30話 朧気
クラリッサの屋敷は森を切り開いた場所にある
そこから少し離れた所に池があり、アンディ達は池の辺りに来ていた
アンディは池の辺りの草むらに
「疲れた〜」
と言って仰向けになった
フレッドは主に魔力の流れを教えてくれたが、クラリッサは精神面を教える
神経を集中させるが、まず自身を確立した上で他の事もする
神経を二分三分するので、本当に疲れるのだ
「上手くなってるわよ」
隣に座っているヴィッキーに言われた
「でもデイヴやヴィッキーみたいに上手く出来ないよ」
ヴィッキーの隣で座っているデイヴが
「俺達は10年以上、練習してるんだ
いきなりアンディに追いつかれたら、そっちの方がショックだぞ」
確かにそうだ
「もっと早くに魔法を学べたら良かったな」
アンディは本当に残念だった
「魔法はね修行の長さもあるけど、やっぱりどれだけ真剣に取り組むかで変わると思うの
だからアンディも、決して私達に追い付けない訳じゃないと思うわ」
「そうかな?」
「覚醒が遅い人でも、大魔法使いになった人だっているよ」
アンディは魔法もそうだが、本来魔法学校で学ぶ、そのような歴史や知識、妖精の事や薬草の事…それらも学びたい
「僕、ライシャワー公国でもっともっと学びたいよ」
「そうね
大丈夫!時間は一杯あるわ」
ヴィッキーはニッコリと微笑んだ
アンディは妖精祭りの時にライシャワー公国に移住したいとヴィッキーに話した
ヴィッキーはずっと一緒に居てくれて、そして教えてくれるだろう
「そうだね」
アンディもヴィッキーを見つめて微笑んだ
3人でゴロンと横になってお喋りをしていたが、まずアンディが寝てしまった
「やっぱり疲れるのね
寝ちゃったわ」
ヴィッキーが笑いながら言う
「少し寝かせてやろう」
デイヴがそう言うので、ヴィッキーは魔法で本を召喚して読み始めた
デイヴも目を閉じると、しばらくしたら寝息になった
アンディはまた同じ夢を見ていた
一面が広い湖のような所で、水面は空と雲が映っている
遥か彼方まで続いているので、空と湖の境い目がわからない
湖は浅いのか、アンディは踝辺りまで水に浸かっていた
暖かい風がそよそよと流れるので気持がいい
アンディは周りを見渡すが、360度同じ風景だ
背後に誰かいるような気がした
振り返るが誰もいない
でもしばらくすると、また誰かいるような気がした
何だろう?
アンディは手を伸ばす
何かある訳ではないのに、何故か手を伸ばした
すると手にフワリと風が触れた
また別の方向に手を伸ばす
また手にフワリと風が触れた
次に手を伸ばすと、うっすらと人の手が現れた
手首からしか現れていない
その手とアンディの手が触れた
ガバッとアンディが飛び起きたので、ヴィッキーは驚いた
「どうしたの?アンディ」
ヴィッキーが声を掛けると、アンディは額に手を当てながら
「何か…夢を見たんだ
どんな夢だったか思い出せないけど…」
アンディはぼーっとしている
まだ目が覚めきっていないようだ
ヴィッキーはクスリと笑うと
「屋敷に帰ってゆっくりしましょ」
と声を掛けた
「…うん」
何だろう?
夢を思い出せないけど、誰かと会ったような…?
記憶が朧気だ
アンディは目が覚める程、夢の記憶は遠のいて行った
♪♫♬ ♬♫♪
ホワイト帝国の後宮では、今日も昼間からジェイムズ皇太子がアヤカの部屋を訪れていた
アヤカはベットで仰向けになっているジェイムズの上に乗っている
ジェイムズは両手でアヤカの胸を触っていた
アヤカはジェイムズに顔を近づけキスをする
ルシルからもらった惚れ薬をジェイムズのお茶に数滴混ぜて飲ませた後、愛しあう
相手とどれだけ愛し合ったかで効果が違ってくるらしい
激しく愛し合えば愛しあう程、薬を服用した者はその相手にのめり込んでいくのだ
ジェイムズはアヤカを抱きしめるとゴロンと転がり、今度は自分が上になる
ジェイムズの動きが激しくなり、そして絶頂を迎える
アヤカとジェイムズは1日中何回もそれを繰り返す
ようやく少し落ち着いて、2人は横になっていた
アヤカはジェイムズに
「私を皇太子妃にして下さいませ」
と囁く
「そうだな」
ジェイムズはそう答えると眠ってしまった
これを何度も続けるのだ
すると薬の効果で、相手の言いなりになってくるらしい
皇后が帰ってくれば、他の妃候補達も帰って来る
だがそれまでにジェイムズ皇太子を薬で完璧にアヤカに夢中にさせれば、ほぼ勝敗は着いたと言っても良いだろう
皇后と共に離宮にいる他の妃候補達を襲わせた事がバレても、ジェイムズに自分を守らせる事も出来る
アヤカは眠るジェイムズの耳元で
「明日も来て下さいませ」
と言うと
「わかった」
と眠っているジェイムズが返事をするのだった
♪♫♬ ♬♫♪
アンディは少しづつだが、クラリッサの修行に慣れてきた
散歩をしながらでも、鷹に球体を追わせる事も出来るようになってきた
クラリッサと池まで来ると、アンディはここで見た朧気な夢の事を考えた
思い出したいのに思い出せない
何とももどかしい感覚だ
己を保ちつつ、鷹に球体を追わせ、このもどかしい感覚も感じる
随分、成長していた
「アンディは妖精を信じるかい?」
突然クラリッサが聞いた
「はい
今は見る事がほとんどないと聞きましたが、今でも居ると思います」
「そうだね、妖精は今でも存在するね」
「何故、昔ほど見なくなったのですか?」
クラリッサは池の辺りまで来ると足を止めた
「昔の人間は今ほどの文明を持っていなかったからだ
文明が栄える分、人間は魔法を手放していく
だから妖精との世界が遠くなるんだよ」
「今では妖精と会える人間はいないという事ですか?」
「稀にいる」
「どのような方ですか?」
アンディが興味津々で聞く
「妖精に近い存在の人間だ」
「近い存在?」
「妖精は魔法を使う
人間でも妖精と同等の魔法を使えれば、妖精と会う事が出来るね」
アンディは少し考えて
「クラリスさまは妖精と会えるのですか?」
と聞いた
「会えるよ
私の他にフレッドも会えるよ」
驚いた
まさか目の前の人と、フレッドが妖精と会える人間だとは思ってもいなかった
だが確かにクラリッサとフレッドは魔法使いの中でも群を抜いている
「すごい…!本当に妖精と会えるなんて!!」
アンディは感激した
「お前もそれに近づいているのは解っているかい?」
え?僕が?
アンディは驚くのだった
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
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