王女との晩餐
今年の投稿は本日、12月25日を最後とさせていただきたいと思っております!
また、来年の投稿は1月4日(月)より再開させていただきますので、どうぞよろしくお願いします!
今年もありがとうございました!
謁見の間を後にした五人のうち、『夕食をお部屋まで運ぶよう手配してまいります』と口にして、厨房のある方向へ消えていったノエルは別としても──。
「クラリア、本当に一緒に食べないの?」
どうやら、クラリアもリスタルたちと夕食をともにするつもりはないらしく、それについてリスタルが再確認するように問うと、クラリアは首を縦に振る。
「……ハキムを始めとした部下たちは今も動いておりますから。 私だけが食を楽しむわけにはいきません」
それもその筈、今こうしている間にも一番隊から三番隊まで約百名ほどいる騎士たちが通り魔の対策や捜索で忙しなく働いているというのに、そんな騎士たちの長たる自分だけが悠々と豪華な食事を楽しんでいたのでは面目が立たない──と考えての固辞であった。
「そう……分かった。 それじゃあ次の機会にね」
「えぇ、ぜひとも」
リスタルは心から残念がっていたが、『仕事なら仕方ないよね』と素直に彼女を送り出すと同時に次の約束をし、それを受けたクラリアは笑顔で了承する。
左に進めばリスタルの自室が、そして右に進めば城下町へと繋がる大門がある三又路に差し掛かった時。
(……リスタル様を頼む)
「「……」」
クラリアはリスタルに深く頭を下げて右の道へと歩みを進めつつ、リスタルに届かないほどの小声で『何もないとは思うが』と考えたうえで頼み込み、それを受けた双子は特に言葉を発す事なく首肯してみせた。
その後、大門の方へ足早に消えていくクラリアを見送った三人は、リスタルの案内で彼女の自室へ赴く。
「さぁ、ここが私の部屋よ。 ゆっくりしていってね」
リスタルの自室は、いかにも王族の個室といった絢爛かつ広々とした造りとなっており、そこらの王都民が暮らす二階なしの一軒家として見ても豪華すぎる。
いつも彼女が寝ているのだろうベッドには半透明な天幕が掛かり、そこに敷かれている純白の布団は一体どれだけ触り心地が良いのか想像もつかないほど。
王城に足を踏み入れた時もそうだが、およそ王族という存在との縁がなかった双子であっても、いかに高貴な身分に置かれているのかを理解せざるを得ない。
ただ、フェアトは一つだけ気になる事があった。
(……窓が、ない……?)
そう、この部屋には一つたりとも窓がないのだ。
とはいえ別に、フェアトとしても『窓が一つも存在しない部屋』自体を珍しがっているわけではない。
王族たる者、証拠を残さぬような命を狙われる事だって決して少なくないだろうし、そういった事を未然に防ぐという意味でも窓がないのは理解できるから。
ただ、それだと国王陛下が最も顔を出す機会が多かろう謁見の間に、あれだけ巨大な天窓が設置されているのは何故か──という別の疑問が湧いてしまう。
この世界には、【飛】と呼ばれる属性に応じて自在に宙を移動する魔法も存在する為、狙い放題である。
尤も、その魔法を習得する事自体の難易度が非常に高く、もし習得したとしても長距離を飛ぶのがまた難しいという事実もあるゆえ問題ないのかもしれない。
魔導接合──延いては竜覧船は、その為に開発されたようなものなのだから当たり前ではあるのだが。
そんな事を考えているうちに部屋の扉が控えめにノックされ、リスタルが入室を許可すると幾人もの給仕が豪華な料理を綺麗なワゴンで次々と運び入れる。
肉、魚、野菜──多種多様な食材を活用しているのだろう料理に、スタークだけでなくフェアトまでもが珍しく目を奪われかけている中で、そんな双子を微笑ましげな視線で見つめていたリスタルが口を開き。
「……いつもより多いなぁ、これ食べきれるかな」
普段はこの半分もないんだけどと苦笑しつつ、『二人とも、たくさん食べる方?』と確認せんとする。
「私は大食いでもないですけど……この人が山ほど食べるので大丈夫だと思いますよ。 ね、姉さん」
それを受けたフェアトは、『おそらく自分は貴女と変わらないくらいの筈です』と答えて小食アピールをしたうえで、スタークの方へ視線を向けて『私の数倍は食べますから』と冗談混じりに声をかけたものの。
「お、おぉぉ……!」
当のスタークは妹からの事実込みの冗談など微塵も耳に入っていないらしく、リスタルの自室に置かれていた来客用の中くらいの円卓に並べられていく豪華にもほどがある料理の数々に感嘆の息を漏らしている。
「……姉さん? 聞いてます?」
そんな姉の様子に呆れてものも言えないという風に溜息をこぼしてから、『仮にも王族の前なのに』と考えて軽く諌めるような語調を持って問いかけた。
「……ん? あぁ、あたしに話しかけてたか?」
「……いえ、いいです。 そのままで」
すると、その声でハッと我に返ったスタークは妹の方へ視線を向けつつ、さも『何かを話しているのは気づいていた』とでも言い訳をせんばかりに首をかしげるも、それを看破していたフェアトは溜息をこぼす。
だが、その事について愚痴を吐いたりはしない。
──こういう自然体な姉が好きなのだから。
「ふふ、貴女たちって本当に不思議ね。 その顔立ちを見れば双子だって分かるけど、その性格も髪や瞳の色も何もかもが違う。 ねぇねぇ、本当に双子なの?」
「……さぁな」
