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初恋と、ふたつの失恋

作者: 天野晃一郎
掲載日:2026/01/28

この小説は、私自身が経験した2025年の初夏から2026年の晩冬までに起きた一連の恋愛沙汰を記したものである。

私小説で、しかも匿名である以上はできるだけ事実と自らの気持ちを誠実に描写することを心掛けるのが筋だと思うので、そうするが、しかし自分自身の恋愛を誰かに(たとえ未来永劫関わることのないみなさんであっても)赤裸々に綴るというのは案外恥ずかしいものである。多少脚色を加えるつもりだが、しかし重要なエッセンスはできる限り伝えるつもりである。この情けなさを開だす作業の中で、自分自身を見つめ直すことにも繋がるのだろうと希望を持って、話を進めよう。



時は2025年春。私は希望を持って関西のミッション系名門大学に入学した。晴れやかな気持ちで入学式に臨んだことを覚えている。これから私を待ち受けるであろう色恋沙汰の数々に想いを馳せ、学長の長広舌を聴き流していた。事実その通りにはなるのだが、私は恋愛というものを甘く見ていた。恋は必ずしも望んだ形で、私の時間を過ぎ去っていった訳ではなかったし、その間は終始私の気持ちも澱んだ時間も多かった。


さて、そういう未来はもう少し先である。そんな事は露知らずに私は春から、夏の学期終わりにかけて、大いに放蕩した。入りもしないサークルの新歓に行き、可愛い子を見つけてはナンパし、マッチングアプリも使っていた。まさに性欲が強力な原動力となって、燃えるような生命エネルギーの性力が沸き出てきて、出たつ性の像となって私を具現化していたのである。その烈火の如き性像は、性の交錯を求めて対の像を探し回った。この情熱は凄まじいもので、私もよく行動したと思う。そのエネルギッシュさを如何なく発揮して当時の私は性衝動に己の身を委ねた。


6月



アンナソフィア


6月も終わる頃、私はアンナソフィアと出会った。(*これから登場する女性はみな外国人ではない。(海外にルーツを持つ女性も後で登場するが。)日本人である。本名を出すわけにはいかない、しかし別の日本人ぽい名前をつけて仮称とするのも何か癪に触るので、あえてかけ離れたこのような名前で呼ばせていただく。)

アンナソフィアとは同じサークルで出会った。親交を深めるとかの企画で、同じ班になったのが知己を得たきっかけだったと記憶している。はっきり言ってこの企画を当日ブッチしようか、まではいかないが多少の気怠さを感じていたほどには、参加者の名前を見る限り可愛い子がいなかった。しかし、当日行ってみればなんと可憐な少女が佇んでいるではないか。

周囲は陽光に包まれて暖かな雰囲気を漂わせているのに、彼女自身は真冬を思わせるような真っ白な肌で、長い黒髪だった。身長も高かったと思う。顔の造形は、ぱっちりした大きい目に、なんと言っても美しい鼻だった。高く屹立して、それでいて横鼻は峻厳な崖を想起させるほどしなやかで、彼女を横から覗き込んだ時には、よくその美しい鼻を見つめていた。輪郭は若干だらしなかった気がするが、そんなものは些事に過ぎなかった。

その企画を通して、その後も個人的に連絡を取ろう、そんな関係になろう、と決意した。

彼女は物静かだった。思慮深いのだろう。物事に対して常に俯瞰した態度をとっていた。その態度のために後の私は思い悩むことになるのだが、しかし今はそんなことに構う余裕はなく、どうすれば彼女の気を引けるかだけを考えていた。様々なアミューズメントを通して彼女の横顔からその内面を覗き見ようと試みたが、しかし所詮寄せ集めの集団の中で、特段の明るさと自己開示を行うほどの情熱は彼女にはなかったようだ。その日は大した交流もできなかった。しかし最後には全員とインスタを交換し、意中の彼女とも交換する力技に訴えた私は、なんとか連絡手段は確保できたのだった。


