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第12話 矛盾するキモチ

リリィ・アンダーソン その3



 朝は確かにがっつき過ぎた。


 そりゃそうだわー。

 あの内気な翔太があのタイミングで告白とかないわー。

 私焦りすぎだわー。


 でもそれは仕方ないと思う。

 だって最近になって知った、翔太の書いたエロ小説のヒロイン、久羅菱宵仔くらひしよいこの存在に危機感を抱いていたから。

 黒髪でおっぱいが大きくて背が高いとか、まるで私と正反対。

 それが翔太の好みだっていうのかと思えば、否が応にも焦ってしまう。


 それにあの鈍感な翔太の事だもん、私の気持ちに気付かないのは仕方ない事だと思う。

 今まで散々アピールしてたのに気が付かないくらいなんだもん。

 


 あの後、声の限りに泣いてしまった私を、クラスメートの皆が優しく慰めてくれた。

 そんな皆の優しさに感動してしまった。

 だが、あの時「アンダーソンさん趣味わるーい」って言ってた奴!

 オメーは別だ。

 ていうか、私の趣味だ。ほっとけ! それに......趣味が悪い事くらい自覚あるんだからね。

 まあ、それでも、クラスメートと一体になれた様な気がしたし、嬉しい事だ。


 そう、嬉しいと思う。

 その事については......。


 でも、絶対今日、布団の中で「ウワアァーッ!!!」てなるに決まってる。

 

 だって、私の気持ちがクラスメート全員、いえ、学年中に広まってしまったかもしれないんだから。

 一体どんな顔して廊下を歩けばいいってのよっ!

 好きな人が知れ渡ってるなんて、嫌過ぎる。

 しかも......その好きな人にだけは知られて無いとか......。


「ウワァ~ッ!」


 考えてたら思わず叫んじゃってた......。

 でも、クラスの皆は私の事、凄い生暖かい目で見てるから大丈夫みたい。


……かなりウザいけど。


 でもまあ、これであの鬱陶しかった、週に何回も告白されるっていう事はなくなるだろうって思う。

 正直あれには参ってた。

 私ってかなり発育が悪い。ママも昔はそうだったらしいから、多分遺伝だと思うけど、しょっちゅう子供と間違われるくらい。だからそんな私って、普通の男の子にとって魅力的とは言えないと思う。

 なのにそんな子供みたいな私の事が、好きって男の子はロリコンだと思う。そういや私って、翔太の持ってる漫画に出てた合法ロリってやつかも。

 世の中にはロリコンってのがいるって、翔太を見てて知ってたけど、まさかあんなに多いとは......。

「日本人の男はロリコンばっかりよ」って憎憎しげにママが言ってたけど、本当だったんだ......。


……それにしてもママ、一体昔に何があったの?



 翔太が教室から出て行ったあの後、私はそんな事を考えていた。

 少し気が休まったかもしれない。


 でもさっき。

 そんなの気にならないくらいビックリする事、そんな話を聞いた。



 翔太が。

 あのデブでオタクでロリコンで奥手の翔太が。

 あの学校一有名な美人でクールな倉橋よりこを教室から連れ出して、廊下で告白したっていう話だ。

 彼女って、翔太の小説に出てくる「久羅菱宵仔くらひしよいこ」にそっくりだし、ていうか、まるっきりそのままで胸が大きい。

 彼女の魅力は、さっきもいったクールな所にあるけれど、それなのに人当たりが良くて優しい。

 それに、偶に笑うと凄く可愛いんだって。

 そんな風に言われてる。


 鏡の前で翔太に見せる為だけに笑う練習とかしてて「わたしのかんがえたさいこうのえがお」とか言って、一人で悦に浸ってる私なんかと大違い。基本的に見せる相手が翔太だけだから、人から言われたりしないし。

 

 でも、そういう見た目の良さとか性格の良さとか色々あるんだろうけど、一番は何かと言ったらやっぱりおっぱいね。

 おっぱいに負けてしまった。男ってやっぱりおっぱいなのね。

 

 ママ......やっぱりおっぱいには勝てなかったよ......。ロリよりおっぱい。豚におっぱい。


……物凄い敗北感だ。


 それにしても、やっぱり久羅菱宵仔くらひしよいこは倉橋よりこだった。今朝校門で見かけた時に、もしかしたらとは思ったけどその通りだったんだ。

 

