60話 救出
フレッドとアンディが馬車から消えた後、ロドリーは馬車の真ん中辺りでうずくまった
しばらくすると馬車が止まり、外で何か言い争っている声が聞こえ始めた
ロドリーは両手をぎゅっと握りしめ、必死に震えを止めようとする
だが震えは止まらない
何かに当たる音や人の叫び声、そして自分のいる馬車も揺れて前で何か音と声がした
外で「指が…!」と叫んでいる声がしたと思ったら、馬車のドアの鍵を触っている音がする
するとドアが開けられた
ドアが開くと、そこには変装しているフレデリック大公の姿があった
ロドリーは涙が溢れた
「大公閣下!」
そう叫ぶとロドリーはフレッドに抱きついた
フレッドはロドリーを受け止めると
「お待たせ」
と言い、優しくロドリーの背中をポンポン叩いた
アンディは倒れている護衛騎士に剣を突き付け馬車の写輪の元へと連れて行くと、騎士のマントを引きちぎり、それで騎士を車輪に縛り付けた
フレッドも同じように騎士を縛っていく
二人の御者も車輪にしばり、使用人は前の馬車に入れ、騎士の剣をドアの近くに突き刺しドアが剣に当たり開かないようにした
主人の男はフレッドが剣を突き付け、ロドリーがいた馬車へと連れて行った
「入れ」
フレッドがそう命令すると、男は折れた指を庇いながら馬車に乗った
フレッドはドアを閉めようとしたが、ふと何かを思い出したように話した
「そうそう
自分の身を守りたいなら、魔法使いを手に入れるのではなく、まずは護衛騎士の装備に力を入れた方がいいよ」
そう言うとフレッドはドアを荒々しく締めた
そして外から鍵を掛ける
これでしばらくは追っても、助けを求めにも行けない
フレッドとアンディは騎士が使っていた馬を2頭だけ残し、残りの馬は全て逃した
フレッドとアンディは騎士から取り上げたマントをフード代わりに被り、アンディがロドリーを抱き上げて馬に乗せる
そしてロドリーの後ろにアンディが乗った
フレッドも、もう一頭の馬に乗る
「はっ!」
と声を掛けて馬の腹を蹴ると、馬は勢いよく走りだした
アンディは左手でロドリーをしっかり抱えて、右手だけで手綱を持ち、馬を操っている
しばらく馬を走らせると林を抜けたので、そこからは馬を歩かせた
先頭を行くフレッドが振り返り
「ロドリー、君の家はどこにあるの?」
と聞いた
「ボクの家はテネシーにあります」
「テネシーか
ボルジアに近い所だね」
フレッドは少し考えて
「アンディ、ヴィッキーにロドリーを送るから、帰りが数日遅くなると伝えて」
「はい」
「僕はギルにボルジアの近い地域の警備を強化するように伝えるから」
と言うと、フレッドの肩に大きな使い魔が現れた
「わぁ…!」
ロドリーは突然現れた美しい鳥に声を出してしまった
アンディが左手を伸ばすと、鷹が現れる
「わっ、すごいや!」
ロドリーは楽しそうに見ている
アンディを見上げると
「触ってもいいですか?」
と目をキラキラさせて聞いてきた
「どうぞ」
アンディがニッコリ微笑み答えると、ロドリーはそーっと手を伸ばし、鷹の背中を撫でた
「わあっ」
ロドリーは嬉しそうだ
良かった
さっきまで泣いていたが、笑顔になった
フレッドとアンディは安心した
アンディは鷹を触るロドリーの手首にチョーカーが付いていない事に気がついた
「手首に巻かれていたやつは?
あれ、首も…全部なくなってる?」
ロドリーは鷹を撫でるのを止めると、アンディを見た
「さっき馬車の中で待ってい時に、突然消えたんです」
「消えた?」
フレッドは驚き、馬の速度を少し落とすと、アンディ達の馬の横に来た
「本当だ」
フレッドはロドリーの首を触っている
「師匠があの指輪を壊したから、チョーカーも一緒に壊れて消えたのではないですか?」
アンディがそう言うと
「うーん、そうかもね」
とフレッドも考えながら答えた
「持って帰って調べようと思ってたのに…」
フレッドが残念そうに言うので
「師匠が壊すからですよ」
とアンディが呆れた感じで言った
「仕方ないなぁ」
フレッドがそう言うと、使い魔がバサリと羽ばたいた
続いてアンディの使い魔である鷹も飛び立つ
ロドリーは羨望の眼差しで二羽を見つめた
二羽が見えなくなると、フレッドはアンディに
「そろそろ変装魔法を解いてもいいだろう」
そう言うと、フレッドは本来の姿に戻った
アンディも変装魔法を解くと、ロドリーがまた「わぁ」と言った
「凄い!変装していたんですね!
それに大公閣下と同じ銀髪だ!」
ロドリーは興奮している
アンディは照れてしまった
フレッドはそんなロドリーに声を掛けた
「ロドリー、無理なら話さなくていいけど、どうやってこのボルジアまで連れて来られたか教えてくれるかい?」
ロドリーは少しこわばったが
「はい」
と返事をすると話し始めた
「学校が終わって、友達と海で遊んでいたんです
暗くなってきたから帰ろうって友達と別れた後に、大人の男の人が何人かでボクを捕まえて、押さえつけたんです
その時に左手にさっきの紐のような物を巻かれて…魔法を使って逃げようとしたけど、ものすごい痛みが体中にして…目を覚ましたら、知らない部屋に閉じ込められていました」
ロドリーは少し震え始めた
アンディがロドリーを覗き込むような素振りをすると、ロドリーもアンディを見上げた
アンディと目が合って安心したのか、ロドリーは更に話しを続けた
「目が覚めたら、両手と両足、それに首にもあの紐のようなものが巻かれていて…
外そうと触ったら、バチバチッって手を弾かれたんです」
弾かれた時に痛かったのだろう
ロドリーは手を擦った
「その後は魔法を使おうとしたり、いう事をきかなない時にアレが発動して…体中に凄い痛みが走って、何回も気絶して…」
そこまで話すと、ロドリーは黙ってしまった
「わかったよ、ロドリー
ありがとう」
フレッドが手を伸ばして、ロドリーの頭をポンポン叩いた
なくなってしまって調べる事が出来なかったが、あのチョーカーはさっき見た感じでは難しい魔法ではない
恐らく、最初は家畜用などだったのだろう
改良を加えた魔法使いも脅されて改良したのか、ちゃんとすぐに壊れるように作ってある
ロドリーはまだ子供で魔法もそんなに学んでいないから従わす事が出来たが、あの程度の物ならば魔法を学んだ魔法使いなら壊す事は出来る
ロドリーのように子供の時に付けられ、魔法を学んでいない魔法使いが恐怖から、触る事も壊す事も出来ずに奴隷として働かされているのだ
とりあえずあのチョーカーの解除方法を調べて、魔法使いに教えようか…
フレッドは今後の対策をいろいろ考えるのだった
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
次話もよろしくお願いします!
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