98話 訪問者
アンディ達はホワイト帝国の離宮に到着した
白を基調とした宮殿は緑に囲まれている
宮殿より遥かに広い庭園はスザンナのお気に入りだった
アンディも幼い頃、何度も母・スザンナと避暑地としてここを訪れていた
離宮の管理者でもある執事は涙を流しながら出迎えている
「アンドレアス皇子殿下!」
「ウォルター、久しぶりだね
元気にしてた?」
アンディは涙を流している執事の肩に手を置いた
「はい…はい!私めは相変わらずでございます!
アンドレアス皇子殿下にはお変わりはございませんか?」
「僕も変わらず元気にやってるよ」
アンディがニッコリ微笑むと、ウォルターと呼ばれた執事は更に泣き出した
「世が世なら、アンドレアス皇子殿下が皇帝陛下とお成り遊ばした物を…!」
他人が聞いたら反逆罪に問われそうな発言だ
だがこのウォルターはずっとこの離宮で執事をしているので、スザンナが手元で育てたレイモンドもよく知っていた
なので決してレイモンドを侮っている訳ではなく、このホワイト帝国の考え方、つまり身分を重視した言い方なのだ
あくまでもアンディは前皇帝と皇后の第二子であり、レイモンドは第一皇妃の子供なのだ
「ウォルター、僕は自ら皇族を離脱したんだよ
だからもう皇子殿下はやめておくれ」
アンディは優しく慰めるように言った
幼い頃からこの離宮を訪れていたアンディにとって、このウォルターは祖父のような存在だった
「はい…はい、畏まりました
それではアンドレアス公子殿下と呼ばせて頂きます」
「そんな仰々しく呼ばなくても…」
アンディがそう言いかけると、ウォルターの目つきが変わった
「いえ!そう呼ばせて頂きます!」
ウォルターにとってもアンディは自慢の孫のような存在だ
そして血統も素晴しいので、召使い達に威圧を与える意味でもそう呼ぶ必要があったのだ
「もう、ウォルターは相変わらずだね」
「はい」
ウォルターは鼻をぐすっとすすると、アンディの後ろの方々に目をやった
「お見苦しい所をお見せしました、トンプソン辺境伯」
「いや、いつも通りだろ」
トンプソン辺境伯がしれっと答えた
「お二人は知り合いなのですか?」
不思議に思ったアンディが聞いた
「知り合いだなんて、恐れ多い!
皇后陛下はこちらに滞在なさる時に辺境伯をお呼びになって、国境の様子などをトンプソン辺境伯から聞かれたりしていたのです」
「そうだったんですか」
アンディは子供だったのでここには遊びに来ているような感覚だったが、スザンナはここでも仕事をしていたのか
トンプソン辺境伯の後ろには更に5人いる
ウォルターは
「デイビット公子殿下、ヴィクトリア公女殿下、よく起こし下さいました」
と挨拶をした
ウォルターがわかる人間はここまでだ
デイブはソフィアの背中に手を添えて
「お世話になるよ
こちらの令嬢は僕の婚約者のソフィア・アデル・ミッチェル侯爵令嬢だ」
「よろしく、ウォルター」
ウォルターは深々と一礼した
「ようこそお越し下さいました、ソフィア・アデル・ミッチェル侯爵令嬢」
トンプソン辺境伯はダニエルとエマに手を向けると
「息子のダニエルと娘のエマだ」
と紹介した
「ダニエル様、エマ様、お疲れでございましょう
ごゆっくりおやすみ下さい」
「ありがとう」
「お世話になります」
ダニエルとエマも挨拶をして、これで一通り紹介が終った
「それではお部屋へご案内いたします」
ウォルターがそう言うと、控えていた召使い達が前に出てきて
「それではご案内差し上げます」
と言って歩き出した
皆、後に続き部屋へと別れた
離宮はきらびやかな装飾品などはなく、簡素な装飾となっている
あくまでもスザンナ元皇后の好みの装飾なので、今後ジェシカが皇后となればジェシカ好みへと変わるだろう
アンディはいつも自分が使っていた部屋へと案内された
久しぶりだ
案内した召使いも顔見知りだった
「殿下、お風呂に入りますよね?」
「うん、お願いするよ」
「畏まりました
入浴の準備の間、お茶でもお飲みになりますか?」
「そうだね
いつものお茶を貰える?」
「はい、ご用意できます
それでは準備して参ります」
そう言うと召使いは部屋から出て行った
♪♫♬ ♬♫♪
アンディ達がホワイト帝国の離宮に到着したという連絡がフレッドの元に届いた頃、ライシャワー公国にも訪問者が来ていた
「何の目的で来たんでしょうね」
ギルバートはフレッドの後ろを歩きながら不信感を露わにしている
「突然、お忍びでの訪問ですよ?
しかもこのタイミングです
何か企んでいるかもしれませんね」
返事をしないフレッドにお構いなしでギルバートは続けている
だがギルバートはフレッドが考えをまとめれないのがわかっていた
自分がいろいろ意見を言い、フレッドはそれを聞きながら考えをまとめているのだ
「確かにこのタイミングだ
ギル、本当に他に供はいないかもう一度確認して」
「はい」
ギルバートは返事をすると、使い魔の梟クロワシミミズクを出した
クロワシミミズクはギルバートの肩に現れると、すぐに飛び立ち壁をすり抜けて外へと行った
来客と謁見する部屋まで来ると、ドアの前には騎士が2人警備をしている
フレッドは騎士の一人に
「中にいるの?」
と聞いた
「はい、ご本人と護衛が3人、そして供の者が2人います」
と返事をした
フレッドはいつでも魔法を使えるように気を引き締めた
「開けて」
そう言うと、騎士はドアを開けた
部屋の中央に応接用のテーブルとソファがあり、ソファには一人の女性が座っている
年の頃は20代後半といったところか
薄い緑色の髪が印象的だった
女性の後ろには騎士が3人立っていて、その後ろには供人らしき人が2人立っていた
ドアに向って座っていた女性はフレッドが表れたので立上り、ソファから離れると優雅にドレスの裾を掴み挨拶をした
「フレデリック大公陛下、始めてお目に掛かります
また突然の訪問をお許しください」
女性はそう言うと顔をあげ、右手を胸に当てながら自己紹介をした
「ボルジア国、第一王女クリスティーナ・ロマニー・ボルジアと申します」
ボルジア国の第一王女と名乗った女性はじっとフレッドを見つめた
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