第55話:宮本玲奈
――圧倒的だった。
気づけば、私は息をするのも忘れていた。
RICO×NAOYA。
スクリーンの映像に合わせて、二人の姿が照らし出される。
もう、この会場の空気を完全に掌握していた。
NAOYAのパートが始まる。
『「あと何度君と同じ花火を見られるかな」って笑う顔に 何ができるだろうか〜♪』
その声が響いた瞬間、背筋に電流が走った。
先日の交流会で聴いたときよりも、はるかに澄んでいて、力強くて、まるで空気を一変させるほどの清涼感があった。
――これが直也。
けれど、もう“直也”ではなく“NAOYA”としてステージに立っている。
その歌声に、RICOがまっすぐ視線を送る。
二人の間に流れる空気が、客席にまで伝わってくるようで、胸が締めつけられた。
そして、サビ。
『はっと息を飲めば〜消えちゃいそうな光が〜♪』
RICOとNAOYAの声が重なった。
澄んだ響きと、伸びやかな力強さ。
全く違う色を持つ二つの声が、完璧に調和してひとつになり、観客席全体を包み込んでいく。
ざわついていた人々の口が閉じ、ただその音に酔いしれているのが分かった。
私もまた、ただ呆然と、その光景を見つめるしかなかった。
会場を包む旋律が、さらに熱を帯びていく。
『パッと花火が〜♪』
『パッと花火が〜♪』
互いの声が追いかけ合い、重なり合う。
『夜に咲いた〜♪』
『夜に咲いた〜♪』
交互に歌い上げるその姿は、まるで二人だけの世界を描き出すようだった。
スクリーンには夜空一面の花火。
ステージの中央で見つめ合う二人の視線は、まるで恋人同士のように揺るぎない。
『離さないで〜♪』
『離れないで〜♪』
その瞬間、二人の手が触れ合った。
指と指を絡め、しっかりと握り合う。――恋人握り。
もうそこには二人だけの世界があった。
世界にはまるで二人だけしかいないような――。
息が止まった。
会場全体が、言葉を失ったように静まり返る。
まるで舞台の上に、音楽と映像と感情だけが残されたようだった。
目の奥が熱い。
怒りも、不安も、今はもう遠くに追いやられている。
ただ――圧倒されていた。




