●●5
昨日は一緒に帰れた♪
なんてウキウキしながら、またいつもの教室へ入ろうとドアを開けた時
「来るな。今日は帰って」
「へっ?」
また頭の後ろに目がついているかのように言う。
いつもと違うのは、冷たい口調な事。
「…ハイ」
次の日も
次の日も
次の日も
…
一週間以上彼に会っていない。
あの冷たい言葉がかけられるのが恐くて・・・。
私はいけないことをしたんだろうか?
知らず知らずのうちに、きっと嫌われてた…。
『青い空は、あなたです。綺麗な青い空がピッタリ』
と言ったのがまずかったのかな?
後悔の念が押し寄せる。
こんなにも心を奪われてしまったのに・・・
*******
今日こそは・・・!!
すごく恐い。
手がふるえてる。
でも会わなくちゃ。
謝らなくちゃ。
それだけが頭を巡っている。
ドアに手をかけ、おそるおそる開ける。
そして意を決して教室に入る。
彼は隅っこに座ってボーッと空を見ていた。
珍しくこちらには気づいていない様子。
私は、教室に入り遠く離れた背中に声をかけた。
「ごめんなさい。」
背中はビクッと反応してこちらを向く。
眼鏡の奥のつり目が今日は何だか、眠そうなたれ目。
「私が何かしたなら謝ります。ごめんなさい…」
いつもと違う雰囲気に耐えられず、私は涙を流してしまった。
「ごめんなさい…」
「何で謝るの。何で泣いてんの。」
いつもと違って優しい声をかける彼。
「こっち来て」
私は言われたとおり、彼のすぐ近くまで歩いた。
「ごめん。この絵を完成させたかったんだ。」
私は涙でたまった目をこすりながら、小さなキャンパスを見た。
真っ赤な夕焼けの空に
1人の女の子が立って笑っている。
すごく幸せそうに。




