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第38話 サプライズッ!!!

リリィ・アンダーソン その15





 翔太の部屋に戻って来た。

 よりこは未だに私の事を睨んでいるが、今は翔太と一緒なので別に怖くは無い。

 私達は翔太を間にしてベッドに座った。座ると直ぐ、翔太は無言の内に私の肩を片手で抱きよせた。

 翔太の初めて見せる強引な仕草に、私は驚くと共にドキドキした。

 でもよりこを見ると、彼女も同じ様にされていて、少しがっかりした。


「リリィ、話があるんだ。」


 そういうと翔太は私が痛くない程度の力で、更に抱き寄せた。

 顔が翔太の胸の所に来て頬が押しつぶされて、少し苦しい。

……が、良い。

 翔太の匂いとその男らしい力強さが私に苦しさを恍惚に変えてしまう。

 翔太がこんなに積極的に私を求めてくるのは初めてだ。

 むしろ私はもっと翔太に近づきたくて、ぐりぐりとこちらから顔を押し付けるようにした。


「話って何?」


 だが、翔太のその仕草から、その「話」の内容が唯事では無いと悟り、グッと身構えた。


「昨日、よりちゃんと話したんだけど......その、僕は二人の事が好きだ。」


「……そう。」


「だから......僕は、二人と付き合いたいんだ。」


「……ちょっと待って。」


 ふう、何言ってんのこいつ。最低だ。こいつ最低男だ。

 おまわりさん、こいつです。変態二股野郎がここにいます。

 もしかしたらって、よりこの話で薄々そうじゃないのかって思ってたけど、ついに言いやがったよ。


 覚悟していたとはいえ、私は翔太の告白に驚いた。

 それと同時に、私は理解した。

 もしかしたらこれが、私達にとって最後になってしまうのでは無いか、という事だ。

 今までの関係を清算して、新たな一歩を踏み出す。

 勿論今のままではいられない。

 もうこうなっては最後だ。

 私も覚悟を決めなければいけない。

 お互いのより良い関係の為に。

 だが、それはまだ見ぬ未知。今の私には想像すら出来ない。

 果たして一体どうなってしまうのか、不安で竦み震える心。


――それでも、私は言わなければいけない。



「ねえ、それってさ、この間の話とどう違う訳?」


 私が翔太を睨みながら放った言葉は、自分でも驚くほど冷静で冷徹で冷酷な、聞くだけで凍えてしまいそうな声色だった。

 そしてそんな私の言い方に翔太は少し怯んだ。


「それは......違わないけど......。」


「じゃあ何で態々『今』言う訳?」


「それは......今が一番良いって思って......。」


 情けない顔だ。


「ふーん、大体さ、この間はなし崩しにああなったけどさ、実際そんな事許されると思ってる訳?」


「けど......。」


「けど何?」


「けど僕は二人の事が好きなんだ。愛してるんだ。こんな事が許され無いのは知ってるよ。自分で最低だって思ってるよ。だけど駄目なんだ。二人じゃ無いと。」


「へぇ、そうなんだぁ。」


 私は煽るように呆れた様な声を出した。

 そんな声に自分で少し傷付く。


「リリィは嫌?」


 情けない顔をもっと情けなくして、まるで捨てられた子犬みたいに私を見つめる翔太。


「嫌よ、当たり前でしょ『うん、わかった♪』とか言うとでも思ったの? 馬鹿じゃないの?」


「う......。」


「それにあんた鏡見たことあんの? あんたみたいなキモデブが調子こいてんじゃないわよ、ふざけんな。」


「リリィちゃんっ! 言い過ぎだよ!」


 翔太の肩越しから、よりこの咎める声。でもその顔はニヤニヤと笑っている。


 今この場においては不自然だけれども、よりこにとっては実に好都合な話の流れ、間違ってはいない。

 それにしても普通は笑いながらであれば声色に出るのだけれど、流石はよりこだ。全く、この目で見ても信じられない離れ業をさらっとやってのける。もうここまでくれば声帯模写か腹話術の域だ。


