56話 救世主
ボルジアの使節団がホワイト帝国に到着したのは、追悼の儀式から2ヶ月後だった
使節団の責任者や数名の関係者が謁見の間でレイモンド皇帝に祝辞を述べていた
最後にボルジア王からの祝いの品の目録を献上した
だがレイモンドは
「ありがとうございます
ですが受け取る事は出来ないのでお持ちかえり下さい」
と断った
もともとホワイト帝国とボルジアは友好国ではない
受け取る理由がなかった
「それでは私が陛下に叱られます
どうぞお受け取り下さい」
責任者は慌てた様子だ
だがレイモンドは
「ボルジア王には私からお礼の書状を書きますので、それと一緒にお持ち帰り下さい」
と断った
責任者もこれ以上はムダか…と思ったが、ホワイト帝国の皇帝やその一族は無類の女好きだ
女達ならば受け取るだろうと考えた
「それではこちらの娘達だけでも、お受け取り下さい
こちらはボルジアでも良家の娘達です
新皇帝陛下の皇妃にふさわしい者ばかり連れて参りました」
そう紹介され、3人の女性が一歩前に出てレイモンドに挨拶をした
レイモンドはため息をつくと
「申し訳ない
私は皇妃を持つつもりはありません
こちらのご令嬢達もご一緒にお帰り下さい」
責任者はまさかの返事に驚いた
女だけは絶対に受け取ると思っていたのに
だがアヤカはわかっていた
レイモンドは前皇帝やジェイムズと違い、誠実な性格だという情報をローレッタから得ている
皇妃や妾は絶対に持たないと聞いていた
なので結婚までにジェシカを蹴落とし自分が皇后になれば、もはやライバルもいない
念願のハッピーエンドだ
使節団の責任者はもはや為す術もなし、といった感じで引き下がった
使節団は3日後にボルジアに向けて出発する
アヤカはそれまでにレイモンドの目に留まり、ホワイト帝国に残れるようにしなくてはならない
今のアヤカは魔法で全く違った容姿になっていた
縦ロールの美しく長い金髪、容姿は男が一目見たら釘付けになるくらい整っている
ゆるく可愛らしい容姿にしてもらった
ジェシカが少々キツめの容姿なので、あえて正反対にしたのだ
だが瞳だけは変えれなかったので黒だ
使節団は謁見の間から退出すると、来客用の宮殿へと案内された
今夜は使節団の歓迎の晩餐会が予定されている
まずそこでレイモンドの目に留まるチャンスがある
アヤカは充てがわれた部屋に入り、今の自分を鏡で見た
うん、この容姿で落ちない男はいないわ
ましてジェシカなんて私の足元にも及ばないじゃない
アヤカは自信満々だった
そんなアヤカを窓の外から見ている鳥がいた
ローレッタに使われている魔法使いの使い魔の筒鳥だ
魔法使いは自分が見ている事を細かくローレッタに伝える
ローレッタはお茶を飲みながらニヤリと笑うと
「さて、ヒロインはどこまで巻き返せるかしらね」
と楽しそうだった
♪♫♬ ♬♫♪
ボルジアの使節団を招いての晩餐会は盛大だった
上座にはレイモンド皇帝、そして婚約者のジェシカ
更にウィリアムズ大公夫妻が座っている
会場にはボルジアの使節団だけではなく、ホワイト帝国の貴族達も招かれていた
アヤカはレイモンドからかなり離れた場所だ
苛立ちが隠せなかった
ここではレイモンドの目に留まらない
上座を見ると、レイモンドとジェシカが何か笑いながら話しをしている
アヤカはギリリと歯ぎしりをした
本来、そこは自分の場所だ
この握っているナイフをジェシカに突き刺したいくらいだった
結局、何も出来ずに晩餐は終わってしまった
アヤカは部屋に戻ると、枕やクッションを投げつけて暴れた
あのジェシカの幸せそうな顔!
何様のつもり!?
このゲームのヒロインは私だ!!
アヤカは枕やクッションを投げまくり、息がきれてしまうまで暴れた
少し休んで落ち着きを取り戻したアヤカはテラスに出た
テラスの手すりには筒鳥が留まっている
アヤカは筒鳥に向って
「どうにかレイモンドと出会うチャンスがないかしら?
明日1日レイモンドの行動を見張って、一人になったら私をそこに案内して」
筒鳥は首を傾げた
伝わったのか不安だが、それ以外の方法が思い付かない
レイモンドと出会えさせすれば、後はこの容姿と準備した生立ちで懐柔出来る
「あぁ、レイモンドさま
私が貴方をお救いしますね」
と浸るのだった
♪♫♬ ♬♫♪
ライシャワー公国では少しづつ、スザンナが屋敷の事をするようになっていた
突然ホワイト帝国からやって来てこの大公家を取り仕切っては以前から居た人達が良く思わないだろうと考えて、しばらくは人間観察をしていた
だが昔からいる使用人はフレッドとスザンナの事をずっと見て来たので、スザンナが大公家に来た時は大喜びだった
古い使用人達はすぐにスザンナの事を「奥様」と呼び、スザンナの事を知らない使用人達もつられて「奥様」と呼ぶようになった
アンディの事を「坊っちゃん」と呼ぶのも割とすぐに浸透してしまったので、この屋敷の使用人は伝染しやすいのかもしれないとアンディは思った
スザンナが廊下を歩いていると、前からギルバートが慌てた様子で歩いて来た
ギルバートはスザンナに気が付くと
「あ、奥様!
大公を見掛けませんでしたか?」
と声を掛けて来た
「いいえ、見ていないわ
逃げられたの?」
「はい
本当もう…奥様がいらしても相変わらずフラフラと…」
ギルバートはブツブツ言っている
ギルバートは書類を持っていた
スザンナの視線に気付いたギルバートは
「ああ、ここの所を確認しないと先に進めないんですよ」
と書類を見せてくれた
スザンナは書類を見ると
「これは必要ね
でもここまではいらないわ
その代わりこれを増やすのはどうかしら?」
と言う
ギルバートは嬉しそうに
「そうですよね!
私もそう思います!」
と叫んだ
「フレッドには私から話しておくから、そのようにして先に進めて」
「はい!奥様!!
ありがとうございます!」
再び歩き出したスザンナの後ろ姿を見つめるギルバートは
「救世主さま…!!」
と拝むのだった
ご精読、ありがとうございます
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