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君とボクの二度目の冒険 〜転生した少年と幼馴染の勇者が、魔王の孤独を救うまで〜  作者: 屠龍
第十六章 フミンの少女

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第百二十九話 同じ食卓には座れなくても

第百二十九話 同じ食卓には座れなくても


 いつも通り、クヌートが沈黙の魔法で部屋を包み、音が外へ漏れないようにする。


 女性陣がお風呂に入っている間、僕とクヌートは当然、部屋の外で見張りをすることになった。


 旅の宿とはいえ気は抜けない。


 盗みを働く宿泊客もいるし、ロッテのことを妙な目で見る者がいないとも限らない。


 「みんな優しいし、うちの女性陣は本当に素敵だね」


 僕がそう言うと、クヌートは当然のように頷いた。


 「当然だ。フェリシアはいつでも美しく、可愛い」


 「いや、フェリシアだけじゃないよ?」


 「ミレーヌも綺麗だとは思うが、フェリシアはもっと綺麗で可愛い」


 「シグレさんも凛々しくて芯が強いから、かっこいいし美人だね」


 「セシルも最初は苦手だったが、あれでなかなか気が利くし、情もある」


 部屋の中に聞こえないから言えることもある。


 最近、僕はクヌートとの距離が近くなった気がする。


 最初は衝突もした。


 けれど、クヌートが本当は義理堅く、優しく、芯のまっすぐな人だと分かってからは、お互いを認め合えるようになったと思う。


 仲間としても、ウィザードであるクヌートは、妹のフェリシアと共になくてはならない存在だ。


 古代魔法だけでなく、精霊魔法も神聖魔法も使える。


 しかも複数の魔法を同時に扱える。


 クヌートとフェリシアがいてくれるだけで、僕達はどれほど助かっているだろう。


 僕とクヌートがそんな話をしていると、背後の扉が少しだけ開いた。


 湯上がりのミレーヌが、長い緑色の髪を少し濡らしたまま顔を出す。


 いつ見ても綺麗で可愛い。


 けれど今は旅の途中で、仲間達もいる。僕は少し照れながら視線を戻した。


 「お風呂空いたよ。今度はボク達が見張ってるから、二人とも入って」


 「ありがとう。クヌート、入ろう」


 「ああ。それでは、すまないが入らせてもらう」


 そう言って、僕とクヌートは風呂で身体をきれいにした。


 クヌートはハーフエルフだからなのか、とても綺麗な肌をしている。


 華奢に見えるけれど、旅慣れた無駄のない身体だった。


 「どうした、ユキナ。俺の身体が珍しいか?」


 「ううん。クヌートの身体って綺麗だなって思って」


 「俺にそういう趣味はないぞ」


 「僕だってミレーヌ一筋だよ」


 そう言って、僕達は笑い合った。


 風呂の後は洗濯だ。


 といっても、やり方は簡単だった。


 残った湯に着ていた下着や服を入れ、砕いた石鹸を振りかける。


 風と水と火の精霊で湯をかき混ぜ、浄化の魔法ですすぎ、最後に乾燥させる。


 同時に複数の魔法を使えるクヌートとフェリシアのおかげで、僕達は旅の途中でも清潔に過ごせている。


 使い終わった湯は、水の精霊で霧にしてから窓の外へ逃がした。


 月のない夜に、薄い霧が静かに流れていく。


 それは少しだけ幻想的だった。


 身ぎれいになった僕達は、宿の食堂で夕食を取ることにした。


 今夜の食事は、豆をすり潰したポタージュのようなスープと、香辛料で焼いた鶏肉だった。


 あくまでロッテは、表向きは従者という扱いだ。


 本当なら一緒に食卓を囲みたかった。


 ロッテは僕達から少し離れた壁際に立っていた。


 まるで、そこが自分のいるべき場所だと最初から決めているみたいだった。


 「座っていいよ」と言いたかった。


 でも、それを食堂で言えば、宿の主人だけでなく、周囲の客まで余計な目を向けてくるかもしれない。


 僕は唇を噛む。


 仲間なのに、仲間として隣に座らせることすらできない。


 その事実が、思っていた以上に悔しかった。


 けれど食堂でそれをすれば、宿の主人や他の客が何を言い出すか分からない。


 だから僕達は多めに注文し、余ったという体裁でロッテの皿に取り分けた。


 もちろん、食べ残しなんかじゃない。


 最初からロッテの分として頼んだ料理だ。


 僕達は急いで食べる。


 そうしないと、ロッテがいつまでも食べられないからだ。


 「もう食べていいよ」


 僕達が食事を終えたのを見て、ロッテは遠慮がちに周囲を見回した。


 その仕草が胸に刺さる。


 誰かに許されないと食べられない。


 そんなふうに思っているのだろうか。


 「大丈夫。これはロッテの分だから」


 僕がそう言うと、ロッテは小さく頷いた。


 出会った頃、ロッテの茶色の髪はひどく汚れていた。


 けれど毎日湯浴みをして、食事を欠かさなくなってからは、少しずつ艶が戻ってきている。


 顔色も、出会った頃よりずっと良くなった。


 少しずつ、彼女本来の表情が戻ってきているのだと思う。


 その後は、六人用の大部屋で早めに休むことにした。


 不潔だったシーツは浄化の魔法で文字通り洗い立てになり、僕達を優しく受け止めてくれた。


 旅の疲れと満腹感で、僕はすぐ眠くなる。


 ただ、部屋にある寝台は六つしかない。


 だからロッテは、いつも女性陣の誰かと同じ寝台で休むことになっていた。


 くじ引きの結果、今日はシグレさんがロッテの隣で眠ることになった。


 シグレさんは、ロッテが眠れるまで、故郷の子守唄を静かに歌っていた。


 子供扱いしているというより、不安で固まった心をほどこうとしているようだった。


 故郷の歌なのだろうか。


 言葉の意味は分からない。


 けれどその歌は、夜の大部屋に静かに染み込んでいった。


 ロッテの呼吸が、少しずつ穏やかになる。


 それを聞いているうちに、僕達も優しい気持ちになって眠りへ落ちていった。


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