「ほんと、リリィの言うとおりだと思う。でも好きなんだ。どうしてもなんだ。お願いリリィ......。」


 翔太はよりこから手を離し、両の腕で私を抱きしめた。

 私の顔は完全に翔太に覆い隠されている形となる。

 だが丁度良い。

 顔を見られなくて済む。

 もう表情を作らなくていいはありがたい。


「それにさ、あんた結婚はどうする気なの? 二人と結婚なんて出来ないでしょ? 重婚じゃん。捕まんでしょうが。」


 声が震えそうになるけど、何とか我慢した。


「それは......。」


「あんたさっきから、それは......とか、けど......とかばっかじゃん、やる気あんの? マジで。」


 翔太に抱きしめられてるから、もごもごしちゃってて迫力は無いが、今だけは助かっている。もう我慢も出来そうに無いからこれでどうにか誤魔化せるだろう。


「り、リリィちゃん、酷いよっ!」


 あ、ちょっと上ずってる。堪えきれなくなってるな、笑いが。こちらからは見えないけど丸わかりだわ。

 まあ、よっぽど嬉しいんだろうけどね。


「いいんだ、よりちゃん。リリィの言ってる事は本当なんだから。」


「でもっ。」


 よりこ、うっとおしい。


「そんな事より私の質問に答えてよ。どうなの? どっちと結婚するの?」


「……両方。」


 即答だった。一瞬も躊躇わなかった。


「は? なんて言ったの、今。」


 予想通りの答えだ。

 しかし私は聞こえない振りをした。


「両方だよ。僕は二人と結婚する。」


「はぁ? 私の話聞いてた? 出来る訳無いでしょうが、それに大体私のママは大反対よ。一昨日だってそれで喧嘩したし、昨日だってしたんだから。」


「う、それは......ごめん。」


 ぎゅうっと労わるかのように優しく抱きしめ直す翔太。

 そして片手で私の頭を撫でる。


……うう、苦しい。

 それに辛いわ。

 辛すぎる。

 だけどここではっきりしないといけない。


 私は悲鳴を上げる心と体に鞭打って続けた。


「だけど、雪絵さんには僕から説得するし、それに......。」


「それに?」


「リリィの事、絶対幸せにするから。」


 出たよ! 絶対に幸せにするって台詞。

 最悪だ......もう。

 でも頑張れ私! 負けんな。


「プッ、何それ、ありきたりね。プロポーズのつもり?」


 あれ? 大丈夫かな。ちゃんと噴出した感じになってるかな。


「う、うん。そのつもり......ごめん、こんなで......だけど絶対だから。」


「へぇ? 絶対なんだ?」


「うん、絶対。」


「私以外の女の子とも結婚するのにそんな事言えんの? 普通無理でしょ。そこんところどうすんのよ、考えてんの?」


「いや......考えてないけど。」


「考えてないんだ? じゃあ駄目じゃん。」


「今はまだ考えてないけど、でも、絶対に幸せにするから。」


「何、それ? 適当、過ぎ。」


 あ、もうそろそろ駄目っぽい、限界に近い、言葉が途切れてきたし、何とも思ってない振りするのも無理になってきた。


 ああ、思えば翔太と出会って六年くらいかしら。

 最初はなんだこいつって思ってたけど、気が付いたら無茶苦茶好きになってて、でも何だか言い出せなくって今まできたのよね。

 もしよりこがあんな暴走しなかったら、もしかしたら今でもあのままの関係でいたかも知れない。いいえ、きっとそうね。私にはそんな勇気無かったし、きっと翔太だってそうだと思う。

 だからそういう意味ではよりこにも感謝してる。

 なのに、結局こんな事になっちゃって残念に思ってしまうけれど......。


 さあ、もうそろそろいいかも。

 だって胸が苦しくって、辛くってしょうがないもの。

 早く言ってしまおう。言って楽になってしまおう。

 さあ――


 私は徐に、翔太の胸から這い出るように、彼を見上げた。


「リリィ......。」


「リリィちゃん......。」


 よりこの声が聞こえる、心配そうな声だけど、今どんな顔で言っているのかわからない。

 声色通りなのか、それともまたニヤニヤしているのか......まあ、どうでもいいか。

 翔太の顔は声と同じで心配そうにしているのだろう、現に私が顔を上げた時にピクッてした。

 でも今私はその顔が見えない。

 だって涙がポロポロ、後から後から出てくるんだもん。

 全く、私って泣いてばっかりだ。


「あの、ね、翔太。」


「うん。」


「私ね。」


「うん。」


「嬉しい。」


 先ずは感謝の気持ち。

 こんなに好きって言ってくれて、それから......。


「でもね、ごめんね、翔太。」


 そして謝罪。

 だって。


「折角、翔太が、こんなに好きって、言って、くれてるのに、私......。」


 私の言葉で翔太の体が震えるのがわかった。


 ああもう、胸が苦しい。もう本当に辛い。

 もう良いよね? もう言っちゃって良いよね。


「こんな、ありきたりでね、ごめんね。」


「駄目......駄目だよリリィっ!」


 ああ、もう、翔太が必死で引きとめようとしてるよ。


「でもごめん、言うよ。」


「リリィっ。」


 さあ、もう言おう。






「幸せにして下さい。」






「駄目だよリリっ......え?」


 翔太は私をぐっと抱え込んで叫ぼうとしたが、途中で気が付いたようだ。


「駄目、なの?」


 出来るだけ無垢を装って言う。


「えと......駄目じゃないよ......え、何で?」


「は? 何それ?」


 呆然としたよりこの声が聞こえる。


 やった!

