表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真夏の夜に異世界転生したら「先輩」扱いされるんですが、スキルがYAJUなせいで空気が最悪です ~俺は健全に帰還したいだけ~  作者: 小鳥遊 千夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/16

第12夜 砂漠の酒場で噂を集めていたら、警備隊が喧嘩を売ってきた件

 

 ――砂漠の街・バル=ラーム。


 城壁の影に入った瞬間、

 焼けつくようだった日差しが、少しだけ牙を引いた。


 石と砂で組まれた街並み。

 乾いた風が路地を抜け、香辛料と鉄の匂いを運んでくる。



 街の中央に近い酒場。

 看板は半分欠け、文字は読めない。

 だが中は異様に賑わっていた。


 傭兵、商人、流れ者。

 情報と酒と愚痴が、同じテーブルで回っている。


「まずは情報収集っすね」

 トーノが低い声で言う。


「魔王軍の動きと、元の世界に帰る手段」

 俺は短くまとめる。

「どっちも、この街には転がってそうだ」


 ミウラはカウンターに肘をつき、

 水代わりの酒を一気に飲んだ。


「チカレタ……」

「砂は歩くだけで体力持ってかれるゾ」


 俺は周囲に視線を走らせる。

 そして噂話を盗み聞き。


「最近、警備隊が妙に増えた」

「魔王軍と繋がってるらしい」

「怪しい奴はすぐ消える」


 ――十分だ。


 その頃。酒場の外。

 屋根と屋根の隙間。


 主人公達を睨む怪しい人影がいた。


 砂色の制服。

 警備隊章を弄びながら、下を覗く。


「……へぇ」


 主人公たちが酒場を出るのを見て、

 口元が歪む。


(あいつが噂の…こいつは当たり、引いたか?)

 


「偵察だけにしろ」と。

 トオール様からは命じられていた。


 ――だが。


「偵察だけ、ねぇ……」


 銃の重みを確かめる。

 引き金に指を掛け、すぐ外す。


「目の前に功績が転がってんのに?」


「我慢しろって方が無理だろ」


 男がにやりと笑う。


「ちょっと遊ぶくらい、バレねぇよな…」


 酒場を出た俺たちは、

 城壁沿いの路地へ向かっていた。


 そのときだった。


 ――足音が、揃って止まった。


 路地の先。

 角を塞ぐように男たちが立っている。


 砂色の制服。

 胸には街の警備隊章。


「……警備隊?」

 トーノが小さく呟く。


 先頭に立つ男が、一歩前に出た。

 やけに軽い動き。

 だが、視線は鋭い。


「よう、旅人さん」

 にやにやと笑う。


「この街、初めてか?」


「通過するだけだ」

 俺が答える。


 男は、俺をじっと見た。

 値踏みするように。

 ――そして、口角を上げる。


「へぇ……」

「噂通りだな」


(来たな)


「名乗っとくか」

 男は胸の章を指で弾いた。


「自分は警備隊のグチサカ。

 ……まあ、警備隊“でもある”って感じだけどな」


 ミウラが、ぼそっと言う。

「胡散臭さが砂漠級だゾ」


 グチサカは気にした様子もなく続けた。


「実はさぁ…ボスからは“偵察だけ”って言われてたんだよ」


 その言葉に、トーノの空気が一段階引き締まる。


「……まさか…魔王軍?」


「そうそう」

 グチサカは肩をすくめた。


「近づくな、刺激するな、様子見ろって…つまんねぇよな?」


 にやり。


「でも、目の前に“当たり”が転がってたら――」


 拳を、鳴らす。


「手柄、立てたくなるだろ?」


 次の瞬間。


「てなわけでよ…警備隊だァ!」

 グチサカの合図で路地の両脇、屋根の上、背後。

 警備隊装備の人間たちが、一斉に姿を現した。


「……囲まれたっすね」

 トーノが低く言う。


 ミウラが前に出る。

「やる気みたいだな」


「へぇ…なかなかいいガタイしてるねぇ」

 拳を構えるミウラを見て、

 グチサカが不敵に笑う。


「しばらくホッとしたろう!!」


 意味不明な台詞と同時に、銃を抜く。


「来るぞ!」

 トーノが杖を構える。


「〆鯖ァ!」

 グチサカの合図で、仲間が一斉に突っ込んできた。


 剣戟。

 魔力の閃光。

 砂が舞い、街の静寂が引き裂かれる。


 俺は一歩前に出た。


「……やめとけ」


 低い声。

 それだけ。


 だが、グチサカは止まらない。


「ははっ!」

「そうこなくっちゃ!」


 銃を撃ちながら、距離を詰めてくる。


「トオール様に言われてなけりゃ、

 もっと派手にやってたんだけどよ!」


「こういうのも面白いだろ?」


(完全に私欲だな)


 ――交渉は、終わった。


「敵だからね、しょうがないね…」

 俺は静かに呟く。


 砂漠の街での戦いは、

 魔王軍の“偵察”が、

 “実戦”へと変わった瞬間だった。


 そしてグチサカは、

 自分がどれほど危険な相手に

 喧嘩を売ったのか――


 まだ、理解していなかった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