32話 妖精
アンディはまたあの夢を見ていた
水面に立ち、辺りを見渡す
そして腕を伸ばすとフワリと何が手に触れた
そのまま腕を伸ばしていると、今度は薄っすらと手が現れた
手首より先だけだが、人の手だ
細く華奢なので女性の手のように見えた
アンディの指とその手の指が触れる
すると少しづつ見える範囲が増えて来た
腕が見え、そして肩が見え…少しづつ人の形になってきた
時間をかけてゆっくりと人の形が現れる
真っ白な女性だった
顔も髪も、着ている服も全て白だ
閉じていた目を開くと、瞳だけは水色をしていた
ヴィッキーやデイヴやフレッド大公と同じ瞳だ、とアンディは思った
『ようやく会えた』
白い女性がそう言った
「貴女は妖精ですか?」
『そう、人間にはそう呼ばれている』
女性が喋る度にフワリと温かい風が起きる
「風を司っているのですか?」
『そうだ』
自分は水の属性が強いので、てっきり水の妖精だと思っていた
『その考えに間違いはない』
突然、後ろから声がした
『お前はまだ弱い
ここはお前の意識の中だ
お前の考えは我々に伝わる』
すると今度はアンディの後ろで足元の水がどんどん人の形になっていった
薄い水色をした男性だ
髪は身体よりは濃い水色をしている
服も薄い水色だ
目を開けると、瞳は深い紺色をしていた
自分とよく似た瞳だ
「貴方は?」
『俺は水を司る者だ』
そう言うと、突然アンディにガバッと抱きついた
アンディは何が起きたか分からなくなり「えっ!?え?」となっている
『この子はフレッドに近い
俺のものだ』
『私も気に入っている』
最初に現れた風の妖精がアンディの腕を掴む
『お前にはクラリスがいるだろう』
『そう言う貴方にはフレッドがいるでしょう』
2人でアンディの取り合いになっている
「ちょ、ちょっと!」
とアンディは2人を止めた
「よくわからないのですが…」
風の妖精と水の妖精はアンディを見つめて
『そうね』
『お前がなかなか定まらずに近づけなかったから、嬉しくなってしまっていた』
2人の妖精は反省した
♪♫♬ ♬♫♪
「つまり僕がまだ上手く魔法を使いこなせていないので、僕の夢を使って会いに来たと?」
『『そう』だ』
「そうなんですね…
ありがとうございます」
アンディがお礼を言うので、2人の妖精は目をパチクリさせた
「嬉しくて…
僕が魔法使いというだけでも嬉しいのに、妖精まで会いに来てくれるなんて」
『そんなに喜ばれると、こっちも嬉しい』
妖精達は微笑んだ
「僕、お二人と夢じゃなくて現実世界でも会えるようにもっと頑張ります!」
『そうだな、頼むぞ』
「はい!」
そう返事をしたと同時に目が覚めた
アンディは部屋のテラスでうたた寝をしていたようだが、椅子から落ちていた
床に座り、右腕を椅子に乗せた体制で考えた
いつもなら目が覚めると夢を思い出せないのに、今日はしっかりと覚えている
「…妖精…」
そう呟くと、アンディは勢いよく立ち上がり、部屋から飛び出して行った
向かったのはクラリッサの部屋だ
アンディはノックもせずに、クラリッサの部屋のドアを開る
「クラリスさま!!」
部屋にはクラリッサが椅子に座り、眼鏡を掛けて本を読んでいた
いきなり入って来たアンディに驚く事もなく
「会えたのかい?」
と笑顔で聞いた
♪♫♬ ♬♫♪
「そうか、あの2人に会ったのかい」
クラリスは笑っている
「クラリスさまは、あの2人をご存知なんですね?」
「ああ、特に風の方に気に入られているようだ」
そう言えば、2人の会話でそんな事を言っていたな
「あの2人は仲が良いのか悪いのか…
とにかくいつも一緒にいるよ」
「クラリスさまはこちら側で会えるんですね?」
アンディにそう聞かれると、クラリッサはチラリと窓の方を見る
アンディもそれに気付いて、クラリッサの見つめる窓を見る
何もいない
「そこにいるんですね?」
「ああ
早くお前が見えるように、ビシビシ扱けと言っているよ」
アンディは見えないが、窓に向かって
「頑張るよ」
と微笑んだ
「妖精の話しはデイヴ達に、してはいけないよ」
そういえばフレッドもそんな話しをしない
何故だろう?と不思議になった
「何故ですか?」
「見たい、会いたいが先走ってしまい、魔力が暴走する人もいる
その人の魔力がその域まで到達すれば、妖精とは自然に会えるものだ」
なるぼど
焦って自滅しないようにしているのか
だがアンディはふと思った
「僕はデイヴやヴィッキーのように魔法を操れていません
でも何故、彼らと会えたのですか?」
「確かにお前は魔法使いとしてはまだまだ未熟だ
だけど、持って生まれた魔力が大きい為に、妖精達が興味を示したんだよ」
「ではフレッド大公も?」
「そうだね、あの子が子供の頃から妖精達は興味を示していたよ」
そんなフレッドの魔力を受け継いだのか…
アンディはフレッドが自分に魔法を学ばせる為に、意を決して父親である事を告白したんだろうな、と思った
「クラリスさま
僕はまだ魔法使いと言える程ではないありませんが、妖精やフレッド大公の為にも頑張ります」
クラリッサは愛おしむような眼差しで
「そうだね
私も手伝うよ」
「ありがとうございます」
アンディとクラリッサは微笑みあった
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