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もう一つ、確認したい事があります

「最後に一つ質問があるのですが」

「何だ?婚約破棄したからには、お前の望みなど聞く必要はないのだが、いいだろう、今の私は機嫌がいい。特別に聞いてやろう」


 …婚約破棄する前から私の望みなんて聞いてくれた事、一度もありませんでしたが…そう突っ込みたいのは山々ですが、今はそれよりも大事な事があります。


「ありがとうございます。では、アネット様の婚約もなしという事でよろしいですか?」

「何?アネットの婚約だと?」

「ええ、アネット様は子爵家の令息と婚約なさっていると聞きましたわ」

「当然、そんなものは破棄に決まっている!」

「その言葉に偽りはありませんわね?」

「くどい!当たり前だ!」

「そうですか、ありがとうございます」

「ふんっ、随分聞き分けがいいではないか」


 殿下ったら、今、鼻で笑いましたわね。品がありませんわねぇ…でもまぁ、婚約破棄してくれたのですから大目に見ましょう。私も今、最高に気分がいいのです。


「殿下、婚約破棄して下さってありがとうございます!心から御礼申し上げますわ!」

「なっ…!」

「実は私もこの婚約、ずっと破棄したいと思っておりましたの」

「何だと…?」

「婚約者に決まってからというもの…来る日も来る日も休みなしの厳しい王子妃教育。寝る時間を惜しんで予習復習に励んでも叱られ、どれほど苦しかった事か…!友達との交流も好きなドレスを着る事も許されず、王子妃教育一色の日々でしたが…ようやく解放して下さるのですね!」

「な…何を…」


 私の告白に殿下が驚いていますわね。ふふ、どうせ私がずっと努力していた事もご存じなかったでしょうね。そして私がこの婚約を嫌がっていた事も…!


「ああ、アネット様もありがとうございます!あの苦行を代わりに引き受けて下さるなんて!貴方様は私の救世主ですわ!」

「はぁ?」


 私は殿下の隣にいたアネット様の手を取って、心からお礼を申し上げました。


「私が何年もかけてやった王子妃教育、これからするのは、とっても大変だとは思います。でも、お二人の真実の愛があれば、きっと大丈夫ですわ!」

「え…あ、あの…」

「私には殿下への想いがなくてただただ苦しいだけでしたが…好きな人のために頑張るのは、きっとこの上もなく幸せな事ですわよね!」


 うふふ、アネット様の表情が強張っていますが、これだけ大々的に婚約すると宣言されたのです。もう逃げられませんし、逃がしませんわよ!ええ、あのぼんくら王子と苦痛でしかなかった王子妃教育、どちらもまとめてのし付けて差し上げますわ!


「どうかお二人とも、お幸せに!では、この件を父に報告しなければなりませんので、私はこれで失礼いたします」


 その言葉を聞き届けた私は、王国で一番美しいと教育係に褒められたカーテシーを披露すると、その場を辞したのでした。今は一刻を争うのです。このチャンスを無にしないためにも、私は足早に馬車乗り場に向かいました。



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