73話 接触
宿屋ではデイブとアンディが悩んでいた
「どうする、デイブ?
協力を仰ぐならあのサーヴァントとか呼ばれてた人が一番いいけど…」
「そうだよな〜
ただアイツは王女に近すぎる」
2人は黙ってしまった
「協力させるわ」
突然、女性の声がした
驚いたアンディとデイブは声のした入口を見ると、いつの間にか長い黒髪の女性が立っていた
「誰だ?」
デイブは落ち着いて静かに聞いた
「リアさん」
アンディが呟いた
「そうよ、フレッドの弟子達」
リアはそう言うと部屋の真ん中辺りまで進んだ
ちょうどアンディとデイブの中間くらいだ
「リア…伯父上が話していた人か
落ち合うのは明日のハズだ」
デイブはそっとベットから降りると立ち上がった
「貴方達がちゃんと出来るか見てたの
案の定、躓いた」
リアはニヤリと笑った
デイブとアンディは返す言葉もない
「彼が協力してくれるなら明日はスムーズでしょう
協力せずに裏切られたら、少々荒っぽくなるだけよ」
「強気ですね」
デイブはまだ警戒している
「私にはそれだけの魔力があるのよ」
そう言うと、リアの黒髪は銀髪に変わった
「「!!」」
アンディはリアが銀髪だとは聞いていたが、実際に見るのは初めてだった
長いストレートの銀髪が美しい
「さあ、サーヴァントに接触するわよ」
♪♫♬ ♬♫♪
サーヴァントは皆に薬を渡し終わり、自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いていた
自分は魔力もありそれなりに魔法も使えるので、毒入りの食事と解毒剤が貰える
だが他の魔法使い達は魔力が弱かったり、出来る魔法が少なかったりとサーヴァント程仕事が出来ない
仕事が上手くいった時しか解毒剤が貰えないので、どんどん弱っていくのだ
サーヴァントは皆の為にローレッタに跪き、ローレッタの望むがまま身を売り、やっと解毒剤が貰える
自分で自分が情けなくなるが、どうしようもない
ドン!
壁に八つ当たりするくらいしか出来なかった
サーヴァントが部屋に入り魔法で明かりを点ける為に天井を見た
そして明かりを発する魔導具に魔力を送ると、魔導具は光り出した
魔導具から視線を正面に戻すと、目の前に人が立っている
「うわつ!」
サーヴァントはマジで驚いた
心臓が口から出るかと思った!
ドキドキする心臓を手で押さえながら
「だ、誰だ?あんた達」
3人は深々とフードを被っている
「驚かしてごめん」
アンディは謝りながら一歩前に出た
「フレデリック大公の遣いだ」
デイブもそう言いながら一歩、前に出た
「フレデリック大公?」
懐かしい響きだ
サーヴァントがボルジアに売られたのは10歳の頃だ
それ以降はライシャワー公国の事など耳にする事はほとんどなかった
「大公の遣いが何の用だ?」
奴隷としてボルジアに売られてから、こんな事は一度もなかった
またあの王女が何か変な遊びでも考えたのかもしれない
サーヴァントは慎重に相手を探った
「フレデリック大公は皆さんが捕まっている事を知って救出作戦を決行したんだ
僕達は先陣だ」
アンディは優しく説明した
「魔法使いなのか?」
まだ判断は出来ない
警戒を解くな
サーヴァントは自分に言い聞かせた
「そうだ」
今度はデイブが返事をした
「その話しをどうやって信じろと?」
サーヴァントの警戒心は解けない
うん、なかなかいい警戒心だ
デイブは少し安心した
後ろで話しを聞いていたリアがアンディとデイブよりも前に出て来るとフードを脱いだ
真っ黒なストレートの髪が露わになる
「あんたは!」
サーヴァントの言葉にアンディとデイブは驚いてリアを見た
「久しぶりね」
「…本当に…来てくれたのか?」
「そうよ、言ったでしょ?
迎えに来るって」
リアはニッコリ笑っている
アンディとデイブは何の事かわからない
デイブはゴホンと咳払いをした
その咳払いでリアは
「あぁ…
この子とは、呪いの依頼を受けた時に顔を合わせているの」
リアは王女からホワイト帝国の皇帝と皇太子の殺害依頼を受けた時に、側にいるサーヴァントに気付いていた
魔法使いがボルジアの王女に仕えているとは聞いた事もなかったので、リアはサーヴァントを調べると、奴隷として買われ無理矢理働かされていると知った
更に調べると、他にも何人も魔法使いが捕らえられている
しかも皆、酷い扱いだ
リアは依頼を受けた後、ボルジアを発つ前にこっそりサーヴァントに会いに来ていた
「少し待っていなさい
必ず全員、ライシャワー公国へ帰すから
私がもう一度ここに来るまで皆を頼むわよ」
リアはサーヴァントにそう告げ、ホワイト帝国へと向かったのだ
「そういう経緯があったなら、事前に説明して下さい」
デイブがリアを叱るように言った
「貴方達がどこまでやれるか見たかったから」
リアはふふっと笑った
リアはサーヴァントに向き直ると
「私が戻るまで、よく他の魔法使い達を守ってくれていたわね
辛かったでしょう?
ありがとう」
リアにお礼を言われて、サーヴァントはぐっと来てしまった
リアがホワイト帝国で呪いを成功させ、姿を消してから1年くらい経っていた
だがその間、何も音沙汰がなかった
「必ず迎えに来る」と言っていたが、やはり助けになんか来ないんだ
サーヴァントは諦めていた
だがリアとの約束は何故か守りたかった
迎えに来なくても、自分は皆を守らなくては…と思って辛酸を舐めていた
「貴方の本当の名は?」
リアが突然聞いたので、サーヴァントは「えっ!?」と驚いた
「サーヴァントはあの王女が付けた名でしょ?
本当の名前があるでしょ?」
リアは顎に指を当てながら聞いた
「俺は…」
サーヴァントが言い淀んだ
このサーヴァントという名を与えられてから、自分の本当の名を名乗る事がなかった
「俺の名前はマシューだ」
名乗った途端、涙が溢れた
アンディは驚いてマシューに近づいて肩に手を置いた
「すいません…
ライシャワーでの名前を名乗れるなんて…」
そんなマシューの肩をアンディはポンポン叩いて
「迎えに来るのが遅くなってごめんね
本当にごめんね」
と謝った
「…いえ」
マシューは涙を拭った
そして目の前にいるアンディを見ると驚いてしまった
「フレデリック大公!?」
マシューに叫ばれて
「あ」
とアンディが気付いた
アンディは自分の髪を触りながら
「違うよ!僕はフレデリック大公じゃないよ」
と否定した
「違うんですか?
そっくりだったので…」
マシューは目をパチクリさせた
アンディは自分の髪を摘みながら
やっぱり僕って師匠と似てるんだ
と改めて思ってしまうのだった
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
次話もよろしくお願いします!
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