表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/83

第9話:宮本玲奈

 ――歴史的な了承が下ろされた翌日から、私の机の上は通知文とスケジュール調整メモで埋め尽くされた。


 投資委員会、取締役会、そして社長の決裁――全てを経て、五井物産としての公式な機関決定が下った。

 次はそれを米国JV、SPVをはじめとする全ステークスホルダーに正式に通知しなければならない。形式的なレターの発行に加え、関係各社の法務・広報担当との日程調整。米国現地の祝祭日すら意識して進める必要がある。細かいが、こうした積み重ねが一番の実務なのだ。


 並行して、もう一つの大仕事がある。――プロジェクト名称の正式決定だ。


 これはすでに広報とも直也、亜紀さん、私の三人で協議を重ねていた。単なる呼称では済まされない。このスキームは日米両政府が支援する巨大プロジェクト。象徴的な名が必要だった。


 いくつかの候補案が出されたが、最終的に直也が静かに言った。

「……“GAIALINQ”でいきましょう」


 GAIA――大地そのもの。

 AI――未来の叡智。

 そしてLINQは、LinkとUniqueに加えて、Quintessence――精髄・本質という意味を込めている。


 つまり、「GAIALINQ」とは――GAIA(大地)とAIを結ぶ唯一無二の架け橋であり、自然の力と人類の叡智を結びつけ、持続可能な未来を築くための“一番優れた結節点”を象徴する名前なのだ。


 その言葉に、私は深く頷いた。

 直也らしい。理念と実務、理想と現実を一つに束ねてしまう力を持った名だった。


 亜紀さんも賛成した。

「直也くんらしいわね。力強さと柔軟さを併せ持った名前だと思う」


 こうして候補案は固まった。


※※※


 私の役目は、これを形式として整えること。

 社長に正式に名称案を提示し、承認を得る。その上で、米国側を含むステークスホルダーに「GAIALINQ」という名称を通知する。


 国際会議、シンポジウム、採用広報、そして投資家向けの説明。

 全ての場で「GAIALINQ」が用いられることになる。名は力を持つ。その名が世界の耳に届いた瞬間、このプロジェクトはもう後戻りできない。


 通知文の冒頭に、私はこう記すつもりだ。

『本プロジェクトは、“GAIALINQ”と命名する。GAIA(大地)とAIを結びつけ、唯一無二の架け橋となり、未来を創る象徴として』


 ――もう、始まっている。

 誇らしさと同時に、背中を押されるような緊張を抱えながら、私はキーボードを叩き続けた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