46話 追跡
ウィリアムズ邸に戻ると、フレッドは部屋に籠り、アヤカから押収した小瓶を眺めていた
呪いを掛ける為にルシルになりすまして宮殿に潜入し、揺動作戦としてお茶会を利用した
我々がそちらを調べている間に、魔法使いは皇帝を呪う為の怨念を集め、皇太子にはアヤカを利用して正気を失う呪いを摂取させた
我々がネルソン邸に近づいた時が魔法使いに近づいているという合図になり、魔法使いはそれまで準備した呪いを発動させる
そしてこちらがネルソン邸を探っている間に姿を消した
この小瓶も調べるだけ時間の無駄だが、調べない訳にもいかない
その間に呪いを掛けた魔法使いはどんどん遠のいていくだろう
ここまで完璧な、しかも呪いを使う魔法使いは一人しかいない
フレッドにはこの魔法使いに心当たりがあった
「流石だね」
フレッドはため息を吐いた
少々、時間が掛かるが追跡するか
フレッドはそう決めると、椅子に座ったまま目を瞑った
波ひとつない水面に一滴の水を落すと水面に波紋が広がるように、フレッドは魔法の感覚を広げた
まずは宮殿とネルソン邸でその魔法使いの痕跡が見付かる
その後、波紋は広がるが痕跡はない
まだ波紋を広げる
やっとひとつ痕跡を見付けた
だがこれは移動魔法でも使ったような痕跡だ
フレッドは目を開けると、使い魔の鳥を出した
鳥は羽ばたくと、壁をすり抜けて飛んで行く
今、見付けた痕跡の場所に使い魔を送り、次は使い魔を中心に波紋を広げる
これを繰り返して、魔法使いを探すのだ
「時間が掛かりそうだな」
フレッドはやれやれといった感じだった
♪♫♬ ♬♫♪
翌日ジェフェリーは登城すると、すぐにスザンナの執務室を訪れた
スザンナには昨日の出来事は話してある
ジェフェリーが執務室に入ると、そこにはアンディとフレッドが執務用の机に居るスザンナの左右に立っていた
アンディはスザンナと共に離宮から帰って来た事になっているので、昨晩から宮殿に帰っていた
フレッドは移動魔法を使い、訪れていた
「スー、皇帝陛下と皇太子殿下の様子は?」
ジェフェリーは部屋に入るなり聞いた
「皇帝陛下は少し眠ると悪夢で目を覚まして逃げ惑っていらっしゃるわ
日が昇っても、眠れば悪夢を見るから眠れずにお疲れの様子です」
スザンナは米噛みを押さえた
「皇太子殿下は?」
ジェフェリーは続けて聞いた
「ジェイムズは目を覚ますと、狂ったようにアヤカを求めて大暴れしたわ
食事をさせようとしても、獣のように暴れて手が付けれないので、こちらは医師が処方した睡眠薬で眠らせたわ」
皇帝は眠れずに弱っていく
皇太子は食事を取らずに弱っていく
ジェフェリーはため息を吐いた
そしてフレッドを見ると
「フレッド、ハッキリ言ってくれ
皇帝陛下と皇太子殿下に掛けられた呪いを解く方法はあるのかい?」
と聞いた
フレッドは寂しそうに
「無理だ」
とだけ答えた
アンディはまだ信じられなかった
「師匠!呪いを掛けた魔法使いを見つけて魔法を解いてもらえば助かるのではないですか?」
一縷の望みを掛けてアンディが聞いた
だがフレッドは首を横に振り
「魔法使いを探してこのホワイト帝国に連れ戻すまで、皇帝と皇太子が持つとは思えないよ」
フレッドの言葉に全員が黙ってしまった
「ジェフ」
スザンナが口を開いた
「最悪の事態を想定して行動しましょう」
スザンナの言葉にアンディとジェフェリーが息を呑んだ
「二人が亡くなった後、次の皇帝を誰にするかだけど…
アンディは既に皇族離脱の許可を得ているわ
そうなると、次は第一皇妃の子供であるレイモンドになるわね」
身分を重視するホワイト帝国なので、確かにそうなる
「そうなるね
レイならば皇帝としての資質も十分にある
問題ないと思うよ」
ジェフェリーも賛成した
次にスザンナはフレッドを見た
「フレッド、貴方は魔法使いを探して
無駄かもしれないけど、お願いするわ」
フレッドは作り笑いを浮かべると
「ああ」
と返事をした
「ジェフ、私は既に皇帝陛下から離婚されているので、もはや皇后ではないわ
貴方に全てを任せなくてはいけないけど、頼むわね」
ジェフェリーは両肩に大きな石でも乗ったかのような重圧だった
だが進むしかない
「やってみるよ」
ジェフェリーはそう言うと、執務室から出て行った
スザンナはアンディを見ると
「アンディ、聞いての通り私は離婚されたのでこの宮殿を出なくてはならないの
貴方はどうしたい?」
「僕は…」
こんな時に言っていいかわからなかったが、とにかく自分の意志を伝えなくてはと思った
「僕はライシャワー公国へ行き、もっと魔法を学びたいです」
アンディの返事を聞くと、スザンナはニッコリ微笑んで
「私は反対はしませんよ
しっかり学んで、立派な魔法使いになってね」
「はい」
そして次はフレッドを見ると
「フレッド、アンディを頼むわね」
とお願いした
「うん、大丈夫だよ」
フレッドも笑顔で答えた
♪♫♬ ♬♫♪
ホワイト帝国で呪いの魔法が使われて数日経った
切り立った崖から長い銀色の髪を風になびかせて、遠くに見える海を見つめている人がいた
ホワイト帝国で皇帝と皇太子に呪いを掛けた女だ
女はふと何かに気付いたように上空を見上げた
雲ひとつない空に鳥が一羽飛んでいる
女はフッと笑うと腕を伸ばした
すると上空を飛んでいた鳥はゆっくりと降りて来ると、女が伸ばした腕にフワリと留まった
フレッドの使い魔だ
「流石ね、フレッド
よく私を見付けたわね」
フレッドは使い魔の目を通して女を見ていた
彼女を探す為に随分使い魔の魔力を使ってしまったので、使い魔はもうすぐ消えるだろう
「今回の呪いはどうだったかしら?」
女の方も、使い魔がかなり弱くなっている事がわかっているので、使い魔が巻紙になる事も出来ないとわかっていた
「これでホワイト帝国も少しはマシになるんじゃないかしら?」
女はふふっと笑った
「貴方も言いたい事は山のようにあるでしょうけど、しばらく私は身を隠すわ
貴方のお小言なんか聞きたくないからね」
女がそこまで話すと、使い魔はフッと消えてしまった
女は腕を下ろすと
「もう、せっかくここまで来たのに、また最初から移動のやり直しになったじゃない」
とブツブツ文句を言うのだった
ご精読、ありがとうございます
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次話もよろしくお願いします!
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