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  作者: チキ
4/6

●●4

それからは、毎日のようにその教室へ向かった。

教室には必ず、彼がいて絵を描いていた。




「今日はクレヨンで描いてるんですか?」

「んーそう。」


この人には頭の後ろにも目があるんじゃないんだろうか。


私が何も言わずに教室に入っても驚かすように話しかけてもまるで知っていたかのように返答してくる。



「今日はりんごなんだ」

「赤いもの描いた方がイイって言ったじゃないですかぁ~」

「極端だなぁ。」


また笑われてしまった。

あぁーまたそして顔が赤くなる。



最初に会った日からもう軽く2週間以上経っているのに・・・顔が火照るのと心拍数が上がるのは変わらない。


変わった事と言えば、今まで会わなかったのにここ毎日、この教室以外でも顔を合わせる事が多くなったことぐらい。



「また赤い」


と通りすがるたびに言われてしまうんだけど…。




隣に座っているだけなのに、こんなにうれしいと感じたことがない。


綺麗な横顔。

綺麗な空の絵。

たまに見せる笑顔とか。

私をからかう言葉とか。



こんなにも奪われてしまった心をあなたはどうする気ですか?



絶対に尋ねられない質問。







**********







「んぁ…」

「おはよう。いや、おそよう?」


頭がまだボーッとして今の状態が理解できない。


えっとー……

やっぱり彼の隣は居心地がよいなぁって思ってぇー…

それよりここの教室の日当たりが良すぎてー…

最近あんまり寝てなかったなぁー…

それでウトウト…って



!!!!!



腕時計を確認すると5時半。



教室に入ってきたのは、2時ぐらいだったからぁー…

あちゃぁ……。



「気づいたら寝てたね。」

「えっ‥あぁの…」

「また赤いな。そろそろ帰ろう?」

「へっ?」



私の寝顔をずっと見られてた…

じゃなくて!

ずっと起きるまで待っててくれた?



今の空は夕焼けで赤い。

彼は赤い空を描かないから、いつも帰ってしまうのに…。



「ほら、帰るよ。」

「あ、はい!!!」




夕焼けで電車までの駅の道が赤く照らされている。



一緒に帰るなんて…

初めてだ。

最高潮に真っ赤だ私!!!


「よく寝てたなぁ」

「すいません!何だか…」

「いいよー。寝てる子1人残して帰れないっしょ。一応女の子なんだし」

「一応って!!」

「口すべったー悪い悪い。」


いつものようにおどけた口調の彼。


「もうイイです~!」


私は早歩きで前を歩く。

本当は赤い顔をこれ以上見られたくなくて先に歩いてみたんだけど。


「怒るなよー」

「もうイイですよーだ」


私は怒った振りするのは得意らしい。

バレてないもん。


「なぁ。こっち向いて」


ココで素直に向く私。

あぁー…怒ってた振りが台無し。



「やっぱり赤が似合うな。」


珍しく穏やかな表情で、私を見る。

いつもは無表情なくせに。


「その夕日の色とピッタリ」


またしてもその言葉に真っ赤になってしまう私。


「あっ…」

「ん?」

「赤い夕日が私なら…」


今、ふっと浮かんだ。


「青い空は、あなたです。綺麗な青い空の色がピッタリ」


そう笑いながら言ったつもりなんだけど、彼はまた無表情で固まってしまった。

なんかまずいこと言ったかな…。


「あんたも同じ事言うんだな」


彼は今までにないような笑顔を私にくれた。


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