19話 出生
フレッド大公はギルバートに監視されながら、執務室で黙々と仕事をしていた
しばらくすると海の方からデイヴ達の魔力を感じた
「…何かあったのかな?」
フレッドが海が見える窓を見つめた
ギルバートはその窓に向かうと
「若君と姫さまとソフィア嬢ですね
海で何かあったんでしょうか?」
ギルバートが窓から海を見つめる
小さな魔法を何回も使っている
しばらく様子を見ていると、突然巨大な魔法が発せられた
海の方では閃光が走った
「「!!」」
フレッドとギルバートは驚いた
「誰の魔法でしょうか?」
ギルバートは海を見ている
だがフレッドには誰の魔法かは見当が付いていた
「ギル、何があったか見てきてくれ」
フレッドがそう言うと、ギルバートはジト目でフレッドを見ながら
「いいですけど、逃げないで下さいよ」
「わかってるよ」
フレッドがそう言うので、ギルバートは移動魔法を使って消えてしまった
やはり、この地にいるからすぐに覚醒してしまった
フレッドはふーっと大きなため息を漏らした
♪♫♬ ♬♫♪
東屋では4人が座っている
「アンディの魔法って事ですか?」
デイヴが聞いた
「そうだよ」
フレッドは笑顔で答える
「でも僕はホワイト帝国の人間です
皇帝陛下も皇后陛下も魔法使いではありません」
フレッドは苦笑いをしながら
「さて…どこから話そうかな」
と考えた
しばらくして
「スーはね、子供の頃は身体が弱くて、冬場はこのライシャワー公国で過ごしていたんだ」
フレッドが話し始めた
「何年も冬の間だけ滞在するから、僕達は友達になってね
そのうち僕はスーが好きになったよ」
えっ!?
3人の思考が同じ事を考えた
アンディはフレッドとスザンナ皇后の子供!?
いや、でもバカ皇太子がいる…
と3人が考えを巡らせた
「スーはね、幼い頃から皇太子妃候補だったから、僕の片思いだったけどね」
あれ、違った
せっかく考えたのにハズレだった
「スーがいよいよ皇太子妃候補として宮殿に上がる直前の冬に、スーに頼まれたんだ」
「母が…何を?」
「皇太子…つまり今の皇帝だね
その皇太子が自分に触れないように、魔法を掛けてくれって」
えっ!?
本日2度目の『えっ!?』だ
「でも兄上が…それに僕も」
アンディが困惑している
「今の皇帝は皇太子妃選別の前から数名の女性を側に置いていたそうだ
その中にスーの友人がいたんだけど、その女性が第一皇妃になってスーは皇太子妃に選ばれてしまった
その女性は皇太子をとても愛していたそうで、既に子供もいたので、スーはその女性が皇后に選ばれて欲しかったそうだ」
第一皇妃の子供となると、レイモンド・ダイドだ
確かに彼は、第一皇妃が亡くなってから皇后が引き取っている
「スーは第一皇妃を姉のように慕っていたそうだ
そしてスーは僕が掛けた魔法で皇太子との間に子供は産まれない
スーは第一皇妃の為に、第一皇妃の子供が次の皇帝になるように、2番目の子供を自分が産んだように見せかけたそうだ」
えっ!?
本日3度目だ
「でも皇帝陛下は叔父様の魔法で皇后陛下には触れられないんでしょ?
どうやって皇后陛下との子供だと思わせたの?」
ヴィッキーが聞いた
「ティフが催眠魔法を使って、皇帝にそう思い込ませたそうだ」
なるほど…恐ろしい
デイヴとヴィッキーは母の容赦ない魔法が恐くなった
兄上は皇后陛下の子供ではない!?
アンディは混乱した
「第一皇妃は2人目を産んだ後に、体調が悪くなって亡くなったんだよ」
いや、ここまでの話しでかなりの衝撃だ
まだアンディの話しにすら入っていないのに
「では僕は?」
アンディが恐る恐る聞いた
「第一皇妃の2番目の子供は皇太子として教育する為にスーから取り上げられたそうだ
スーは友人も亡くなり、その子供も取り上げられて寂しくなったのかな?
10日程、ウィリアムズ邸で休養するって名目だったけど、ティフに頼んでライシャワー公国に来たんだ
…その時、僕とスーの間に君が授かったんだよ」
全員、言葉を失った
「…僕は大公の息子…という事ですか?」
「…そうだよ」
フレッドは悲しそうな笑顔を作る
このまま親子の名乗りを上げずに、良好な関係でいたかった
「君は僕の魔力を受け継いてしまった
どうしても出生の話しをして、魔法を扱えるようにしなくてはいけないんだ」
「父上もご存知、という事ですよね?」
デイヴが聞いた
「知っているよ」
だからアンディを早くライシャワー公国へ行かせたかったのか
「でも何故、今になって魔力が覚醒したの?」
ヴィッキーが聞いた
「ライシャワー公国は土地柄なのか、魔法使いが産まれる
ここに居れば自然と魔力は覚醒するが、アンディはホワイト帝国にいたから、ずっと覚醒しなかったんだ」
「では、僕がライシャワー公国に来なければ覚醒しなかったと?」
アンディが聞いた
「いや、例えライシャワー公国に来なくても、いつか必ず覚醒はする
君の覚醒は放っておいてもしたよ」
魔力の強い魔法使いは、覚醒していなくても、その子供に魔力があるかないかは判る
ティファニーもデイヴィットとヴィクトリアに魔力があったから、幼いうちにライシャワー公国へ行かせたのだ
「アンディ
君が僕を受け入れてくれなくても、どうしても君には魔法の使い方を教えなくてはいけない
さっきも言ったけど、そのシルバーの髪は魔力の強さの象徴だ
君は僕の魔力を受け継いてしまったんだ」
アンディはまだ混乱していた
だが、自分が嫌悪していた父と兄とは血の繋がりがない事は有り難かった
「デイヴ、ヴィッキー
お前達がアンディの師匠になり、魔法の使い方を教えてくれ」
「いや、僕達よりも叔父上が師匠となるべきでは…」
デイヴがそう言う
だがフレッドはアンディがフレッド大公を受け入れてくれる事がないとわかっている
アンディは椅子から立ち上がると
「…すいません、今日はこのまま部屋に戻ります」
そう言ってヨロヨロと東屋から出て行った
「アンディ…」
ヴィッキーは後を追おうとしたが、デイヴに止められるのだった