7月


それから一週間ほどして、(僅かな接点からどう連絡するか逡巡を重ねて、ついには連絡するか思いあぐねていたのだろう。)連絡をした。サークルの活動内容について尋ねるとかした私は、そこから話の枝葉を広げてなんとか会話が持続するように必死に努力を重ねた。そうこうしていくうちに、彼女の内的世界をかすかな文面から読み取ろうと躍起になっていた。そう、彼女はとても、文面が素っ気ないのである。後に会ってくれることから冷たくしているわけではない(はず)だったが、短文の押し問答で会話が終了してしまう現状にやきもきしていた。「うん」とかリアクションのいいねで終わらされることも多々あった。そうこうするうちに日は流れていく。



ジナイーダ


ある授業で、とても綺麗な女性がいた。初めて見たのは5月頃だろうか。席も離れていたので遠目に眺めるばかりだったが、しかしはっきりと、間違いなく美人であることは、私の微妙に度のずれた眼鏡でも確認できた。夏期休暇前の最後のその授業は、生徒が二人一組で壇上に出てスピーチをするというものだった。しかし私はすでにその授業を含め、1年前期とは思えない大学のサボり方をしていた。最後の授業には出ておこうという腹づもりで行ってみれば、なんとスピーチをすることを当日に知り、当然ペアもいなかった。しょうがないのでスッカスカの内容のスピーチを1人で堂々と発表するほか無かった。まあ、そういうのには慣れていたので別によかったのだが、話しながら教室の最後列にチラリと目をやると、オーバーなほど過剰に私の発言に頷き、私のスピーチを応援してくれる人がいた。とても綺麗な女性だった。

授業が終わり、私は思わず声をかけた。やはり近くで見ると圧倒的というほか無いほどの美貌だった。普通程度の身長、茶髪のロング、大きな目!に高い鼻、女性らしい可憐な輪郭で、屈託のない笑顔で笑う人だった。好きになった。名前はジナイーダという。芸能人かと見紛うような、絶世の美女だった。(これはガチ)

インスタを聞き出して、その日からジナイーダとの交流が始まった。後から聞いたことだが、実は大学用に作った普段は使わないアカウントを交換したつもりだったようだが、間違えてサブ垢のサブ垢を交換してしまったと。しょうがないので私と会話をしてくれたという経緯である。DMを重ねて、互いのことを知っていった。1日に1往復程度の密度だったが、しっかり返信してくれるというだけで私には嬉しかった。


その頃、ある事を思いあぐねていた。アンナソフィアと連絡をとっていないのである。リアクションで会話が終わってから、DMも途絶えた状態が続いていた。私はこのままでは良くないと思い立ち、夜分遅くに思い切ったDMを送った。「祇園祭、一緒にいかない?」久しぶりの一言目がこれというのはまあどうなんだという感じではあるが、兎にも角にも思い切った、飛躍の一手を打ったのだ。すると、その日のうちに返事が来た。「何時?」またまた素っ気ない文面だが、とにかく喜んだことを覚えている。醒めやらぬ興奮を胸に秘めながら、オールカラオケをした日は懐かしき思い出である。

そうして、私たちは祇園祭を見にいった。大して楽しいことも出来なかったが、隣に彼女がいて、私の問いかけに反応してくすくすと笑うその姿を見るだけで、私はなんて幸せなんだと感じた。メールのやりとりはそっけないのに、会ったらよく笑うから余計に彼女の虜になった。しかし、踏み込んだことは聞けず、楽しくお話をしてその日は終わった。しかし楽しかったし、彼女の内面をよく知れたと思う。見た目は本当に物静かそうな感じなのだが、実はよく冗談を言うし、よく笑うのである。彼女自身もそれを自覚しているようで、「仲の良い人にはこうなる」と言ったのを聞いて、心の中で喜んだ。


