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攻撃特化と守備特化、無敵の双子は矛と盾!  作者: 天眼鏡


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【矛】や【盾】には敵わずとも

『思わぬ不意打ち未遂もありましたが、両者の準備が整ったようです! それでは参りましょう! 一回戦第二試合!』


 開始の合図が出される前に色々ありはしたものの、2人のファンたちの民度の良さも相まって観客席から怒声が飛んでくるような事もなく、審判が木槌を振り上げるのに合わせ。


『今、ゴングで──お、おぉッ!?』


 やっとの事で開始の合図を宣言しようとした、その瞬間。


 司会者や審判、観客の視界からアルゲスの姿が消える。


「悪いがこの試合、私は欠片も傷を負うつもりはない! 何せこの後に四試合……いや、()()()()()()()()()のだから!」


『な、なんと! 先ほど見せた高速移動は全力ではなかった模様! 闘技場の中に居る筈の彼の姿を全く捉えられない!』


『これは流石の【魔弾の銃士】といえど厳しいか……!?』


 声が闘技場の方から聞こえる事、闘技場の床のあちこちが亜音速のステップに耐え切れず削れ続けている事からも間違いなくそこに居るのだろうが、常人の目には映らない。


 彼らからすれば確かに、アルシェでも勝ち切るどころか相手取る事さえ難しいのではないかと思ってしまうのも無理はない──……のかもしれないが、実のところそうでもない。


(……速いっちゃ速いんだろうけど、やっぱり()()()……)


 この程度なら、アルシェは目で追えるからだ。


 ……しかし、〝この程度〟とは言ったものの。


 そもそも彼女は司会者に紹介されていた通り美食国家でも随一の実力と実績を誇る冒険者である以前に、一つの国を華やかな〝表〟ではなく飾り気のない〝裏〟から支える機密部隊のメンバーでもあり、あらゆる面で突出した能力を有し。


 もちろんスタークやフェアトと正面切って戦えば善戦こそすれ敗北は必至だろうが、それでも魔導国家の騎士団長や美食国家の宮廷魔導師筆頭と並ぶ強者である事に疑いはなく。


 動体視力に至っては、【無敵の矛】と大差ない。


 そんな未来視にも近い動体視力を活かした銃撃は、どれだけ相手が素早く動かんとしようが、どれだけ距離を離して戦わんとしようが関係なく、それを実行する前に撃ち抜き。


 また、仮に実行できたとしても問題なく撃ち抜く。


 彼の姿を目で追えている限り、闘技場の端から端まで銃弾が届く限り、彼が次以降の試合に十全な状態で臨む事を見据えてしまっている限り、アルシェが算出した自身の勝率が。


 100%を下回る事は、決してないと確信していた。


 ……唯一、彼女の勝率が揺らぐような事があるとすれば。


(……私も、〝次の試合〟を見据えてしまう事かしらね)


 彼に勝利した場合、【大陸一の処刑人】が相手となり。


 自身の勝率が限りなくゼロになるのだという考えたくもない事態が、100%起こるのだと考えてしまう事ぐらいか。


 ……まぁ、考えたところで何の意味もない。


 まともに挑んでも、奇策を仕掛けても。


 今大会における彼女の戦績はマッチアップが決まった時点で、〝二回戦敗退〟が確定していたようなものなのだから。


 ゆえに彼女は表情一つ崩さず、カチッと撃鉄を起こし。


「──う"ッ!? ぐ、あぁ!?」


「「「えッ!?」」」


 数秒後に走り抜けるだろう彼の軌跡に銃弾を置く形になるよう銃撃し、【神速の雷槍】の要たる軸足を抉り抜きつつ。


「傷、負っちゃったわね。 降参する? それとも……」


「〜〜ッ!! ま、参った! 私の敗けだァ!」


「「「えぇぇぇぇ!?」」」


『な、なんとも呆気ない閉幕! 勝者、アルシェ!!』


 もう片方の拳銃を額に突きつけたところ、アルゲスは即座に槍を放り投げて頭を下げ、何とも情けない姿勢で降参の意を示した彼にファンは呆気に取られるしかなくなっていた。

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