちょれー」
呟きは、そこにいる誰にも聞き取れただろうけれども、その誰もが何も言わなかった。
それから健悟の姿を見なくなった。祐一に聞けば、あれで大丈夫だとか何とか。とにかくも祐一やチビ外人が咎められる事は無くなったのだ。
当然私にとってはどうでも良い事だったのだが、心優しい翔太さんが二人を思い傷つかなくて済んだのは大きい。
しかし何ともあっけない幕切れであった。
そうして終わって得た事といえば、健悟はまるきりの役立たずであるという事をわかったというだけで、私の思いつきは徒労を越え、翔太さんに暴行を加えただけの最悪の結果となってしまった。
私は迷惑を掛けてしまった翔太さんに謝ったが、翔太さんは憤る周りを抑えて大丈夫だと、気にしなくて良いというだけで、いつもみたいにニコニコ笑っているだけだった。
結局、この中で株を上げたのは健悟から守った祐一と、働く姿を見せたチビ外人の二人だけであり、お姉ちゃんはいつも通りだったから割愛するとして、私はむしろマイナスになってしまっただろう。
私は翔太さんに対する申し訳なさと、浅はかな自分に嫌気がさして、恥ずかしくなりついつい大声で顔をグシャグシャにして泣いてしまった。絶対不細工になってたと思う。それに周りの迷惑になってしまい翔太さんに恥を掻かせてしまった。
翔太さんは、だけどそんなの気にした素振りを見せず、私が泣き止むまで頭を撫でてくれた。
嬉しい反面、子供の頃に戻ったみたいに思えて少し気恥ずかしい。
そうして私が泣き止んでからは色んなお話をした。
翔太さんはチビ外人の仕事が終わるまで待つつもりだったみたいで、結構遅くまで残ってお話した。
アニメの事だとか、ネットの事だとか、学校での事。後翔太さんが書いている小説も照れながらだけど話してくれた。翔太さんの、盗撮だけでは知らなかった一面を知れて凄く嬉しい。
夕飯もファミレスでとった。料理自体は全然美味しくなかったけれど、翔太さんと一緒に食べるご飯だったから、とても美味しく感じられた。
でもチビ外人とお姉ちゃんと祐一が同席していたのが鬱陶しかったけど……お前ら仕事しろよな……二十代後半っぽいおばさんが滅茶苦茶忙しそうにしてただろうが。
帰りは皆揃ってだ。
その間中もお喋りに花が咲いて――主に翔太さん以外が翔太さんに話しかける形で――とても楽しく過ごせた。
翔太さんと名残惜しくも別れて家に帰ると、私は今日あった事をお母さんとお父さんにまくし立てた。
でも二人は嫌な顔もせずに聞いてくれた。思えばこんなの小学生以来だったかも知れない。
今日は色々あったが、終わってみれば有意義で楽しい一日だった。
――翔太さん。
彼は本当に凄い人だ。
たった一日で私を全く別の私に生まれ変わらせてくれる。
彼と一緒にいるだけで毎日良い方向に作り変えられていく様だ。
その作り変えられた細胞の一つ一つ、丸ごと全部が翔太さんに恋をしていくのを感じる。そしてその全てを翔太さんに奉げたいと思う信奉する気持ち。
こんな素敵な気持ちって他には無いだろう。
そうだ、明日は私も早起きして翔太さんの寝顔を見に行こうかな、直接。それにもうお姉ちゃんには好き勝手させたくないし。翔太さんの事だから、私一人増えたって気にしないだろう。
ああ、明日が待ち遠しい……。
そういえば、健悟が連れて行かれてからいくらかたった頃の事だ。
夢中でお喋りをしていたから気に止めなかったけれど、パトカーのサイレンの音がやけに大きく聞こえた気がした。
それに後ろに座っていた二人組みが、何故だか店の奥に入って行くのも目撃した。何でも入会がどうとか聞こえたな……何だったかな、思い出せない。どうでも良さそうだし別にいいか。
それに健悟からの連絡も無いな。
良い事だ。
今日の事がよっぽど薬になったのだろう。
――めでたしめでたしだ。
健悟君は留置所でお泊りでした。
次回はちょっと空くかもしんねえです。




