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87話 夜空

アンディは昼間に来た湖に来ていた


もっと薄暗いかと思っていたが、思いのほか月あかりが明るいので、湖はとても神秘的に見えた


澄んでいる湖の水面には月が映っている

とても静かだが、どこからか(ふくろう)の鳴き声も聞こえた


湖の水はとても穏やかだ

アンディは湖の縁にしゃがみ込み人差し指で水面を突付くと、波紋が広がった


何回か突付いて波紋を作りながら

「テウス」

と水の妖精の名を呟いてみた


テウスは1年くらい前に夢の中に現れて以来、会っていない


きっと自分がテウスを呼び出せるようになるのを待っているのだろう


湖の方からアンディに向って来る波紋が、湖の畔にぶつかった


えっ?


アンディは顔を上げ湖を見ると、水面に人が立っている


全身が薄い水色で、髪は少し濃い水色だ

「テウス?」

アンディが信じられない、といった感じで呼んでみた


「自分で呼び出しでおいて、何だその反応は」

テウスはニッコリ笑っている


「本当にテウスなの?」

アンディは少々パニック状態だ


「久しぶりだな

やっと呼んだな」

「僕、テウスを呼び出せたの?」

「自分の魔力をまだわかっていないな」

テウスはやれやれといった感じだ


水の上に立っているテウスはアンディに近寄って来た


「そんなに魔法が上達したとは思ってなかったから」

アンディはまだポカンとしている


夢…じゃないよな?


と考えてしまった


テウスはアンディの前まで来ると

「お前はもともと魔力が大きい

ある程度使えるようになれば俺達を呼び出せる」

テウスの言葉を聞いて、アンディはようやく微笑んだ


「テウス、本当に久しぶり

あ、夢じゃない所で会うのは初めてだから、初めましてかな?」

「そうかもな」


アンディとテウスは笑い合った


「テウスを呼び出せたらならフィードも呼び出せるのかな?」

「やってみろ」


テウスは腕を組み、顎を動かして指示した


アンディは目を瞑って

「フィード」

と呟くと、自分の周りで風がフワリと起った


目を開けると上空からゆっくりとフィードが降りて来た


「もう、随分待たされたものね」

フィードはトンと地面に降り立った


「フィード、久しぶり」

アンディが嬉しそうに挨拶をすると、フィードも微笑んだ


フィードは辺りをキョロキョロ見渡すと

「いい所ね」

と気に入ったようだ


「僕も初めて来た場所なんだ

とても綺麗だからテウスとフィードに見せてあげたかったんだ」

「水もとても澄んでいる

いい場所だ」


テウスも気に入ってくれたようだ


こうやってホワイト帝国で妖精と一緒に居られるなんて不思議だ


昼間の嫌な事を忘れようと気晴らしに来ただけのつもりだったが、まさか妖精達と触れ合えるとは思わなかった


するとテウスがじっとアンディを見ていたかと思ったら、手を延ばしてアンディの髪に付いている葉を取ってくれた


「何かあったのか?」


葉を取りながらテウスにそう言われ、アンディはどきりとした


フィードも

「何だか元気がないわ」

と心配そうに見ている


妖精は人間の感情の起伏に敏感なんだろうか?

そう考えながらアンディは今日あった事を話した


話しを聞き終わったテウスとフィードは

「…でそのモヤモヤ感が何かわからないと?」


「そう」


テウスとフィードは黙ってしまった


僕って変なのかな?

アンディは心配になってしまった


「人間はその感情が何かわからないのか?まだ幼いからか?」

テウスは顎に手を当てて考えている


「テウス、私達と違って人間はすごく幼いんだから仕方ないわ」

フィードが言った


2人に幼いと連発されてしまった

確かに妖精に比べれば、遥かに幼いが…


「今は分からずとも、いつかわかる

焦らずとも良い

それが成長の肥しとなる」

テウスは諭すように話した


そういう物なのか?


アンディが考えていると、テウスが手を延ばした


手を繋げという事なのかな?


アンディはそう考えて、差し出されたテウスの手に自分の手を置いた


テウスはアンディの手を握ると

「行くぞ」

と言って湖にアンディを引っ張った


「わっ!」

濡れる!と思ったのに、アンディの足は湖の水の上に立っている


「えっ?!どういう事?」

「俺の手を離すなよ

離すと水の中に落ちるからな」


どういう仕組みかはわからないが、テウスと手を繋いでいれば、テウスと同じように水の上に立てるようだ


アンディはそっと一歩、足を前に出した


足が水に着くと波紋が広がるが沈む事はない

ただ地面のように土を踏んでいる感触もないので、まるで宙に浮いているような感じだ


テウスに連れられ、アンディはどんどん湖の真ん中へと進む


フィードは空中を浮遊しながら付いて来ている


湖は透明度が良い為に月明かりでも自分の足元の遥か下の湖底が見え、恐いくらいだ


しばらく歩くと、やっとテウスが立ち止まった


アンディは周りを見ると、真っ平らな湖面がずっと続いている

周りには遮る木々もないので、上を向くと夜空には無数の星が見えた


「すごい!」


アンディは感動して身震いしてしまった


「あの星はずっと昔からある

ずっと変わらない

人間は急ぎ焦って変わろうとするが、焦らずとも良い

時か来れば自然と変わり、わかるものだ」


「そうだね

僕は本当にまだ幼いんだね」


これからまだまだ時間はある

今、この気持ちが理解出来なくてもいずれ解る時が来るのだろう


「湖も星もすごく綺麗だ

ありがとうテウス」


アンディはニッコリと微笑んだ


  ♪♫♬ ♬♫♪


翌朝、いよいよホワイト帝国の首都に向けて出発する


馬車は女子と男子に別れる事になった


女子馬車にはヴィッキーとソフィアとエマが乗る


男子馬車にはアンディとデイブとダニエルが乗る


トンプソン辺境伯は馬車に酔うタイプなので馬で行くそうだ


「わざわざここまで来たのに、何で別々の馬車なんだよ」

デイブはブツブツ文句を言っている


「仕方ないよ

女の子達がそうしたいって言うんだから」

アンディは文句が止まらないデイブをなだめた


女子達は既に盛り上がっている


「エマ、領地の話しも聞かせて」

「お菓子を馬車に乗せた?」

などと楽しそうだ


そんな女子とは裏腹に、せっかくここまで来たのにソフィアと一緒に居られないデイブと、ヘンリーがまたヴィッキーにちょっかいを掛けて来ないか心配なアンディ達がため息をついてしまうのは仕方ない事だろう




ご精読、ありがとうございます

m(_ _)m


次話もよろしくお願いします!

。◕‿◕。

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