68話 姉弟子
ギルバートの使い魔はボルジアの宮殿にいた
クロワシミミズクでは目立つので、今は鳩の姿をしている
国王や側近も確認出来た
中でも王女が最も国王に近い
そしてこの王女の側には魔法使いが居る
この魔法使いは首や手首にチョーカーを巻かれているので奴隷だろう
それなりに魔力はあるようだが、魔法の使い方がなっていない
近くにギルバートの使い魔が居るというのに、その事にも気付いていない
この魔法使いを見張ると、普段は宮殿の奥にある、みすぼらしい建物にいるようだった
この建物には他にも魔法使いが何人かいる
だが皆、魔法使いと呼べるようなレベルではない
恐らく何人も奴隷として魔法使いを買ったが、王女の側にいる魔法使いが一番まともに使えるのだろう
王女は魔法使いに、ホワイト帝国に潜り込ませた女を監視させている
ただこの魔法使いも魔力を上手く使えていないので、使い魔が長続きしない
使い魔が消えてしまったら、また新たな使い魔を送っていた
ギルバートはある程度、情報を入手したので、次はフレデリック大公がクラリッサ師匠から聞いたリアの居場所へと向かった
ボルジアは山脈に沿った国なので、高い山が連なっている
クラリッサ師匠から聞いた場所はその山脈の、かなり高い位置だった
ギルバートは使い魔を鳩からクロワシミミズクへと変えると山脈を目指した
高い山の中腹あたりに集落がある
こんな所に住んでいる人がいるのか
ギルバートはそう考えながらその集落の上空で旋回した
よく見ると、その集落より更に登った辺りに一軒の屋敷がある
あれか
ギルバートはその屋敷目ざして飛ぶと、屋敷の2階のテラスに人が出て来た
遠くからでもハッキリわかった
長い銀髪が輝いている
するとテラスに出て来た女性は顔を上げ、ギルバートの使い魔を見た
リアさんだ
ギルバートがそう思った瞬間、リアは左手の掌を使い魔に向けた
掌の向こう側にリアの顔が見え、ニヤリと笑った
突然、ギルバートは視界を失った
真っ暗だ
ライシャワー公国でフレッドの隣の机で仕事をしていたギルバートが突然、机に突っ伏した
「僕、嫌われているのかなぁ」
ギルバートは突っ伏したまま、呟いた
「どうした、ギル?」
ギルバートの異変に気付いたフレッドが声を掛けた
「…リアさんに使い魔を消されました」
ギルバートはリアに笑いながら使い魔を消されたのでショックを受けていた
「また無茶な事を」
フレッドは呆れている
「僕、リアさんに嫌われています?」
ギルバートは突っ伏したまま、フレッドの方を見た
「リアは誰にでもそうだよ」
フレッドにそう言われたギルバートはパアッと明るくなった
「そうですよね!」
リアは敬愛する姉弟子だ
姉弟子に嫌われているかとショックだったが、もう立ち直った
「それでボルジアの皇室はどうだった?」
フレッドの問いに、ギルバートは見てきた事を話した
「皇室からして、魔法使いを奴隷として使っているのか」
フレッドは怒り気味だ
「魔法使い達の扱いは、それは酷いものですよ」
ギルバートが顔を顰めて言った
「ふむ」
フレッドは腕を組んで考えた
♪♫♬ ♬♫♪
アンディとデイブは海でボードをしている
やはりデイブの方がボード歴が長いので上手い
アンディは羨望の眼差しでデイブを見ていた
砂浜ではパラソルの下にヴィッキーとソフィが座っている
「男子は元気ねぇ」
ヴィッキーが呟いた
「デイブは久しぶりだから仕方ないわ」
ソフィは擁護する
「せっかく帰って来たんだから、もっと二人っきりでいたいでしょう?」
ヴィッキーがソフィをからかった
「べ、別に〜」
ソフィの目は泳いでいる
「そう言えばデイブが今年は湖のボートを借りて花火を見ようって言ってたわよ」
ソフィがキラキラした目でヴィッキーを見た
「えっ!本当?いいわね、それ!」
ヴィッキーが思わず叫んでしまった
「去年の事があるから、今年は人目につかないようにするんだって」
ソフィはふぅ、とため息をついた
「そうね〜
デイブとソフィは絶対に記者に狙われるわね」
「ヴィッキーだって正式に婚約はしてないけど、街の人達には公認の仲なんだから、記者に狙われるわよ」
「そうかしら?」
「そうよ」
どっちにしても、なるべく人目につかずに二人っきりになって花火を見たいものだ
ヴィッキーとソフィはガシッと手を取ると
「「今年も頑張りましょ」」
とお互いを鼓舞するのだった
♪♫♬ ♬♫♪
夕方になり、4人は街に出た
予想通り、デイブとソフィは街の人達から声を掛けられた
「若君、お帰りなさい」
「若君、ソフィアさまとのご結婚はいつですか?」
「ソフィアさま、若君がいらして下さって良かったですね」
などなど声を掛けられる
中には気の早い人もいて
「お子様はまだですか?」
と聞いてくる人もいた
アンディとヴィッキーも声を掛けられていた
「姫さま、ご婚約はいつですか?」
「アンディさま、姫さまとライシャワー公国に住むのですか?」
皆、優しく声を掛けてくれる
ヴィッキーやアンディ、デイブやソフィは声を掛けられる度に「ありがとう」と返事をしていた
「あ、ヴィッキーの好きなチョコレート売ってるよ
買ってこよう」
アンディはそう言うとヴィッキーと手を繋いでお店に向う
デイブとソフィは焼肉大会のお肉を食べている
行き先々で祝福の声を掛けられるが、概ね去年のように過ごせた
4人は砕いた氷が入ったカップにそれぞれシロップを掛けてポリポリ食べながら湖へ向かった
アンディはレモン味でヴィッキーとソフィはイチゴ味
デイブはブドウ味だ
湖に着くと、貸しボートの場所まで向う
貸しボートは2人用の小さな物から、大人数用の大きな物まであり、種類は豊富だ
デイブが予約したのは中型のサイズで、ボートの中央から後ろが大きなソファのようになっている
ボートの後方にはテントのような天蓋も付いていた
これを2艘借りてあるのでデイブとソフィ、アンディとヴィッキーでそれぞれ乗り込んだ
動力は魔法だ
自分の魔力で動かせる人は動かし、自信のない人は魔法使いが魔力を注いで動かしてくれる
魔法ではなく、船頭をつけてもOKだ
4人はもちろん自分達の魔力で動かす
アンディとデイブはボートの動かし方や舵の取り方などを習う
一通りレクチャーを受けると、いよいよ出発するのだった
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
次話もよろしくお願いします!
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