51話 脱獄
ホワイト帝国の宮殿はとても広い敷地の中にいくつも点在している
政務を行う宮殿や皇帝が住まう居城、迎賓館に後宮、離宮…などなど、用途に応じていろいろな建物が点在していた
なので場所によっては、正門から入り目的の建物までかなりの時間を要するような宮殿もある
中央の宮殿は政務を執り行う場所で、その宮殿より更に奥には神殿があった
まだ近い方だ
今日は神殿で前皇帝と前皇太子の追悼の儀式が行われていた
斎場の左側の最前列には現皇帝のレイモンドと娘のパトリシア、そして婚約者のジェシカが座っている
通路を挟んで右側の最前列にはスザンナ前皇后とアンドレアス皇子、そして前皇帝の弟であるジェフェリー大公と妻のティファニー大公妃、更にデイヴィット小公子、ヴィクトリア小公女と続いている
2列目には前皇帝の皇妃達とその子供達が座っていた
儀式は厳かに進んでいた
だが儀式が中盤に差し掛かった頃だろうか
男性がジェフェリーの背後から近づくと、そっとジェフェリーに耳打ちをした
ジェフェリーは近づいて来た男性に手で合図をして下がらせる
その後は何事もなく、儀式は終了した
式の最中に何かを告げに来るなんてよほどの事があったんだろうと考えていたら、ジェフェリーはすぐに何処かへ行ってしまった
アンディ達はこの後、皇帝陛下と共に夕食を取る予定になっている
まだ夕食まで時間もあるので、スザンナとアンディはそれぞれ来客用の部屋に戻った
式の最中に何があったのだろう?
アンディは気になり、移動魔法でウィリアムズ邸へと移動した
人目に付くといけないと思い、中庭に移動して、しばらく待っているとデイヴとヴィッキーが表れた
「アンディ、どうしたの?」
ヴィッキーは驚いた表情だ
だがデイヴはわかっているようで
「父上がどうされたか気になったんだろ?」
とニッコリ笑いながら言われてしまった
「夕食まで時間もあるし、暇だったから…
ジェフェリー大公はどうしたのかなって気になって…」
アンディはバツが悪そうに答えた
「私達も詳しくは聞いてないんだけど…」
「ジェイムズ皇太子に呪いの薬を飲ませていた女…
アヤカ・ロン・デニスだったっけ?
そいつが逃亡したらしい」
アヤカを捕らえた時ヴィッキーはその場にいなかったので、あまりよく知らないだろうと思い、デイヴが代わりに教えた
「逃亡!?」
アンディは驚いた
罪を犯した貴族を投獄する『西の塔』という場所がある
そこに投獄された者は生きてそこから出る事は出来ないと言われている場所だったからだ
「どうやって!?」
アンディが更に聞くが
「俺達もそこまでしか聞いてないんだ
父上が帰ったら聞けるだろうが…」
「亜空間での忠告はこの事だったのかな?」
アンディはホワイト帝国に来る前に、誰かわからない女性に亜空間で「気をつけなさい」と忠告を受けていた
そしてこの脱走だ
タイミングが良すぎる
だが関係があるかもわからない
「あの女が脱走したからって何か危険がある訳じゃないけど…確かにタイミングがな」
デイヴも不安そうな顔になる
「とにかく父上に話しを聞いてからだな」
デイヴの意見で、とりあえずは解散となった
♪♫♬ ♬♫♪
アヤカは罪人として西の塔に投獄されていた
投獄と言っても貴族なので、広い部屋に閉じ込められているようなものだ
ただ、部屋の窓には外側に鉄格子が、ドアは鉄格子と頑丈なドアの2枚建てとなっている
侍女もいないので、全てを一人でしなければならない
いったいどこで間違えたんだろう?
ノーマルモードしかやっていなかったので、このハードモードの世界がわからなかった
アヤカは何度も父に手紙を出し、自分は無実でルシル・アン・ネルソンに騙されたのだと訴えた
父親からは何とか手を打つと返事は来たが、なかなか釈放されない
そうこうしているうちに、皇帝と皇太子が亡くなりアヤカの立場は更に悪くなった
そしてアンドレアス皇子ではなく、レイモンドが皇帝に就いたと聞かされた
ゲームでは登場すらしていないキャラだ
そして最近、一緒に皇太子妃選別に参加したジェシカ・ルィーズ・ガルシア侯爵令嬢が皇后になると聞いた
皇后は本来なら自分だ
何故ジェシカ!?
何故、自分は投獄されている!?
しかも毒を渡したルシルには何の制裁も科されていない
アヤカは毎日、手紙を父親と新皇帝、そして高位聖職者や知り合いに送った
だが何も変わらない
アヤカはイライラしていた
このままここに閉じ込められていては、ジェシカに皇后の座を奪われてしまう
何とかしなければ…と考えていた
そんなある日、ドアの向こうで何か激しい物音がしたと思ったらドアが開いた
鉄格子を挟んで向こう側にフードを被った人間が立っていた
手には剣を持ち、その剣には血が付いている
そしてそのフードの人物の足元には騎士が二人倒れていた
「アヤカ・ロン・デニスか?」
フードの人物が尋ねた
声から男だとわかる
「そ、そうよ
あなたは?」
アヤカは怯えた様子を出さないように答えた
「お前を連れ出せと言われた
一緒に行くならば、この鉄格子を開ける
行かないならば、俺はこのまま去る」
男はぶっきらぼうに言う
「誰に頼まれたの?
お父さま?」
いきなり表れた男を信用する訳にもいかず、アカヤが聞く
「行くか行かないかだけだ
そして俺はここにはもう二度と現れない」
怪しすぎる
だが二度と来ないとも言う
今アヤカが残れば、騎士の遺体を見て、更に警備の厳しい場所に移されるかもしれない
そうなれば本当に出る事はできなくなる
「…行くわ」
アヤカは決心した
アヤカの返事を聞き、男は騎士から奪った鍵を使い、鉄格子を開けるのだった
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