 ついに言えた。

 んで、よりこざまぁ!

 そして翔太へのサプライズ(悪戯)成功!


 私は未だ流れる涙をそのままに、思えば長年の夢であった、プロポーズの時のどっきりを成功させたのだった。

 やっぱり結末のわかってる物語、つまり翔太の告白によるハッピーエンドをより良くする為には、ちょっとしたスパイスって必要よね。

 私が今まで布団の中でしてきた妄想をついに実現させたのだ。

 最高の気分だ。

 はぁ~。しかしきつかったわ。心が悲鳴上げてたわ。

 だって、結婚してくれるって言われたし、ママの事何とかするって言ったし、それに......私の事絶対幸せにするって言ったんだもん。

 幸せ過ぎて胸が張り裂けそうだったわ。そういう事ってあるのね。

 それに未だに嬉し涙が止まらない。


「翔太、好き! 翔太! 翔太!」


 兎に角もう、感情の抑制が出来ない。私は気持ちの赴くまま翔太の胸に顔を擦り付けた。


「え、あの......リリィ?」


 未だに戸惑う翔太、でも。


「ね! 翔太、ね! 結婚するんだもんね、私達! するんだよね!?」


「うん、するよ、絶対するから、リリィ。」


 やっぱり即答な翔太は、私の頭に顔を擦り付けた。


「わああぁ! 翔太、好き! 嬉しい! 翔太、翔太!」


 来た! キタコレ!

 翔太と結婚だ。

 もう何も怖くない。


 そのまま、私の大好きコールが収まるまで、翔太は戸惑いながらも優しく私を撫ぜ続けてくれた。

 そしてよりこはショックからかその間、呆然としていたのだった。




「リリィ? 僕が言うのも変だけど、いいの?」


「へぁ? 何が?」


 漸く涙も止まり、しかし体を突き上げる程感じる喜びは未だ衰えず、翔太の胸に縋り付いて愛と喜びを伝え続けていた私だったが、翔太がふと言った言葉に顔を上げた。


「だって僕二股してるんだよ。」


 するとベッドが少しだけ揺れて、こちらから見えずともよりこが翔太の背中にくっ付いたのがわかった。

 

「そうだよ! リリィちゃん、こんなの絶対おかしいよ。」


 どうにか復活を果たしたよりこが、ここぞとばかりにそう重ねた。


「う、そう、だね。」


 翔太も言わなくてもいい事を態々言っちゃって......なんだっけ? 確か藪をつついて蛇が出る? 出す? だっけ?


「はあ、まあそうっすね。じゃあよりこさん、あんたが別れれば?」


「なっ!? 駄目だよっ! 絶対それだけは駄目だからねっ! ねっ、よりちゃんっ!」


「そうだよっ! そんなのありえないよっ!」


 翔太に必死で焦った感じで言われて凄い嬉しそうなよりこ。

 何、この馬鹿みたいなやり取り。

 阿呆くせぇ......。


「はいはい、わかったわかった。」


「だからさ、リリィどうしてなの?」


「もう、何よさっきから。」


 しつこくそう聞く翔太の目は、不安と期待がない交ぜになっていた。


 ふーん、これあれだわ。

「僕って二股してる最低男だけど、二人とも僕の事が好きだからいいよね」っていう気持ちを許して欲しい、認めて欲しいって思ってる訳ね。

 面倒くさい男ね、翔太。


「ほんというとね、嫌よ。よりこと一緒とかマジありえんわ。いや、別によりこじゃなくても他の女とかマジ無理、マジ勘弁。……後、あんたが勘違いしない様に言っとくけど、あんたって本当不細工だしキモいわよ。自分でモテるとか思ったら駄目だかんね。」


