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君とボクの二度目の冒険 〜転生した少年と幼馴染の勇者が、魔王の孤独を救うまで〜  作者: 屠龍
第八章 ハーフエルフの兄妹

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第五十二話 パーティ結成中

 第五十二話 パーティ結成中


 ハーフエルフの兄妹と一旦別れた僕とミレーヌは、シグレさんとセシルさんがよく行くという酒場にやって来た。

 まだ陽は落ち切っていなかったが、店の中はもう酔客でいっぱいだった。


 木の椅子を軋ませながら酒を飲む者、大声で笑う者、隣の席と意気投合して肩を組んでいる者。

 賑やかな空気の中で、カウンターに座るシグレさんだけは妙に落ち着いて見える。


 「ユキナとミレーヌじゃないか。二人そろってどうしたんだ?」


 そう言ってシグレさんは椅子を勧めてくれた。

 僕とミレーヌが座ると、目の前には好物らしいアクラ酒と、つまみの鳥の唐揚げが並んでいる。

 少し塩が強いのは酒に合わせているのだろう。


 「実は今日、ギルドでハーフエルフの兄妹と出会ったんです」


 「ハーフエルフの兄妹?」


 シグレさんがわずかに目を細める。


 「二人ともウィザードみたいで、それで……一回ごとの契約で、一緒に冒険に行く話になりました」


 「そうなのか。それは運が良かったな」


 シグレさんは素直にそう言った。

 驚きはしているようだったが、否定はしない。


 「ただし、それならなおさら確認が必要だな。私とセシルも一緒に組むつもりだと、ちゃんと伝えたのか?」


 「あ……」


 思わず言葉に詰まる。

 そこまで頭が回っていなかった。

 あの場で迷っていたら、クヌートとフェリシアは他の誰かと組むか、二人だけで行ってしまう気がして、まず契約を結ぶことしか考えられなかったのだ。


 「組んだこと自体は悪くない。だが、私たちの存在を向こうがどう受け取るかは別問題だ。ハーフエルフは人間に良い感情を持っていない事が多い」


 「すみません。勝手に決めてしまって」


 「いや、仕方ないさ。先に動いたのは正解だ」


 シグレさんはそう言って、気にするなというように軽く手を振った。


 「ハーフエルフのウィザードなど、皆が欲しがる。先に声をかけたのは間違っていない」


 そう言うと、シグレさんは席を立って酒場の主人のところへ向かった。

 注文にしては少し長い。

 何を話しているのだろうと思っていると、しばらくして手に銀貨の入った袋を二つ持って戻ってきた。


 「これを先に渡してくれ」


 「え……いいんですか?」


 「いいも何もない。相手は信用で動くより、利益で動くと考えたほうが早い。私たちが組む価値のある相手だと示すなら、誠意は形で見せたほうがいい」


 さすがに現実的だ。

 僕だったら、ここまで割り切って考えられない。


 「それに、ハーフエルフのウィザードと組めるなら安いものだ。私とセシルは前に出られるが、魔法ではほとんど役に立たん。そこを埋めてくれるなら、多少の出費はいくらでも取り返せる」


 「二人とも鉄級でした」


 「そうか」


 シグレさんの表情が少しだけ変わった。

 驚いたというより、期待が確信に変わった顔だった。


 「それは頼もしいな」


 そう言うと、酒場の主人からもう一袋受け取り、僕たちに渡してくる。


 「一人に一袋ずつ渡してくれ。これでも足りないと言うなら、その時はまた考える。私は明日の昼、セシルと一緒にギルドへ行く。そこで正式に顔合わせとしよう」


 そう言ってシグレさんは席を立った。

 これ以上飲むと明日に響くからと、本当にそのまま帰るつもりらしい。


 「お前たちも、今日はあまり遅くなるなよ」


 それだけ言い残し、シグレさんは酒場を出ていった。


 僕とミレーヌは銀貨袋を受け取ると、慌てて冒険者ギルドへ向かった。


 ◆◆◆


 クヌートとフェリシアは、まだギルドの近くにいた。

 銀貨の袋を差し出すと、クヌートは中身を確かめ、静かに頷いた。


 「確かに受け取った。誠意は見せてもらったからな。余程相性が悪くない限り、一緒に組むことにしよう」


 「ありがとうございます」


 僕が頭を下げると、フェリシアが落ち着いた声で言った。


 「では明日の昼にここで待ち合わせしましょう。他に用件はありますか?」


 「いえ、特には」


 「そうですか。ハーフエルフをしていると、余計な詮索をしてくる者が多いものですから」


 クヌートが少しだけ口元を歪めた。


 「憐れみや好奇心で近づいてくる連中とは、うまくいった試しがない。だが、お前たちはそうではなさそうだ」


 その言い方はまだ硬い。

 でも、完全に拒絶しているわけでもない。

 それだけで十分だった。


 「明日、よろしくお願いします」


 「こちらこそ」


 その日は二人と別れ、僕とミレーヌも宿へ戻った。

 明日に遅れるわけにはいかない。

 だからその夜は、同じ部屋で静かにこれからの話をして、いつもより少し早めに眠りについた。


 翌日、僕たちは昼近くに冒険者ギルドへ行き、約束通り依頼板の前で待った。

 程なくしてクヌートとフェリシアも姿を見せる。

 ちゃんと来てくれた事に、僕は少しだけ安心した。


 「クヌート、フェリシア、こんにちは」


 「こんにちは。相手を待たせないのは良いことだ」


 「兄さまも私も、良い契約相手に巡り合えたと思っています」


 フェリシアは相変わらず淡々としていたが、昨日よりは少しだけ空気が柔らかかった。


 僕たち四人で依頼板を見上げる。

 昨日マリアさんが貼っていたオーク退治の依頼は、すでに誰かに取られていた。

 残っているのは、それより難しい依頼が多い。


 「兄さま、これなどどうでしょう」


 そう言ってフェリシアが指さしたのは、オーガ討伐の依頼だった。


 オーガはゴブリンやオークよりもはるかに手強い魔物だ。

 力も大きさも桁違いで、まともにぶつかれば命に関わる。

 けれど、今のこの顔ぶれなら挑戦する価値はある。

 そう思わせるだけの戦力が、ここには揃っていた。


 「ユキナはどう思う? もちろん、シグレさん達と相談してからだけど、ボクはこれがいいと思う」


 ミレーヌがそう言う。

 僕も異論はなかった。


 「依頼を受けるかどうかは、全員で決めたい。シグレさんとセシルさんが来てからにしよう」


 僕がそう言うと、クヌートもフェリシアも頷いた。


 新しい仲間。

 まだ信頼しきったわけじゃない。

 でも、少なくとも今は同じ依頼板を見上げて、同じ敵を倒そうとしている。


 それだけで、少しだけ胸が高鳴った。


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