祇園祭から一週間ほどして、ジナイーダと初めて電話をした。少しずつDMを重ねて、ついに電話まで辿り着いた。電話をかけた時のコール音、よく緊張したことを覚えている。そこから2時間ほど話しただろうか。本当に、驚いた。びっくりするほど、話していて楽しいのだ。それもそのはず、私たちには共通点がとても多かった。血液型、世界史選択、ニーチェが好き、ゲーセンに行くと絶対マリカーする、まあ他にもいっぱいあった気がするが、とにかく楽しかった。ジナイーダも同様に楽しんでいた。私たちの距離はもっとずっと近くなった。

2回目、3回目の電話を重ねて、私たちはもうただの友達ではなかった。両思いが確定したような、あの最高の時間がこの時だった。


8月


アンナソフィア、君はどうしてそんなに文面が素っ気ないのか。会話を続ける努力をしないのか?そんなに私と話したくないのか?とにかく会話が続かない。しかし私はめげなかった。脈絡のないおはようLINEや彼女の美しさをミスコンNo. 1に例えたりもした。(実際似てるが、もちろんアンナソフィアの方がかわいい。)あぁ、アンナソフィア!君が私を望まないというのであれば、私はそれを受け入れることができる、出来てしまう!しかし、君に対する私の胸の炎、暗闇の中で、君を思う炎が君の姿を照らし出す。未だ君に恋をしている。この程度では引き下がれない。また私は喰らい付く。「映画、見に行かない?」しかし、興味がないということで、にべもなく断られてしまう。私は落ち込んだ。しかし、アンナソフィアはそういう人間だと知っていたので、つまり彼女は本当に興味がないから断っているのだと理解できるほどには彼女を知っていた。その後、彼女の方から見たい映画があるとお誘いを受けて、喜んで馳せ参じた。正直にいうと、私はその映画を見るのは2回目だった。破壊殺何ちゃらのあたりでもう本当に見る気は失せていたのだが、横にはアンナソフィアがいる。私は彼女に気取られぬように、何度もその横顔を盗み見た。綺麗だった。

映画の後、アパレルに寄った。帽子を見たいと私が言ったのだ。彼女と1秒でも長く、一緒に居たかった。彼女を着せ替え人形にして、私は至福の時間を過ごした。特に、ベレー帽。本当に、ベレー帽が可愛すぎる。

そして解散。手を繋ぐことも出来なかった。正直いうと、そういう感じに持っていくのがとても難しく感じた。アンナソフィアはしっかり者だ。本当にいい女性だと思う。


その日の夜、ジナイーダに映画を見たと言った。「友達と映画を見てきたよ」。ジナイーダもその映画を見たがっていたので、「じゃ次は2人で行こう。」と私が言った。そうしてジナイーダと時間を重ねる。2人の写真を送り合った。夜通しLINEをして、朝からビデオ通話をした。



ひとつめの恋


私は本当に決めあぐねていた。アンナソフィアか、ジナイーダか。アンナソフィアは押せば関係が進みそうだ。ジナイーダからは、既に好意をはっきり寄せられている。

アンナソフィアは2年時には留学に行くそうだ。それを聞いて、もし付き合ってもそのうち離れてしまうのか、と私は思った。そしてジナイーダとはすでにかなり相思相愛だった。

交際を開始するなら、他の女性とは疎遠にならなければならない。自分に課した鉄の掟だ。破ることはない。


私は、ジナイーダを選択した。

私とジナイーダは恋人同士になった。八月の中旬だった。そこからは、想像を絶するほどに刺激にあふれた、人生で最も大切で、幸せな時間だった。なんの気なしに引いたおみくじには「もうじき結ばれる」だとか(これを結婚だとかいってキャッキャしていた。)毎日毎日電話して、家には映画館を作るだとか、子供の名前を考えたりだとか、ジナイーダに溺れていた。息継ぎ、ジナイーダ以外を知りたくなかった。私にとってジナイーダが全てだった。本当に、黄金の時間だった。こればかりは私の中で色褪せる事はないだろう。不滅の記憶だ。


