26話 休憩
大きな机に山積みされた書類がいくつもある
その机にはジェシカ・ルイーズ・ガルシア侯爵令嬢と、その向かいにはレイモンドが座っていた
2人は黙々と書類に目を通している
スザンナ皇后の仕事の下準備をしているのだ
今はスザンナ皇后が来客中なので、今のうちに進めれるだけ進めれば、皇后の仕事も少しは楽になるはずだ
レイモンドはふーっとため息をして腕を延す
「少し休憩にしましょう
お茶でも飲みますか?」
そう言われ、ジェシカも持っていた書類を机に置くと
「はい」
と返事をした
レイモンドが席を立つので、ジェシカも席を立つ
「僕が準備してきますから、ジェシカ嬢は休んでいて下さい」
ジェシカはレイモンドがそう言うと思っていた
「そういう訳には参りません
レイモンドさまがご準備なさるのならば、私もお手伝いさせて頂きます」
レイモンドはとにかく自分で何もかもやろうとする
また、それが苦ではないタイプだ
だが、こんなに何でも自分でやっていてはレイモンドが体を壊してしまう
ジェシカは少しでもレイモンドの手伝いをして、彼を休ませてあげたかった
レイモンドもここ数日ジェシカと一緒に仕事をして、ジェシカは一度こうと言ったら曲げないタイプだとわかった
なので今もジェシカを止めても無駄なのはわかっているので
「では一緒に準備しましょうか」
と微笑みながら言った
侍女に温かいお湯とお菓子を持って来てもらう間に、レイモンドとジェシカはお茶の葉やカップを準備して、先程まで仕事をしていた机に運ぶ
机は大きいので、書類が山積みになっていない場所へ運んだ
ちょうど、侍女達もお湯の入ったポットとお菓子を持って来た
侍女とジェシカがそれらを机に並べている間に、レイモンドはお茶を煎れ始める
全ての準備が出来て、ようやく2人は席について休憩を取った
「先程の皇后陛下へのお客様はトンプソン辺境伯ではありませんでしたか?」
ジェシカが聞いた
レイモンドは流石だな、と関心した
「そうです、よくお分かりになりましたね
スザンナ皇后陛下はせっかく首都から出られたので、トンプソン辺境伯を呼ばれたのです」
「トンプソン辺境伯は首都を嫌っていらっしゃると聞いた事がありますわ」
「首都が嫌いなのではなく、皇帝がお嫌いなのです」
レイモンドは困ったような顔をした
「辺境伯は偏屈と噂されてますが、皇帝陛下がお嫌い故でしょうか?」
「かもしれませんね
トンプソン辺境伯がお守りになっている領地はライシャワー公国と隣接しています
ライシャワー公国は一夫一婦制で、トンプソン辺境伯の領地でもその考え方なのだそうです」
「そうなのですか」
ならばあの皇帝陛下の奔放ぶりは嫌っているだろう
だが、ふと思った
今回の皇太子妃の選別にトンプソン辺境伯の令嬢も入っている
一夫一婦制の考えのトンプソン辺境伯が令嬢を皇妃として差し出す?
「今回の皇太子妃選別に、エマ嬢が含まれていますが?」
レイモンドは苦笑いをして
「辺境伯との繋りを強固なものとする為に、外部からの圧力が掛かっているのかもしれませんね」
ジェシカはレイモンドがハッキリと返答しなかったので、きっと他の理由があるのだと思い、この話題はもう触れない方が良いと判断した
「近々、お嬢さまがこちらにいらっしゃると、皇后陛下から伺いましたわ」
レイモンドはジェシカが話題を変えてくれたので、関心した
察して、すぐに切り替える
あの皇太子にはもったいない
まるで今の皇帝と皇后のような関係だ
「はい、皇后陛下がお呼びになったのです」
「お嬢さまはお幾つになられたのですか?」
「もうすぐ3歳になります」
レイモンドは照れた笑顔だ
レイモンドは10歳の時に母である第一皇妃が亡くなってから、スザンナ皇后に育てられている
皇后にしてみれば、レイモンドの娘は孫のようなものだ
スザンナもとても可愛がっているらしい
レイモンド自身も娘をとても可愛がっていると聞いた事がある
奥様が亡くなられて再婚もせずに、お一人でお嬢さまを育ててるなんて、よほど可愛がっているのね
ジェシカはレイモンドの幸せそうな笑顔から、そう考えた
「あ、ジェシカ嬢のお好きなケーキをお取りしますよ」
本当にマメな方だ
マメすぎてジェシカは少々呆れた
♪♫♬ ♬♫♪
スザンナ皇后はトンプソン辺境伯と向かい合ってお茶を飲んでいた
いかにも戦士、という体格だ
茶色の髪と日に焼けた肌の色がよく似合っている
「皇太子は皇帝そっくりだそうだな」
「貴方のお嬢さんからの情報?」
スザンナはお茶を飲みながら睨んだ
「貴方の事だから、娘を宮殿に送り込み情報収集をさせているのでしょ?」
「わかってるじゃないか」
トンプソン辺境伯は長椅子の背もたれに片腕を乗せながら答えた
「だからあえてここには連れて来なかったけど…
エマはジェイムズを上手く躱してるの?」
「ああ、躱してる
あの皇太子が迫って来て自力で躱せない時は、俺の名を出して跳ね除けさせている」
「それで?
貴方はあのジェイムズをどう見るのかしら?」
「人の上に立つ器ではない
スーもあいつの幸せを願うなら、皇帝ではなく一介の貴族の方がいいと思うだろ?」
確かにそうだ
だが悪い事に、ジェイムズ皇太子は自分の権力を理解し手放す気はない
「どうしたものかしらね」
スザンナは頭を悩ませた
「それで?俺に頼みがあるそうだな」
スザンナはトンプソン辺境伯を見るとニッコリ笑って
「エマを借りたいのよ」
「エマを?」
「既に宮殿の探りを入れているのだから、ついでに何か掴んでいないかしらね?」
「何を知りたい?」
トンプソンはニヤリと笑った
「私が主催したお茶会で呪いが使われたの
宮殿で探りを入れているのならば、何か怪しい者などの情報がないかしら?」
「…ふむ…それは初耳だ
エマに伝えておこう」
「お願いするわね」
スザンナはニッコリ笑ってお茶を飲み干した
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