好きな歌があるのなら
あてどなく歩んで来た道は
ぬかるんで
水たまりは星を映す
足下で朧気に
光は揺れて
私はそれを飛び越えていく
そして
またあてどもない道を
あなたに
好きな歌があるのなら
その唇から絶やさずに
うたい続けなさい
息をひそめるよりは
ずっと
慰めになるから
そう教えてくれた人は
過ぎ去って
歌だけがここに
残っている
胸に巣食う夜は更けて
果てない夜明けを探している
どうしようもなくさ迷うように
歩き続けている
乾いた風は
後ろから吹く
濡れた星は
流れ落ち行く
吐息のような声で
うたい続けた
息をひそめるよりは
ずっと
慰めになるから
擦りきれて
擦りきれて
擦りきれるまで
辿るフレーズに
宿る熱があるのなら
あの時
慰められたかったあの人の
そばで夜明けを待っていてほしい