9月


しかし、幸せは長くは続かない。私たちはあまりに早く互いに向かって突き進み、そしてすれ違ってしまった。別れは突然だった。2、3日連絡の頻度が落ちた。そして、「距離を置きたい」。ジナイーダからの残酷な宣告だった。

受け入れるのに、時間を要した。もちろん宣告を受け入れるということではない、そういう文面が来たということを、それ自体を受け入れただけだ。本当に手が震えた。震える手で眼鏡を外し、潤んだ瞳からそれが溢れないように、手でそれの痕跡を抹消した。

何を言っても、既読無視だった。3日ほど待って、我慢できず追いLINEをした。「最後は電話しよう。」ジナイーダは応じた。次の日に電話をした。しかし、約束の時間から2時間遅れて、ジナイーダは電話に出た。「ごめん、寝坊した。」さらっと言いのけたジナイーダに一抹の怒りと悲しみを覚えつつ、私の感情をぶつけた。私に非があった、しかしそれを自覚しているし、ジナイーダのためならなんだって自分を変える、必死に訴えかけた。ジナイーダは「うれしい、また感情の整理をつけて連絡する。」と返した。最後に彼女の声を聞いた時間だった。


アンナソフィアに映画代を返した。実はチケットを、私の分も取ってくれていたのだが、返しそびれていた。銀行振り込みで返したので、余計な800円がかかった。最後のやりとりだった。



ラナ


9月も終わる頃、サークルで企画があった。今思えば、あの時が始まりだった。いつものように遅刻して行ったところ、見慣れない女性がいた。長い黒髪に、とても白い肌、真っ白な、ドレスのような服装も相まって、さながらシンデレラのようだった。目は大きく、若干の垂れ目で控えめな鼻と口。儚げな雰囲気を醸し出す女性だった。この時は名前も知らず、ただ見かけただけだった。そしてこの時が彼女、ラナとの出会いであり、同時に、アンナソフィアを最後に見た時でもあった。これ以降、アンナソフィアはサークルを辞め、私とも全く縁は切れてしまった。


10月


私は絶望感に包まれ、打ちひしがれていた。私の全て、ジナイーダを失った。途方もない空虚感が私を満たした。何も手につかなかった。寝ても醒めても、ジナイーダへの執着が私に纏わり付いた。おまけに私は学業でも不振であり、なんとGPAが1を切るという苦境だった。さらに金もない。(これは年中そうだが。)本当に底の底だった。

しかし、春から緩く付き合っていた友達と、秋に入って一気に距離が縮まったのもこの頃だった。サークル終わりの飲み、銭湯、カラオケ、早朝まで騒いで、昼過ぎに起きて、締めの中華を食う。このサイクルを誇張なしに週一以上のペースで繰り返した。そりゃあ仲が深まるのも当然である。楽しかった。ジナイーダへの想いを、少しずつ、少しずつ、日々の想い出に置き換えて行った。


ラナからDMが来た。サークルに関することだった。この日から、また、ラナと少しずつ距離を縮めていくことになる。


11月


しかし、苦痛は安易に消えるものではない。ジナイーダという十字架は、まだまだ私にのしかかる。一週間に一回程度で、ラナと業務連絡をした。はっきり言って、全然ジナイーダを引きずっていた。あんなに人を好きになったのは、ジナイーダが初めてだった。私にとって、全てが鮮烈な経験で、薬漬けにされたようなものだった。ジナイーダというコカインがなくなったために、禁断症状で超超超超超良い感じに憂鬱だった。


11月中旬、サークルの企画で、ラナと一緒になった。もちろん他のメンバーもいたが、ラナとしっかり話し込んだのはこれが初めてだった。やはり近くで見るとその美貌には舌を巻く。そして、思ったより面白い子だった。なんかテンション高いし、めっちゃ乞食してきた。まあかわいいので全然、嫌な気はしなかった。彼氏が欲しい、と血眼で絵馬に書き殴っていた。



12月(揺れる心)


