78話 結実
ライシャワー公国ではフレッドが大公家の中庭に魔法陣を造った
暗闇の中、上空と地上に描かれた魔法陣が薄っすらと光を放っている
魔法陣を見守るフレッドの側にはギルバートや騎士、そして治癒魔法を得意とする魔法使い達が待機していた
「来ませんね」
ギルバートが心配そうにフレッドに話し掛けた
「向こうにはリアがいる
大丈夫だよ」
フレッドはさほど心配はしていない
よほど特異な事でも起きない限り、リアは必ず皆を連れて来てくれる
リアとは幼い頃から一緒にクラリッサの元で修行をした
フレッドと同等の魔力を持っていて、フレッドは大公となりライシャワー公国を、そしてリアは魔法使いの長を担うはずだった
だがリアはそれを辞退した
自分は呪いを扱う魔法使いだから、というのが理由だった
フレッドもクラリッサも、他の魔法使い達も関係ないと言ったがリアは
「ライシャワー公国ではいいけど、他国からすれば《呪い》の継承者が長だと、いらない不安を掻き立ててしまう」
と説明した
それでも皆反対したが、結局リアの意思が固かった
このライシャワー公国でクラリッサに次ぐ魔法使いのフレッドとリアが動いているのだ
なのでフレッドは心配してはいなかった
すると突然、魔法陣が輝き出した
来た!
その場にいる全員が思った
魔法陣は閃光を放ち、光が収まると、魔法陣の中央に沢山の人がいた
「ギル!」
「はい!」
フレッドが指示するとギルバートは騎士や他の魔法使い達と現れた人達に駆け寄った
まず状態の悪そうな人からだ
治癒魔法を使う魔法使い達は、立ち上がれない人に駆け寄った
人の手を借りて動けそうな人は騎士が手を貸して建物の方へと連れて行く
フレッドは魔法陣があった上空と地上を見た
一回限りの魔法陣なので跡形もなく消えている
うん、問題なさそうだね
フレッドはその確認を終えると、アンディとデイブへと足を進めた
「ご苦労さま」
フレッドはニッコリ微笑みながら2人を労った
「いえ、リアさんのお陰です」
デイブがそう応えた
フレッドは2人の後ろにいるリアに目を向けた
「おかえり」
フレッドが微笑みながら言う
「帰って来た訳じゃないわ
ちょっと師匠の顔でも見ようかと思っただけよ」
リアはふん!とそっぽを向いた
デイブとアンディは素直じゃないリアの反応を見て、最初は呆気にとられたがぷっと笑ってしまった
一生懸命、笑いをこらえているデイブとアンディをリアはジト目で睨んだ
「マシュー」
リアは救護を手伝っていたマシューを呼んだ
マシューは手を止めて、一緒にいた治癒魔法使いに断ってから、リアの元へと走って来た
リアはフレッドの方へとマシューの背中を押した
「この子が今回、手伝ってくれたの
ホワイト帝国の方も、夜会で上手く行ったように話しを作って、王女を安心させ油断させてくれたわ
他の弱っている魔法使い達も、この子がいたから助かったのよ」
リアがフレッドにそう説明すると、マシューは驚いた
「そんな…!
俺は貴女に言われてやっただけです」
「やってくれたのよね、ありがとう」
リアはニッコリと微笑んだ
アンディはそんなリアの姿が微笑ましく思えた
リアは《呪い》を扱う為、普段は黒髪にしているらしい
自分に接触して来た時も、恐ろしげな雰囲気を出していた
だが、きっと本来のリアはこっちなんだろう
「そうなんだ、ありがとう
ずっと辛かっただろう?
ごめんね、助けるのが遅くなって」
フレッドがマシューの肩に手を置いて謝った
マシューはすぐに目の前にいる人物がフレデリック大公だとわかった
自分がライシャワー公国にいた頃より多少老けてはいるが、一目でわかった
「フレデリック大公…」
マシューはポロリと涙を零してしまった
涙を見せまいと下を向いてしまったマシューの背中を、フレッドはポンポンと叩いた
「貴方も毒に侵されているでしょう
彼らと一緒に治療を受けなさい」
リアにそう言われて
「はい」
とマシューは返事をした
右腕でグイと涙を拭うと、先程ローレッタからもらった錠剤をフレッドに差し出した
「これは俺達に使われていた毒の解毒剤です」
「ありがとう
これがあれば手っ取り早く治療が出来るよ」
フレッドは錠剤を受け取った
治癒魔法使いがマシューの側に来て、マシューの肩を抱いて建物へ向かった
その姿を見送ったデイブはフレッドに近づいて
「街に潜入している時に魔法使いを奴隷として買った人物を見つけました
居場所も特定してます」
と報告した
「そうか…
ボルジアに潜入させている魔法使いからも少しづつ、情報が入ってる」
フレッドはそう言うと、リアを見た
「リアも少しは把握してるんだろ?」
「そうね、何人かは確認してる
中には魔法使いではない人もいるわ」
「ボルジア王の狙いは何なのかな?」
フレッドは顎に手を当てて考えた
「マシューはボルジア王に近いローレッタ王女に仕えてましたから、なにか知っていかもしれませんね」
アンディがそう言うと、フレッドは頷いた
「後で、戻ってきた魔法使い達に話しを聞こう
リアも救出は手伝ってもらうよ」
フレッドの言葉にリアが驚いた
「何で私が?!」
「交換条件を出しただろう?」
「あれは今回の救出でしょ!」
「僕は救出を手伝うと言ったよ
今回だけと限定はしてないよ」
「〜フレッド!」
フレッドの方が一枚上手だった
呪いを扱うリアにとって、自分がいいように利用されるのは面白くない
リアはフレッドを無視してスタスタと歩き出すのだった
♪♫♬ ♬♫♪
ボルジアでの救出作戦から1ヶ月くらい過ぎた頃
フレデリック大公家のバルコニーにフレッドとスザンナが表れた
今日はフレデリック大公の結婚式だった
大々的な外国の要人を招待しての披露宴はまだ先だが、今日はフレデリック大公とスザンナ侯爵令嬢が婚姻を結んだ
大公家は開放されているのでバルコニーの手前まで大勢の公国民が祝福に詰めかけていた
婚姻の儀式が終わり二人がバルコニーに表れると、大歓声が起きた
フレッドは手を振って公国民の祝福に応えている
白い生地に金の刺繍を施したドレスを着ているスザンナも手を振って応えた
二人の両側にはデイビット小公子とソフィア侯爵令嬢、アンドレアス小公子とヴィクトリア小公女も立っている
アンディは正式にライシャワー大公家に入り、小公子となった
そしてヴィッキーとも正式に婚約を結んだ
公国民には二重の喜びだったので、予想を遥かに上回る人達が祝福に来てくれた
アンディはヴィッキーを見ると、ヴィッキーは薄っすら涙を浮かべている
アンディ自身も皆の祝福で感極まっていた
「ヴィッキー、皆の為に頑張ろうね」
アンディがそう語り掛けると、ヴィッキーはアンディを見上げて
「うん」
と応えた
二人がそのままキスをすると、大きな歓声が沸き起こったのだった
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
第二部、終了です!
引き続き第三部もよろしくお願いします!
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