97話 味方
3回目のテント泊も無事に終わり、今日はホワイト帝国の町に着いた
それなりに大きな町なので宿屋もある為、今日は宿屋での宿泊となった
「テント泊も楽しかったけど、建物も安心するわね」
ソフィアが宿屋の一室、トンプソン辺境伯やアンディ達が食事を取ったり談話をしたりするために用意された部屋の椅子に座り、お茶を飲みながら話した
最初、熱い飲み物が心配だったソフィアだったがすっかり慣れてしまったようだ
「…楽しかったけど、身の危険もあって大変だった」
アンディはげっそりとした表情だ
テント泊2日目、3日目はヘンリーからの猛アタックがあった上に、ヘンリーの恋人・ケネスも加わり大変だった
3人の修羅場を他の騎士やデイブ達は笑いながら見ていたので、見ている方は面白かった
「ヘンリー先輩の性癖は騎士の中でも公認なのね」
ヴィッキーがやれやれといった感じで呟いた
「ライシャワー公国は自由だと聞いていましたが、すごいですね」
ダニエルが真剣に感心している
感心する事じゃないだろ、とアンディは思ってしまった
「町の中なら人目もあるから、ヘンリー卿も迫って来ないよね」
アンディは皆からの同意が欲しかった
同意があったから安全という訳ではないが、とにかく同意があれば安全の確率が上がると思いたいのだ
デイブは可笑しくてクックッと笑いを噛み殺している
楽しい旅だが、まさかこんな事が起こるとは思わなかった
「ソフィの紹介のお茶会はいつ開催するのですか?」
エマがそう聞くと、ダニエルがギシッと固まった
「えーっと、レイモンド皇帝陛下のご結婚式が10日後よね?
だったら4日後の予定よ」
ヴィッキーが顎に人差し指を当てながら答えた
なんて可愛いんだ
ヴィッキーの仕草にアンディはほっとしてしまった
「結婚式の前にホワイト帝国の貴族達に紹介したいからな」
デイブが補足した
結婚式の話題ですっかり忘れていたローレッタの問題も思い出した
アンディ達がトンプソン辺境伯と行動を共にしているのは、恐らくフレッドやスザンナが手を回したのだろう
トンプソン辺境伯やエマの働きは前回の呪いの件で実証済みだ
何かあればとても頼りになる
フレッドからは何も言われていないが、あの慎重なフレッドが何の対策もないままアンディ達をホワイト帝国に向かわせる訳がない
きっとトンプソン辺境伯には全て話してあるのだろう
「ああ、緊張するわ」
ソフィアが両手をぎゅっと握った
「大丈夫だよ
俺もいるし、ヴィッキーやアンディもいる」
「そうよ
それにダニエルとベアトリスも引き合わせなきゃ」
ヴィッキーの一言にダニエルが再びギシッと固まった
ダニエルはギギギと首をヴィッキーの方へ向けると
「よ、よろしくお願いします」
と引きつった笑顔で頼むのだった
♪♫♬ ♬♫♪
翌日は早くに出発という訳ではなかったので、ゆっくり出来た
この町から昨年スザンナが滞在した離宮までは半日程だ
そして離宮からホワイト帝国の皇帝が住まう宮殿までは1日で着く
長かった旅も、もう終わる
そう考えると寂しくなってしまった
食事を取る部屋にはアンディとデイブ、そしてヴィッキーとソフィだけだ
「帰りはどういう予定なの?」
ヴィッキーが聞いた
「今のところ、ロバート団長が魔法陣を展開して帰る予定だ」
「えぇ?帰りもトンプソン辺境伯達と一緒に帰れないの?」
デイブにソフィアが詰め寄った
デイブは少し考えて
「トンプソン辺境伯に頼んでみようか?」
と真剣な顔で答えた
4人はお互いの顔を見渡してコクリと頷いた
「誰が交渉する?」
「それはやっぱりアンディでしょ?」
「えっ!僕?」
小公子という立場でいえば、アンディとデイブは同等だが、アンディはライシャワー公国の大公、つまり王様の息子だ
だがデイブはホワイト帝国の大公家の息子でしかない
やはりアンディの方が格上なのだ
「わかったよ、後でトンプソン辺境伯に話してみるよ」
アンディは諦めて承諾した
「やった♪」
「またテント泊が出来るといいわね!」
ソフィアとヴィッキーはお互いの両手を握り合っている
「頼むぜ」
デイブはウインクした
だが事はそう簡単な事ではないだろう
同行する騎士達も帰りは魔法陣を使うという予定でいるはずだ
魔法陣を使わないとなると、それなりに準備やフレッドへの連絡なども必要になる
「話すだけ話すけど、難しいと思うよ」
アンディは皆が期待しないように先に釘を差した
♪♫♬ ♬♫♪
「構わんよ」
一瞬、アンディは耳を疑った
「よろしいのですか?」
「ああ
君たち魔法使いはこんな経験はあまりしないだろう
ライシャワー公国の騎士達にもよい経験だ」
トンプソン辺境伯の部屋を訪れたアンディは、あっさり承諾されて気が抜けてしまった
って、やっぱりトンプソン辺境伯は僕達が魔法使いって知ってるんだ!
アンディはようやく気が付いた
「トンプソン辺境伯はご存知だったのですね」
「君たちが魔法使いだという事かね?
フレッドとティフの子供達なのだから魔法使いだと思わない方が不思議だろう」
って言うか、僕がフレデリック大公の息子だという事も知ってるのか
「流石です
それに僕が、その…フレデリック大公の…」
とアンディが言い淀んていると
「息子だという事かね?」
「はい」
トンプソン辺境伯は「わはは」と笑うと
「君は若い頃のフレッドにそっくりだよ?
それで気付かない訳がないだろう」
と言った
アンディはよくフレッドと間違えられる
それはこの銀髪のせいだと思っていたが、やはり似ているのか
「ライシャワー公国では僕は母上の連れ子で、ホワイト帝国の元皇帝の息子となっています
ですがトンプソン辺境伯のように気付いている人もいるでしょうね」
アンディは困惑した
フレッドの実子である事は、ライシャワー大公家を継ぐには良い事だろう
だがスザンナがホワイト帝国の皇后時の子供なので、スザンナが不義を働いたと責められるのではないだろうか?
「母上は父上に頼んでホワイト帝国の皇帝陛下が母上に触れる事が出来ないよう守護の魔法を受けていました
そして友人である第一皇妃の息子、亡くなったジェイムズ皇太子を自分の息子と装いました
…母上は不義は働いていません
ですが帝国民を欺いていたのです」
アンディはトンプソン辺境伯に全てを話した
「わかっている
正直に全てを明かすか、不義を働いた事にするか…
それはフレッドとスーの決断だ
だが我々はあの2人がそうせざるを得なかった理由も知っている
全ての人が彼らの敵ではない
私達は彼らの味方だ」
「そうですね」
真実を知る人間は少ない
だがフレッドとスザンナの味方だ
「たとえどのような非難を浴びても、我々はわかっている
何があっても必ず力になろう」
「はい」
アンディはトンプソン辺境伯の言葉を重く受け止めた
そうなのだ
何があっても僕達は父上と母上の味方なのだ
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
次話もよろしくお願いします!
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