35話 密偵
ヴィッキーの一言で混乱した場だったが、ようやく落ち着いてきた
アンディは自分の気持ちを話し始めた
「僕はもっと魔法を勉強したいのです
ヴィッキーにも話しましたが、ライシャワー公国に移り住んで、魔法を学びたいと考えてます」
アンディの話しにフレッドは驚きを隠せずにいた
「そうなるとヴィッキーにライシャワー大公家を継いでもらわなきゃ」
ティファニーが左手を頬に当てながら言った
フレデリック大公はアンディが望むのであれば、何でも協力するつもりだった
だがアンディが自分の大公家に来てくれるとは思ってもみなかった
「アンディはそれでいいのかい?
…その…僕と一緒に暮らすという事になるんだよ?」
「フレデリック大公が父とはまだ実感出来ませんが、師匠としては尊敬しています
…時間が掛かるかも知れませんが、少しづつ受け入れて行きたいと思ってます」
フレッドは泣きそうになってしまった
今回の訪問を終えてアンディがホワイト帝国に帰ってしまえば、アンディとはもう二度と会えないかもしれないと考えていたのに…
「そうなるとデイヴにウィリアムズ家を継いでもらう事になるね?」
ジェフがデイヴに聞いた
デイヴはどちらの家とは考えていなかったので、ヴィッキーがライシャワー家を継ぐと言うならば、それに異存はない
アンディにとっても、ライシャワー公国で魔法を学ぶ事は良い事だし、何と言ってもフレッドとアンディは親子だ
色々あるが、やはりアンディとフレッドはもっとお互いを知る時間が必要だと思っていた
なのでこの選択は間違っていないとデイヴは考えた
「僕は構いません
ソフィは僕に付いてくると言ってくれてましたし、ソフィも大丈夫と思います」
「凄いわね!
いっぺんに2人の結婚話しが進んだわね!」
ティファニーが楽しそうに言った
「どうせなら一緒に結婚式も挙げちゃえば?」
えっ!?
「それ、いいわね!」
ヴィッキーが賛成する
「いや、でもホワイト帝国かライシャワー公国のどっちで、とかで問題になるよ」
ジェフが言う
「ミッチェル侯爵は僕が丸め込むよ!」
フレッドは楽しそうだ
「でもイロイロ問題が…
ミッチェル侯爵も何と言うか…」
とデイヴも困惑している
ヴィッキーとティファニーとフレッドはお気楽タイプで、デイヴとジェフェリー大公は慎重タイプだな
自分はデイヴタイプか…とアンディは再び混乱した場で冷静に傍観していた
♪♫♬ ♬♫♪
ホワイト帝国ではエマ・ケイト・トンプソン辺境伯令嬢が侍女からの報告を受けていた
後宮でのアヤカの調査は自分でも出来るが、アヤカの実家であるデニス伯爵家の調べは侍女に頼んでいた
この侍女もエマの侍女としてトンプソン家から一緒に後宮に来てはいるが、実は密偵専属の人間だ
この宮殿には父であるトンプソン辺境伯の密偵が数名、すでに潜入している
だが後宮となるとなかなか潜入が難しいので、今回は密偵専属の女性を連れて来たという訳だ
「デニス伯爵に怪しい動きは認められませんでした
強いて言うならば、デニス伯爵はアヤカ嬢の皇太子妃選別の参加を反対していたそうです」
「アヤカさまご本人が選別に志願したと?」
「はい」
アヤカはこの妃候補の中では一番、皇太子妃に執着しているように見える
「ではネルソン伯爵家は?」
エマがルシルの実家であるネルソン家の事を聞くと、侍女は申し訳ないような顔になった
「実は…ネルソン伯爵邸には侵入すら出来ていないのです」
「侵入出来ない?」
エマは信じられなかった
密偵専属の人間が、たかが首都に住む伯爵邸に侵入出来ないなんて
侍女は報告を続けた
「恐らく魔法で結界のような物が張られていると思われます」
魔法!
ここで繋がったか!?
「結界で侵入を阻まれたのならば、向こうはそれに気付いてますね」
エマはこちらが探っている事に気付かれたのはまずったな、と考えた
しかも相手が魔法使いとなると、これからの調査では普通の手段が取れない
だが幸いな事に、ジェフェリー大公の奥方はライシャワー公国の元公女だ
魔法使い相手でも、こちらも魔法使いを借りる事が出来るだろう
エマは自身でルシルも調べていた
たがルシルにアヤカのような怪しい動きはない
だがアヤカを使っているならば…?
狙いは皇太子か?
更に皇帝までも狙っている?
エマはここまで考えて一息き吐いた
その事を考えるのは父やジェフェリー大公だ
自分は自分の役割を果たさなくては
「ネルソン伯爵邸の話しを父上にも報告を」
「はい」
これで何かしら父から指示が来る
自分はジェフェリー大公に報告しなければ、と考えた
♪♫♬ ♬♫♪
アンディはフレッドの私室を訪れていた
フレッドはアンディをソファへと案内し、アンディはソファに座ると
「クラリスさまの下で修行をしていて、水の妖精と風の妖精に会いました」
と話した
フレッドは驚いた
「テウスとフィードに会った!?」
「あ、いえ
正確には、彼らが僕の夢の中に表れました」
アンディはそう言ってから
「テウスとフィード?」
と聞いた
「名前を聞いてなかったのかい?
水の妖精がテウスで、風の妖精がフィードだよ」
フレッドが微笑みながら教えてくれた
「夢の中で会えたのは一度きりでしたし、途中で僕が目覚めてしまったもので…」
アンディは残念そうに言った
「きっと彼らも残念がっているよ」
フレッドは残念がるアンディを慰めた
「今、ここに彼らはいないのですか?」
アンディが聞くと
「彼らは自然と共にあるんだ
だから街中にあるこの屋敷には来ないよ」
今度はフレッドが残念がる
「たまに用がある時には庭園で彼らを呼び出したりするけど、すごく怒られるよ」
妖精に怒られるんだ
アンディはそれすらも、凄いと思えてしまう
「この現実世界で彼らと会えるように頑張ります」
アンディがニッコリと微笑んだ
フレッドはこれからもアンディの成長を見れる事が嬉しくて
「うん、僕も協力するよ」
と満面の笑みで答えた
ご精読、ありがとうございます
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