 ねぇ、翔太......。

 私の事、好きじゃなかったんだね。

 私、勘違いしてた。

 翔太は私が好きって、私、勘違いしてたよ......。


 でも、翔太が倉橋よりこを好きっていうだけなら、大丈夫。

 それだけなら百歩、いえ千歩譲って我慢も出来る。

 

 倉橋よりこって無茶苦茶モテるらしいから、男子が何人も告白しては玉砕しているらしい。

 だから、翔太もその内の一人になったって話なら、玉砕したって話なら、嫌だけど、それだけでも本当私嫌だけど......それでも我慢できる。


 私が、傷心の翔太を慰めて、そんな私の優しさに触れて、そして翔太は私の事を好きに......ってなれるだろうから。だから翔太が振られたんなら、まだそんな可能性はあったし、そんな未来、希望があった。


 でも、違った。

 なんでも、抱き合っていたそうなのだ。

 それに大声で大好きって言ってたらしい。二人とも......お互いに......。

 しかもなんと、あのクールな倉橋よりこを泣かしたそうだ。


 それって付き合ったって事よね? OKだって事だよね? 嬉し涙が出ちゃったって事だよね。


 朝、珍しく早く来たと思ったら、慌てて教室を出て行って......。

 あの後、きっと倉橋よりこに告白しに行ったんだ。


 それで付き合う事になったのかな?


 その事を確かめようにも、肝心の翔太は、何でも気分が悪いからって、保健室に行ったまま。


 もうお昼休みに入ったっていうのに、帰って来ないってどういう事かな? 風邪でも引いたのかな?


……でも、確かめる必要も無いかも。


 だって、告白された当事者である倉橋よりこが、翔太と付き合う事になったって、認めているそうだ。

 あの倉橋よりこと付き合う男......翔太は一躍有名人だ。


 でも、相川翔太って大人しい男の子の顔と名前なんて、皆殆ど知らないみたいだから、一体誰なんだって言われてる。

 だから、その顔を見てやろうと、ウチのクラスに他のクラスの子が休み時間の度に来てた。でも、翔太は保健室に居るから見れなかったんだけどね。流石に保健室には先生がいるから見に行けないみたいだ。


 今いった事は、勿論直接聞いた事では無い。

 他の子が話しているのを聞いただけだ、

 クラス中どころか学年中に広まっているんだ。聞きたくなくても聞こえてしまう。


 そしてわかってしまった......。


 私の恋は、どうやら終わってしまったらしいという事を。


 全然実感無いし、釈然としないし、今でも、嘘でしょって思っちゃうけど、終わったらしい。


 でも、本人からその事を聞かないと、納得出来ない、したくない。


 早く帰ってきて翔太。

 何でもいいから早く逢いたいよ。


 そして私に教えて欲しい。

 本当の事を。

 一々聞かなくても、意味の無い事でも......。

 それでも、翔太の口から聞かないと......。




……でも、やっぱり聞きたくない。

 翔太の口からなんて聞きたくないよ。


 本当は、違うよって、そんな事無いよって言って欲しい。


……そんな事ありえないってわかってる。

 皆が言ってるのにわからない振りなんて出来ないよ。


……でもそんなありえない空想に、浸ってしまう心の弱い私。





……でも、どうして?

 そもそもどうして、倉橋よりこは翔太と付き合う事になったんだろう?


 彼女と翔太って全然接点無いだろうし、私も翔太から、彼女と仲が良い何て聞いた事無いから、知り合いってわけじゃないだろう。

 という事は、告白されていきなり付き合いました、って事なんだろうけど、恋してる私が言うのもなんだけど、翔太って見た目がかなり悪い。


……それなのにいきなりってどういう意味? デブ専、とかって事かな?


 あれ? でも、そういえば倉橋よりこって......。




私がそこまで考えた時、教室の扉から女の子の声が聞こえた。




 やっぱり......やっぱりおっぱいには勝てなかったよ......。


 私......この間まで、翔太って小さい女の子にしか興味を抱けないんだって思ってた。

 小さい女の子にしか興奮出来ない異常性癖の持ち主だと思ってたよ。

 だって......だって、翔太の部屋にコミックL○が30冊もあったんだからっ......!!!


どんどん行きたいけど、眠いので今日は無理。

また明日。か、明後日。

良いお暇つぶしになれば幸いです。

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