第13夜 砂漠の街で剣も魔法も使わずに伝説になった先輩
――砂漠の街・裏路地。
乾いた銃声が、昼の熱気を切り裂いた。
パンッ!
パンッ!
「ちょこまか逃げんな!」
グチサカの短銃から放たれた弾丸が、壁と地面を抉る。
砂と石片が弾け、俺は転がるように物陰へ滑り込んだ。
(やっぱ銃は厄介だな)
「先輩!」
トーノが即座に反応する。
「水障壁、展開!」
水の膜が前方に広がり、
次の一発が鈍い音を立てて弾かれた。
だが――
「甘ぇ!」
グチサカが舌打ちし、横へ跳ぶ。
同時に、腰のホルスターとは別の“重い銃”を引き抜いた。
「そっちは牽制だ」
不敵な笑み。
「――本命、行くぜ」
銃身に刻まれた魔紋が赤く灯る。
空気が、嫌な軋み方をした。
「必殺――」
グチサカが叫ぶ。
「《銃魔砲・瞬爆弾幕!!」
引き金が引かれた瞬間、
銃口から放たれたのは、単発ではなかった。
――バババッ!!
魔力で分裂した弾丸が、
扇状に広がりながら路地を薙ぐ。
「っ、広域!?」
トーノが声を上げる。
水障壁が次々と撃ち抜かれ、
破片と蒸気が混じって視界を奪う。
「チッ……!」
ミウラが腕で顔を庇いながら前に出る。
「近づかせないってか!」
地面を蹴る。
だが、次の弾幕が行く手を塞ぐ。
「ははっ!」
グチサカは興奮した声で叫ぶ。
「どうだよ!」
「警備隊ナメんな!」
「これが俺の切り札だ!」
(……なるほど)
確かに強力だ。
近接を潰し、数で押す相手には刺さる。
――だが。
「先輩!」
イームくんが肩で叫ぶ。
「今だよ!」
「弾、途切れる!」
グチサカの呼吸が、わずかに乱れた。
銃身の魔紋が一瞬、暗くなる。
(装填に“間”がある)
俺は、踏み出した。
「――悔い改めて」
低く、静かな声。
空気が、軋む。
世界が、
一瞬だけ“止まった”ように感じられた。
「……な、なんだ?」
グチサカの指が止まる。
視線が泳ぎ、銃口が下がる。
「……あ?」
「俺……何やって……」
YAJU派生技
《悔い改めて 閾過!!》
選択の結果を、強制的に直視させる精神干渉。
「……くそ……!」
その“隙”を、
ミウラは逃さなかった。
一気に距離を詰め、
腰の回転を乗せた拳を叩き込む。
――ドンッ!!
鈍い衝撃音。
グチサカの体が宙を舞い、銃が砂に転がる。
「ぐっ……!」
追い打ちのように、
トーノの水が足元から絡みついた。
「拘束、完了っす」
砂の上に膝をついたグチサカは、
荒い息のまま、力なく笑った。
「……はは……」
そして、ぽつり。
「……三人に勝てるわけないだろ……」
「キュッ!」
イームくんが胸を張る。
「三人と一匹だよ!」
俺は技を解除し、静かに言う。
「分かってたなら、最初から、撃つな」
路地に、再び乾いた風が吹き抜けた。
こうして――
砂漠の街での小競り合いは、幕を下ろした。
この戦いは後に砂漠の街に広がっていく伝承となる。
二人人と一匹の仲間を連れた先輩が、
銃を振り回す悪漢の前に立ったという。
剣も魔法も使わず、
ただ一言、言葉を落とした。
すると銃声は止み、
悪漢は膝を折り、己を悔いた。
人々は語る。
「戦ったのは二人と一匹、
だが、止めたのは先輩一人だった」と。




