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彼との思い出(江戸川視点)

俺の人としてのプライドを捨てる代わりに・・・この痛みがなくなると思うと、簡単に捨ててしまおうかとふと思ってしまう。

でも・・・・、無理だ。俺はこいつに人生をあげるために今まで生きていたんじゃない。

あいつらを・・・殺すため・・・・。


厚い革製の鞭で何度も叩かれ、失神の直前まで追い込まれる。

すでに口からは泡が噴き出していて、意識が朦朧として、部屋が二重、三重にも見えてしまう。

叩かれるたびに、今までつけられてきた傷が一斉に燃えがるように痛む。


楽しそうに鞭を振る太宰を見て、俺は監禁する前の、刑事の皮を被った太宰の姿を思い出した。

途切れそうな意識と空想の中で、あの時の太宰の姿と、警視庁のデスクが現れる。


ーーーーーー


「はぁ・・・・はぁっっっ・・・・。」


思い出したのは、俺が太宰に初めて看病された日のことだった。

警視庁での会議が終わった後、急に気分が悪くなってフラフラとしていたら、本当に吐いてしまったところを最近仲良くしていた太宰に助けてもらったのだった(その後調べたらインフルだった)


もう真夜中だったから病院を大きな所しか空いておらず、あまり迷惑をかけたくなかったから、俺の家まで送ってほしいとだけ言うと、太宰の家に連れ込まれ、手厚く看病させられた。


冷やしたタオルをおでこに乗せられ、あったかい毛布をかけられる。

頭痛剤と風邪薬だけ飲まされ、安静にしといてくださいと言われた。


「いいよ・・・・これぐらい・・・・。」

「ダメですよ・・、あそこでぶっ倒れて死んだらどうしたんですか?」

「死なねーよ。」

「念には念をということです。」

「わかった・・・・、ごめん、迷惑かけて・・・。」

「いいえ、困ったときにはお互い様です。」


ホットミルクに蜂蜜を入れ、よくかき混ぜた後、俺の前に出された。

程よい暖かさが手に伝わる。


「簡単なものですが・・・、口に合えば。」


久しぶりか、初めてか・・・・。

甘い匂いのするホットミルクを口に入れる。

ふんわりとした甘さと温かいミルクが体の芯まで伝わっていく。


「美味しい・・・・。」


俺は反射的にこの言葉が口に出た。

最近仕事のストレスのせいで味覚というものが鈍くなってきた気がしたが、太宰のミルクティはなぜかすごく美味しく感じられた。

そういうと、太宰は笑みを浮かべた。


「よかったです・・・、やはり、体調が優れない時はあったかいものと、睡眠が何より大事です。

おや・・・咳は大丈夫みたいですね、熱は・・・・まだ高いか。

では、江戸川さん。おやすみになってください、風邪中の夜更かしなんてもってのほかです。」


「ありがとう・・・・あと、アキラでいいよ・・・・。」


「・・・アキラさん。おやすみなさい。」


毛布を掛け直され、ホットミルクのお盆を持ち、彼は部屋を出た。


・・・・こんなに、誰かに優しくされたのは久しぶりだった。

両親もいない、恋人を作る時間もない、告白はされるが仕事が優先と頭に浮かぶ・・・・。

帰ったら猫が迎えてくれて、ソイツにいつも癒されている始末・・・・。

だけど・・・太宰は・・・今まで感じたことのない温もりをもたらしてくれる。

なんでだろ・・・・。


「・・・・・ミルク、おかわりもらってとけばよかった・・・。」


そう思い残しながらも、俺は睡魔と熱に負けて眠りに入ってしまった。


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