依然、状況は厳しい。布団に潜り込む時、椅子に座った時、寝転んだ時、教科書を広げた時、youtubeで広告が流れてきた時。ジナイーダが私の中に現れる。2度と触れる事は出来ないその幻影を、私は未だに追いかけていた。彼女の像をぼやけさせるために、消す為にも努力を重ねるのだが、彼女の像はより一層鮮明になって私に語りかける。もう聞く事は出来ない、甘い声で2人の将来を語るジナイーダがいた。そうして都合の良い妄想を続ける自分にも本当に腹がたった。もし自分をサンドバックに出来るなら、また自分でぼこぼこにしたいと思うくらいに本当に自分の未練が鬱陶しかった。


サークルの運営代が変わり、私はイベント班に配属された。さまざまな娯楽企画を一手に担う班である。そこにはラナがいた。ここから、私とラナは、互いの引力に惹かれ合い急接近していく。

とは言ってもまだまだそんな感じではないので、ゆっくり距離を縮めていこうとしていた。しかし思わぬところで私たちの運命の糸は絡み合う。

12月中旬、班で集まりがあったのだが、なんと、集まったのは私とラナの2人だけだった。まあ仕方がないので、2人で食事でもしようと、カフェに入ってまた話し込んだ。正直この時点で結構脈アリを確信した。割と際どい話題にも全然乗ってくるし、またベレー帽がかわいいと推薦しておいた。実際、私のベレー帽を貸して被ってもらったが、可愛かった。ずり落ちそうなベレー帽を両手で押さえながら上目遣いをされた時は、さすがに好きすぎて滅だった。

またその三日後に成り行きで、私たちは2人きりで梅田を散策した。とは言っても大した事はしてないが、やはり隣にラナがいて、くだらない話で笑い合うのは楽しかった。

そして、勘違いなどではなく、ラナははっきり私に好意を寄せていた。相合傘をして、何度もボディタッチをしてきたし、服装をペアルックにしようだとか、やたらかっこいいとかスマートとか言われた。ここまで来ると、もうはっきり、「確定で俺のこと好きじゃん」状態に入った。つまり私も調子に乗ってイチャイチャを始めたのである。ラナもそれに乗ってくるので、ヒートアップした。

帰る時の、静かな阪急電車特急の車内で、他の人に申し訳ないと思いつつも、私たちのメロついた会話を響かせていた。ラナに、確かに心を掴まれかけていた。12月の最終週も目前だった。


しかし、ジナイーダを忘れたわけでは全くない。

私の心は、ジナイーダの牙城で、ラナがなんとかそれを打ち崩そうとしている。そんな心象風景だった。

つまり、ラナは全然好きだが、ジナイーダにはいまだに最も大きい愛を抱き続けていた。

デートの翌日、私はジナイーダに誕生日を祝うカードを送った。「誕生日おめでとう」とこれだけだったが、時間がたってから見てみると、いいねがついていた。

また次の日、私は思い切って「復縁したい」とLINEした。まだ、忘れられない、まだ好きだ。率直にジナイーダへの想いをぶつけた。

するとどうしたことか、6時間後に返信が来た。

「ありがとう、嬉しい。今は忙しいけど、時間が空いたら話したい。」


私は、本当に舞い上がった。

まさか返信が来るとは思わなかったし、九月の、電話の後もなんの連絡もなしに、ずっと放置されていた。それにも関わらず、返信が来た。本当に嬉しかった。

ジナイーダもまた、私を考えてくれていたのか、と思うと今までの孤独を癒やすように、胸の奥が暖まる感覚がした。



ふたつめの恋


さて、私はまた岐路に立っていた。

つい先日デートをした、相思相愛の、交際まで秒読みのラナか。復縁が現実味を帯びているジナイーダ。

こればかりは本当に悩んだ。私が私に課した掟は、破る事はない。どちらかを選択しなければならない。


思い返して、

ひとつめの恋、私はアンナソフィアを選べなかった。そして実は、ラナとアンナソフィアは同じ学部なのである。つまり同じサークルにもいるわけで、2人は知り合いだった。まあアンナソフィアは簡単に色恋沙汰を口に出すような人間ではないのは知っていたから、ラナも、私とアンナソフィアの関係は知らないだろう。そこは信頼していた。