「うっん。だよね。」


 図星を指されたのが恥ずかしいのだろう、顔が真っ赤になっちゃった。

 可愛い。


「でもさ、翔太は私と結婚するんだもんね。幸せにしてくれるんでしょ? なら良いわよ。別に。」


「それってどういう意味?」


 またかよ、もう信じらんないくらい面倒くさい。

 ていうか、なんで一々そんな事説明せにゃならんのだ、恥ずかし過ぎるわ。


「よりこ、あんたならわかるでしょ?」


「うん......一応。」


 悔しながらといった風に肯定するよりこ。


「つまりそういう事。」


「だからどういう意味だよ。」


「うっさい、もういいでしょ。私はあんたが好きで翔太は私が好き。これ以上いる? 必要? 結婚の約束もしたでしょ?」


「う、うーん。」


 翔太は納得したような、していないような素振りで首を捻った。


「もうこれ以上は聞かないで、私は翔太のプロポーズを受けた、それでいいでしょ?」


「……わかった。」


 翔太は渋々といった風に頷いた。

 それでいい。

 私ももうこれ以上聞かれても言うつもりは無い。

 だって意味の無い事だもの。

 翔太は私の事幸せにするって言った、ママとの事もどうにかするって言ったし、結婚するとも。

 なら翔太は絶対やってのけるだろう。心配するまでも無い。

 だって翔太の一番良い所、私が贔屓目無しに凄いって思える所は有限実行だ。


 私達が高校受験の時。二人とも近所の高校、今私達が通っている高校が志望校だった。

 それは家から近いというのもあったけれど、公立高校なので学費も安いというのが主な理由だった。勿論奨学金ありきだけど、それでも私立と公立では学費の差が大きい。

 翔太はこう見えて結構頭が良くって、近所の公立校に十分入学出来るレベルだった。

 でも私は、その当時もう殆ど日常会話は問題無い程度の日本語力だったが、それでも勉強にはまだまだ差し支える程度だった。

 だから当然成績は下から数えた方が早いくらい、所謂落ちこぼれで、私立の高校にならなんとか入れるけれど、比較的高い学力が要求されるその高校へは絶望的で、学費の事でママに無理をさせたくなくって私は思っていて、高校進学自体を半ば諦めていた。

 私はもうその当時から家計を全部任されてて、お金の事は全部わかってたから尚更だった。

 そんな事情を抱えて、でもその事をママにも翔太に告げられずにいたある日。

 翔太がふいに「同じ学校に行こうね」といった。

 何気ない一言だったけど私は嬉しかった。翔太と同じ高校で送る学生生活。どんなに楽しい事や嬉しい事が待っているだろうって、想像しただけでも幸せになれてしまう。

……でも同時に悲しかった。

 だって無理なんだから。

 私がどんなに望んでも大好きな翔太と一緒にはいられないんだって思ったら、悲しくなって、彼に申し訳なく思えた。

 だからつい「一緒に行けない」と本音を洩らしてしまった。

 驚いた翔太はめそめそ泣く私に、なだめながら時間を掛けてゆっくりと理由を聞いてくれた。

 そして全部聞き終わると、翔太は「どうしてもリリィと一緒の高校に行きたいんだ、僕がなんとかするから、リリィは安心して」と言い放ち、翔太らしからぬ、私の乙女心に響きまくる台詞と、普段からは想像も出来ないくらい真剣な顔にほだされて、私は思わず頷いてしまった。

 そこからが凄かった。

 参考書やそれだけでは足りないと翔太が自ら作った特製のテキストを用意してくれて、勉強は私が夜、寝落ちするまで続けられ、その後に翔太は夜遅くまで勉強スケジュールやテキスト作り。

 そんな生活が受験まで数ヶ月続いて、見事受験に合格したのだった。

――余談だが、受験合格後ママにその事を打ち明けたら、別に心配しなくて良かったのにと言われた。私がおぼろげながらにしか知らなかった奨学金やら補助金やらで、なんでもここ最近は滅多な事が無い限り高校に入れるらしい「相談してくれたら良かったのにー」何て言われて拍子抜けしてしまったはいい思い出なのだろうか。


 けど私が翔太と一緒の今の高校に通えているのは翔太のお陰、翔太のテキストやスケジュールの力もあるけれど、一番はあんなに頑張ってくれていた翔太に、少しでも報いる為と思って勉強に集中出来たお陰だ。


 それまでも、翔太って凄い人って思ってた。

 人を思いやる心や、真摯な所、こんな私を想ってくれている所。全部打算じゃ無くて本気な所。それに肝心な事では絶対嘘吐かない、ちょっと無理でしょ、って事だってやるって言ったらやる人だって。

