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53話 バットエンド

アヤカがボルジアの首都に入ったのは、西の塔を脱獄してから11日後だった


その間4か所の町で宿に泊まり、食料を買い揃えたりしていた


アヤカを連れ出した男はとにかく無口だ

何を聞いても答えないので、アヤカも途中からは余計な質問はしなくなった


ボルジアは山脈に沿って縦に長い国だ

首都はまだホワイト帝国とは変わらない気候だが、北へ行けばかなり寒いらしい


首都はホワイト帝国程ではないが、それなりに賑わっている

都会育ちのアヤカにしてみれば、まだまだ田舎の主要都市程度だが


男は人混みの中でも馬を巧みに操り、街の中心にある城へ向っているようだった


「あのお城へ行くの?」

「そうだ」


男は重要でない質問には答えてくれる

アヤカもだいぶわかってきた


城の正門には衛兵が立っているが、止められる事もなく素通りした


こいつ、結構顔が利くのね


アヤカは意外だった


城に到着すると馬から降ろされ、城の中へと入っていく


かなり奥まで行った所で、侍女のような女性が待ち構えていた


「後はあの女に付いて行け」

男に言われた


「貴方とはこここまでなの?」

「俺の仕事はここまでだ」


扱いづらい男ではあったが、自分を救い出し10日以上も一緒に逃亡生活を送ったのだ


ボルジアには知り合いもいないし、やはり少し寂しくなった


「ありがとう

また会えるかしら?」

「さあな」


男はそう返事をすると、踵を返し去って行った


アヤカは侍女に案内され、更に奥へと進んだ


  ♪♫♬ ♬♫♪


アヤカは入浴を済ませ新しいドレスを身にまとい、温かいお茶を飲みながらソファに座っていた


ホッとする

やはり自分は人に(かしず)かれているべき人間なのだ


アヤカがそんな考えを巡らせていると、ドアが開き一人の女性が入って来た


アヤカより少し年上くらいに見える

薄い緑色の髪で着ているドレスからは明らかに身分の高さが伺えた


アヤカは立ち上がり、その女性を見つめた


女性はアヤカの前に来るとニッコリ微笑み

「初めまして、アヤカさま

私はボルジアの第三王女のローレッタ・リリィ・ボルジアと申します」

と名乗った


王女だったか!

アヤカは淑女の礼をした

「初めまして、ローレッタ王女

アヤカ・ロン・デニスです」


ローレッタはふふっと笑うと

「そんなに畏まらないで

さ、お座り下さい」

「ありがとうございます」


二人は向かい合って座ると、侍女はすぐにお茶の準備をした

アヤカにも新しく淹れたお茶が出された


お茶を出し終わると、侍女達は部屋から退出した

アヤカは誰もいなくなったので真っ先に聞きたかった事を質問をした


「ローレッタ王女、何故私を救い出したのですか?」


ローレッタはお茶を一口飲むと、カップをソーサーに置き

「私の転生前の名は結月(ゆづき)と申します」

とサラリと言った


転生者!

自分の他にも転生者がいた!?


アヤカの驚きに、ローレッタは更に笑った


「驚かれるのも無理はありませんわ」

「…ええ

で、でもよく私が転生者だとわかりましたね?」

「だってお名前が『アヤカ』でしたもの」


ローレッタはさもあたり前のような顔をしている

だが確かにそうだ


「私、生まれた時から前世の記憶を持っていました

成長するにつれ、ここが前世でやっていたゲームの中だとわかったのです」


「すぐに気付かなかったのですか?」

「ええ

アヤカさまのようにホワイト帝国で転生していればすぐにわかったでしよう

でも私はゲームの地図やハードモードのライバル達の出身地程度にしか語られないボルジアに転生してしまったのですから」


「やはりここはハードモードなのですね」

アヤカの愕然とした表情を見たローレッタは

「そのご様子だと、ハードモードはなさっていなかったのですね」

と残念そうだ


「私、ノーマルモードばかりしていて…

私、何を間違えたの!?

どうしてこんな事になったの!?」


アヤカは既に同じ転生者目線になっているので、王女である事を忘れてタメ口になっている


ローレッタは再びお茶を飲むと話し始めた


「ハードモードは攻略対象がジェイムズ皇太子とは限りません

まず、攻略対象者を見極めなくては

間違えたらその時点でバットエンド決定です」


攻略対象者が変わる!?

まさかのストーリーだ


「今回はレイモンドさまが皇帝とお成り遊ばしたので、正解はレイモンドさまだったのです」


「…そんな…」


愕然とするアヤカを見つめながらローレッタは続けた


「ハードモードでは攻略対象者が変わるので楽しかったですよ

デイヴィット小公子やアンドレアス皇子、他にも皇太子側近のケントさまや、騎士のレオンさまなど…

でも間違えてしまったら最悪でしたがね」


自分はその最悪になってしまっているのだ


「私、幼い頃からこの世界のゲームを見届けたくて準備してましたのよ」

「準備?」

「先程までアヤカさまと一緒にいた男…あれは私が奴隷市場で買った魔法使いです」

「魔法使い!?」


魔法使いって買えるんだ

このゲームは凄いものを売ってるなと、アヤカは関心してしまった


「あの男は使い魔と呼ばれる物を使えます

そしてその使い魔の目と繋がっているので、私はストーリーがどのように進んでいるか知る事が出来たのです」


「私が攻略対象を間違えてるって気付いたでしょ?」

「はい」

「なら、どうして教えてくれないのよ」


ローレッタはニッコリ笑い

「あの魔法使いの使い魔は見る事は出来ますが、伝える事は出来ません

なので私は拝見するしかなかったのです

そしてアヤカさまは完璧なバットエンドを迎えられました」


笑いながら言われてしまった


「それで?何故バットエンドを迎えた私を助けたの?」


「それはアヤカさまにチャンスをあげようかと思いましたの」

「チャンス?」


「レイモンドさまはまだご結婚されてはいません

半年後にご結婚されたら、そこで本当に終わりです


なのでこの半年の間にもう一度ゲームをして頂きたいのです」


「貴女自身がプレイすればいいじゃない」

「私はボルジアの第三王女で、ゲームでは登場すらしていないキャラです

ですが、アヤカさまはヒロインです」


「私は無理よ

ホワイト帝国では罪人なんだから」

アヤカは飲み干したお茶のカップを置いた


「私が買った魔法使いは人の姿を変える魔法が使えます」

「えっ」


ローレッタはニヤリと笑うと

「近々、我が国よりレイモンド新皇帝陛下への祝意を示す為に使節団が派遣されます

お祝いの品の中には皇妃にと、女も入っています

その中に入り、レイモンドさまを攻略するのです」


アヤカはゴクリと唾を飲んだ

バットエンドを迎えたが、まだ間に合う


今回は攻略対象がレイモンドとハッキリもしている


ジェシカを蹴落とし、自分が皇后になればハッピーエンドだ


「ローレッタ王女は何故そこまで私に力を貸して下さるの?」


ローレッタは飲んでいたお茶のカップを左手で持っているソーサーに置くと

「私、ゲームのストーリーを見ていたいんです

まだ半年間の猶予があるのに、このまま終わるのが嫌なんです」

ローレッタはソーサーごとお茶のカップを机に置くと、ニッコリと微笑んだ


ご精読、ありがとうございます

m(_ _)m


次話もよろしくお願いします!

。◕‿◕。

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