まあ話が若干逸れたが、要するに私は、アンナソフィアとラナを重ね合わせていた。ジナイーダとは破局した。しかしもし、あの時アンナソフィアを選んでいたらどうなっていたんだろう、時折考える事もあった。アンナソフィアとは上手くやれただろうか。戻らない過去から、ありえない未来を妄想していた。

それに、またジナイーダとうまくやれる自信もなかった。色々酷い仕打ちをされて、以前と同じように愛せるかは正直自信がなかった。

もう、失敗したくない。目の前の幸せを掴み取る。そういう過去の後悔を、現在の恋に照らし出していた。


はっきり言って両方とも、好きだった。

ジナイーダは変わらず大好きだったが、今は私の前にいない。

でも、ラナは、私の目の前にいて、私に笑いかけてくれる。私を好きでいてくれて、大事にしてくれる。


私を大切に想ってくれる人を、私も大切に想いたい。

ジナイーダを失ってから、ずっと強く思い続けていた事だった。

ジナイーダから連絡が来ても、ラナのことを話し、友達として関わろう。そう決めた。


私は、目前の女性を選び取った。







そして、選択の後。



12月の28日だったか、私は衝撃を受ける。友達伝にあることを聞いた。ラナが合コンに参加する、という。次に会った時に告白しようと考えていた矢先だった。私はラナを問い詰めた。するとラナは「軽率な行動で傷つけてごめん。本当は好きじゃない。」

驚天動地。あのデートの下りは一体なんだったのか?確定で両思いだったじゃん。もう、何が何だかわからなくなった。また後日聞いたことだが、デートした時はアリだと思っていたが、色々あってやっぱりナシになったと。

再び、絶望現る。開け放たれていた天国への扉は、無慈悲にも天使自身によって閉ざされてしまった。闇が私を覆い尽くした。

ジナイーダを忘れて、ラナに尽くす、ラナを一途に想う覚悟を決めたところで、その後すぐに、ラナは私の手を離れた。打ちひしがれた。私の行き場のない愛は、すぐに色を失って邪魔な粗大ゴミに変化した。


そして、ジナイーダへの愛がまた頭をもたげてきた。


1月


ラナはもう、私の前にはいない。


ジナイーダはどうか。

しかしまた彼女も、私への興味を失っているようだった。同窓会の準備とかで忙しいと言っていた。もう2月に差し掛かるというところ、春季休暇に入っても連絡は一向に来ない。連絡をするなら、同窓会が終わった後、つまり一月中旬だろう。さらに言うなら、テストもとっくに終わっている。しかし、まだ来ないというのは、いくら私が楽観的な見方をしたくても無理というものだ。彼女から、連絡は来ない。そう、思うしかない。




今は1月29日。

一気に坂を転がり落ちた。どちらとも失ってしまった。私はラナと、ジナイーダ、二つの失恋に暮れている。2人が交互に頭の中に出てきて、私の気持ちを呼び起こさせる。デュアル失恋はなかなか体験できるものではないと思う。ぜひ、読者諸兄にも体験していただきたい。これが私のmy way である。


まずは、私の拙い文章に我慢しながら、辛抱強さを持って、読み進めてくれた読者の皆さんに感謝を申し上げたい。小説を書くのは小学生以来で、手探りで書いた。とは言っても淡々と出来事を語るだけの、ただの年表になった感はあるが、とにかく私がどんな時間を過ごして、どんな運命を辿ったか。少しでも共感できる部分、笑えるような部分があれば、書き手として嬉しいものである。

ちなみに余談だが、この小説を書こうと思い立ったのは、先日、トゥルゲーネフの「初恋」を読んだからである。ヒロインを冠する女性の名に因み、ある女性に同じ名を当てた。

気になった方はぜひ、こちらも読んでみてほしい。


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