一方、双子である筈なのに赤と青で瞳の色が違う事もそうだが、その口調や性格も正反対な二人にリスタルは心から興味を抱いて身を乗り出したが、そんな王女からの質問にスタークは興味なさげに返答する。
(完全に意識が料理にいってる……)
翻って、そのやりとりを聞いていたフェアトは姉が王女の方を向いてない事からも、もはや目の前の豪華な夕食しか見えていないのだろうと独り言ちていた。
「そっかぁ、まぁいいや。 それじゃ早速いただきましょう? ここの料理は絶品だし、しっかり味わってね」
「えぇ、いただきます」
「どれから食うかな〜」
しかし、そんなスタークの不遜な態度にもリスタルは機嫌を損ねたりする事もなく、『冷めたら美味しくなくなっちゃうもんね』と口にしつつ合掌し、それを見た双子も同じく合掌して夕食に手をつけ始める。
あの辺境の地にいた頃に母であるレイティアが作ってくれていた料理も、これらの料理に劣らぬくらい充分に美味しかったのは間違いないが、どうしても食材や器具で差が出てしまうのもまた事実である為に。
「うっま……あたし、この野菜なら無限に食えるぞ」
普段は絶対に作らないし頼まない瑞々しい野菜の盛り合わせも、スタークは美味しくいただけていた。
それでも、やはり肉料理中心ではあったが。
「……ちなみに一食どれくらいなんでしょうね」
もちろんフェアトも美味しくいただいていたが、この料理には一体どれだけの費用が掛かっているのだろうかと気になってしまい、リスタルに尋ねてみる。
「えーっと……どれくらいなの? 例えば今日のだと」
しかし、どうやらリスタルも正確には知らなかったらしく、フェアトの質問をそのまま給仕長に投げるとともに、リスタルも興味ありげに目を輝かせていた。
「そう、ですね……これくらいでしょうか」
それを受けた給仕長は、しばらく配膳作業を続けながらも黙考していたのだが、それから十数秒後にリスタルの机の上に置いてあったメモ帳と羽根ペンを借りて、おおよそ夕食に掛かる費用を書き出してみせた。
「うっっっっわ」
「ひえぇ……」
それを見せられた双子は思わず引いてしまう。
無理もないだろう、そこに記されていたのは以前に母から聞いた自分たちの一日分の食費を遥かに凌駕するほどの大金と言って差し支えない金額だったから。
(そりゃあ、こんだけ美味いのも納得だわな)
(それなら、これだけ美味しいのも納得かな)
図らずも、スタークとフェアトは双子らしく似たような思考を持って料理を堪能する事を続けていた。
「お二人とも、よければお酒はいかがですか?」
そんな折、先程の給仕長が露骨に高級そうな酒瓶を手に持って、あらかじめ成人済みだと聞いていたのかスタークとフェアトに対して飲酒を勧め始める。
実を言うと二人は意外にも結構な酒好きであり十五歳という一つの節目を迎えた瞬間から、レイティアが調達してきていた多種多様な酒を呑んでいたのだ。
「あぁ、あたしは麦酒で頼む。 なけりゃあ蜂蜜酒で」
「私は葡萄酒で。 お気遣いありがとうございます」
ゆえに、スタークは『あの喉越しが好きなんだ』と麦酒を、それがなければ『甘いのも嫌いじゃない』と蜂蜜酒をリクエストし、フェアトはフェアトで『大人の味って感じですよね』と葡萄酒をリクエストする。
それを受けた給仕長が、またも高級そうなグラスに麦酒と葡萄酒を注ぐのを見ていたリスタルは──。
「いいなぁ二人とも、お酒呑めて……」
一人の王族としては行儀が良いとは言えないが、その可愛らしく小さな口でフォークを咥えつつ、お酒を楽しめる年齢の双子を羨ましそうに見つめていた。
「幼いうちから酒精を摂りすぎると将来的に内在する魔力に異常が出るって言いますし。 仕方ないですよ」
何を隠そう、この世界で成人として扱われる十五歳を超える前に酒精を摂りすぎると、その子が数年後に魔法を使う際に必ずといっていいほど異常が出ると広く知られているゆえ未成年の飲酒は禁じられている。
お酒は成人になってから──という事である。
「ほーん、そんな理由があったのか」
「……これも習いましたよ」
「……さぁ、覚えてねぇな」
「もぅ、この人は……」
もちろん、この事は二人一緒にレイティアから教わっていた筈なのだが、やはりスタークは完全に失念していたらしく、さも他人事であるかのように麦酒を呷っていた為にフェアトはまたも呆れて溜息をこぼす。
「ふふ……こうして歳の近い女の子とご飯を食べる機会ないから、やっぱり新鮮だなぁ──あっ、そうだ」
「「?」」
そんな双子の仲良さげなやりとりを見ていたリスタルは、おそらく普段は一人で食事をしているのだろうと分からせる旨の発言をしていたのだが、ちょうど何かを思いついたかの如く手を叩いて注目を集めた。
「ねぇねぇ、もし時間があるなら一緒にお風呂も入らない? うちの大浴場は広くて綺麗で気持ちいいよ」
「あー……どうする?」
それから、さも妙案だとばかりにリスタルが入浴をともにしようと提案してくるも、それを一人で決めるわけにもいかずスタークはその判断を妹に委ねる。
「いいんじゃないですか? 私も興味ありますし」
「よし、決まりね!」
すると、しばらく葡萄酒に口をつけつつ考えを巡らせていたフェアトが、どうやら酒精で酔っ払う事もないらしく微塵も赤らんでいない笑顔を向けた事で、リスタルは心から嬉しそうにニコニコと笑っていた。
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