 だけどその事があって、私は翔太それ以上の存在に思えた。

 だって先生やクラスメートから絶望的と言われていた私のテストの点が万年一桁から平均より大分上になったんだよ、数ヶ月の間に。

 どんな魔法だよ。

 その魔法を掛けられた私が一番驚いたわ。

 それ以来クラスメートからはその見た目からブタえもんって呼ばれる様になった。

……ブタえもんに泣きつくリリ太君。不本意ながら、間違ってはいないな。

 それ以外にも赤ペン博士、塾潰し、アメイジング相川、ミラクル相川、奇蹟の相川、魔術師相川って言われてた。友達の少なかった彼は、一躍影の人気者になった。あ、因みに最後の三つのあだ名は一部のキモオタどもにだけ呼ばれてた。

 本人はからかわれてるだけだと思ってたみたいだけど、そうでは無くて、皆翔太の事をからいかいつつも本当に凄いって思ってた。だもので中学生活最後でのまさかの翔太株急上昇に焦った私だったが、その見た目が幸いして誰からも告白とかされ無くてホッとした。

 

 翔太が私を幸せにするって、どうやるのかはわからないし知らない。そもそも私にはその方法なんて興味が無い。

 どうでも良いのだ。

 翔太がどんな魔法を使うかは彼のみぞ知る。

 肝心なのは翔太が私の幸せを目標に努力してくれる事実であり、私はそれをいつも忘れずにその目標の為に一緒に頑張れば良いって事。

 それだけで私は幸せになれるんだ。

 だから私は二股だって気にしない......わきゃ無ぇけど、そこんところもひっくるめて頑張ってくれるんだし。

 一番肝心要なのは彼が誓った結婚の約束は絶対だ。これがあればもう絶対に結婚するし、しないとは言わせない、もっとも言わないだろうけど、ともかく何が何でもする。

 そしてその一番の問題と成り得るよりこについては、それほど心配していない。

 だって人生はきっと私が思っている以上に長い。

 今はあんなでも、その長い長い道の中でよりこが翔太から離れて行く可能性は極めて高い。よりこだって人間だ。気持ちの変化は絶対に起こる。それにアレな所さえなければ、こんなに素敵な女の子でおっぱい大きいんだもの、きっと素敵な人が現れるに違いない。

 そしていくら翔太がよりこを好きでも、よりこが嫌いになれば話は別だ。

 恐らく翔太は引き止めるだろうけど「女は一旦心の離れた男の事は二度と愛せない」ってママが言ってたし、多分大丈夫。翔太がストーカーとかしそうになったら私が頑張って止めるし。かといってそんな犯罪を犯してまで、翔太が好きな人を傷つけるとは全く思っていないのだが。

 それにそもそも彼女は翔太の何を知っているというのだろう。

 いくら幼馴染だからって、もう何年もまともに話した事すらなかったんだ。

 翔太がどんなにエロいかなんて知らないに決まってる。

 翔太の小説でもわかるとおり、久羅菱宵仔はエロい事されてただけ。結局彼女は翔太にとっておっぱいなんだ。いくらいっぱいなおっぱいだってそれだけじゃどうしようもない。

 それに比べエリィ・エマーソンは主人公と和気藹々のドタバタコメディだ。エロだけじゃない。友達や恋人や相棒として見てくれている証拠に他ならない。そしてロリがペドペドな私......完璧だ。

 だからよりこはそんなド変態で性欲魔人でエロの対象としかみない翔太に絶対幻滅する。賭けたって良い。

 そんで私は翔太のそういうキモい所とか、駄目な所一杯知ってる。それでもそこんところひっくるめて愛してるんだ。

 私が負ける訳無い。絶対にだ。


 と、まあ、そんな訳で見通しは明るい。


――だけど。


「それはそうと、婚約指輪はちゃんと用意しなさいよ。」


「あっ。」


「……うん。」


 今初めて気が付いたかのようなよりこの上げた声と、暗い翔太の声。


 今の翔太のお財布事情で二人分はちときついだろう。


 でも、これだけは譲れないんだからね。

 頑張んなさい翔太。





 これにてベタ惚れ編終了です。

 区切りがおかしいとかの意見はなしで。

 というのも、次回から文章の書き方の縛りを止めようかと。

 もう……←これ一本にして台詞も。」ってやるの止めて」だけにします。

 だってややこいんですから。

 後三人称も入れて行こうかなって思ってます(多分番外だけ)

 そういった意味では大幅な変更になりますね。

 ま、興味の無い殆ど多くの人にとってはどうでも良い事でしょうが、もしかしたら気にされる方の為に一応お知らせしました。

 因みに次はベタベタ編です。勿論名前に意味はありません。


 後、ファンタジスタ相川というあだ名は意図的に外しました。

 何故ならば、今日の日本があるのは、土壇場でオウンゴールを三つも決めたファンタジスタ石原のお陰なのですから、彼への敬意を表してです。

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