77/83
第72話:宮本玲奈
打ちのめされた。
目の前で展開されている現実に、胸が苦しくなる。
莉子。
彼女はただの家庭的な幼馴染なんかじゃなかった。
家事も気配りも出来る優しい顔を見せながら――その一方で、自分の芯となる部分を必死に磨き、鍛え続けてきた。
その努力が、今や「RICO」として実を結び、直也の横に独自の居場所を作り上げてしまったのだ。
そして――。
その莉子の強い姿勢が、保奈美ちゃんをも覚醒させてしまった。
直也の“義妹”。
ただの甘えん坊で、天使のように無邪気な子。
その姿はもうどこにもない。
今ここにいるのは、大人になろうと強く意識する、美しく可憐な女性。
わずかな時間で、保奈美ちゃんは一気に脱皮してしまった。
莉子と保奈美。
2人は、私よりもずっと先を――ずっと上を行っている。
そう認めざるを得なかった。
けれど――負けるつもりは毛頭ない。
やり方はいろいろある。
私には私のやり方がある。
それを必死に突き詰めていくしかない。
胸の奥で小さく炎が燃えるのを感じながら、私はグラスを持ち直した。
絶対に退かない。
直也の隣に立つ場所を――私も必ず手に入れる。




