65話 詮索
レイモンドの執務室にはジェフェリーが訪れていた
ジェフェリーは昨晩、ティファニーから聞いた、ボルジアから亡命してきた女性が魔法を使って変装している事を話した
「ボルジアからの刺客ですかね?」
レイモンドは考えた
「前皇帝陛下は魔法使いの呪いで亡くなった
そして魔法で変装をした人間が現皇帝に近づいてきた
憶測でしかないけど、前皇帝陛下と皇太子殿下に呪いを依頼したのはボルジアかもしれないね」
ジェフェリーはレイモンドがいる机の前に立って考えを話した
「確かに今までそんな事はなかったのに、魔法使いを使って仕掛けてくる手口が一緒ですからね
その可能性はあるかと思います」
レイモンドは皇帝になる前は、スザンナの仕事を手伝っていた
その頃はレイモンドにとってジェフェリーは上司のような存在だったので、今だにジェフェリーに対しては敬語を使ってしまう
お互いの考えを話していると、ドアがノックされた
「皇帝陛下、バムフォード伯爵がお越しになりました」
ドアの向こう側から声がした
「入ってもらって」
レイモンドがそう答えるとドアが開き、ケントがまず部屋に入って来た
ケント・ジョンソンは亡くなったジェイムズ皇太子の補佐官を務めていたが皇太子殿下が亡くなり、職を失ってしまっていた
だがとても有能な人材だったので、レイモンドが自分の補佐官として取り立てたのだ
ケントもジェイムズ皇太子の元では仕事らしい仕事が出来なかったが、今はレイモンドの元で充実した日々を送っていた
ケントの後に続いてバムフォード伯爵が入って来た
バムフォード伯爵はレイモンドの前まで行くと挨拶をした
「皇帝陛下にご挨拶申し上げます」
「呼び立ててすまないね、バムフォード伯爵」
レイモンドがそう言うと
「いえ」
と答え、バムフォード伯爵は顔を上げた
バムフォード伯爵の隣にいるジェフェリーは
「伯爵、早速ですがボルジアから亡命した女性はどうですか?」
と聞いた
「そうですね…
生まれも育ちもボルジアのはずだが、いやにホワイト帝国に詳しいですな」
バムフォード伯爵は顎に手をやって、考えながら答えた
「詳しいとは内情の事ですか?」
ジェフェリーが更に聞いた
「内情もそうですが、貴族の事も、帝国のマナーなど教えてもいないのに、あたり前のように知っています」
「バムフォード伯爵のお嬢さん…彼女の母親から教わったのでしょうか?」
レイモンドが聞いた
「そうかも知れません
ただ知っている事が最近の事柄なので…
娘が駆け落ち同然で家を飛び出しボルジアに行ったのは20年も前です
ですがブリタニーはこの前の皇太子妃選別の事なども知っていました」
「なるほど…」
ジェフェリーが話しを聞いて考えていると、部屋の入口にいたケントが声を掛けた
「あの…よろしいでしょうか?」
「うん?何だい?」
レイモンドが発言の許可を出した
「私は昨日、たまたまなのですがバムフォード伯爵がご令嬢を案内している所に出会いました」
「ああ、そうだったね
庭園まで案内してもらったのですよ」
バムフォード伯爵はニッコリ笑いながらレイモンドに説明した
「その時に少しご令嬢とお話しをしたのですが…」
ケントはここまで話すと、先を話そうか止めようか迷っている感じになった
ジェフェリーは
「構わないよ、何があったんだい?」
と聞いた
「その…偶然だと思いますが…
ご令嬢の声がアヤカ・ロン・デニスそっくりだったのです
それはもう、声を聞いて驚いてしまうくらいに」
ジェフェリーとレイモンドが息を呑んだ
わざわざ変装魔法を使い変装している
そして、やたらホワイト帝国に詳しい
ジェフェリーとレイモンドはお互いを見つめ合った
♪♫♬ ♬♫♪
ライシャワー公国のフレッドの元には、昨晩ティファニーが放った使い魔が来ていた
使い魔は鳥から巻紙に変わり、フレッドはそれを読むとため息をついた
その様子を見ていたギルバートは
「ティファニー公女は何と言ってこられたのですか?」
と聞くと、フレッドは巻紙をギルバートに渡した
巻紙を読み終えたギルバートは
「雑な魔法って事は、独学という事でしょうかね?」
両手では巻紙を持ったままの状態でフレッドを見た
「そうだね
そしてまたボルジアだ
きっと奴隷として買われた魔法使いなんだろう」
ギルバートは腕を組み、椅子の背もたれに寄り掛かった
いったい何人の魔法使いが奴隷として売られたのだ?
生きる為に自分の魔力を駆使して、魔法で何が出来るが出来ないかもわからないまま必死なんだろう
「ギル
今回もまたホワイト帝国の皇族絡みだ
ボルジアがホワイト帝国を狙っているのかもしれないね」
「そうですね
そうなると前回の呪いの依頼もボルジアの皇室…国王かもしれません」
ギルバートが持っていた巻紙をボンと煙に変えると、巻紙は無くなってしまった
「ギル、すまないけどボルジアの皇室を探ってくれるかい?」
「わかりました」
ギルバートがそう返事して左手を延ばすと、クロワシミミズクが現れた
ミミズクはバサッと飛び立つと、壁をすり抜けて飛んで行った
いつもはぎゃーぎゃーうるさいギルバートだが、フレッドの補佐官を務めるだけあって、魔法使いとしても事務官としても優秀だ
年代が違うので共に学びはしなかったが、クラリッサの弟子でもある
「やはり一度、リアにも接触したいな」
フレッドが呟いた
「海で坊っちゃんに接触したのもリアさんでしょう?」
ギルバートが聞いてきた
「そうだよ
魔力を隠してもいなかったね」
「師匠はリアさんの居場所を突き止めていませんかね?」
フレッドは考えた
「…そうだね
師匠ならば、あの亜空間での接触でリアが何処にいるかわかったかもしれないね」
フレッドはそう言うと椅子から立ち上がり、先程のギルバートのように左手を伸ばした
フレッドの左腕には創造の鳥が現れた
使い魔はフワリと飛び立つと、ミミズクと同じように壁をすり抜けて飛んで行った
「もうじき妖精祭りなのに、何だかバタバタしてしまいますね」
ギルバートが残念そうにため息をついた
ご精読、ありがとうございます
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