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【真紅の断頭台】vs【女喰らい】

今年の更新は今回で最後となります!


次回更新は1/11(土)です!


来年も本作をよろしくお願いします!

 それから更に十五分ほどが経過した頃──。


『さぁ、ついに今回の魔闘技祭の幕開けを飾る記念すべき試合が開始となります! 東西の門より出でよ、出場者たち!』


 今まさに一回戦第一試合が始まろうとしていた会場を囲む観客たちの空気は、〝狂気〟とも形容すべき()()()()()()に支配され、異様な雰囲気を醸し出していた。


 その激情とは──〝怒髪衝天〟と〝歓天喜地〟。


 分かりやすく言うなら、〝怒り〟と〝喜び〟であり。


 全ての原因は、これから登場する出場者たちにあった。


『東門からは、今大会で最も声援が少ないだろう最悪の性犯罪者が姿を見せる! 実力の差は歴然でも相手は女性! 文字通り喰らいつけるのか!?【女喰めぐらい】、ロブフォス!!』


「「「BOOOOOOOO!!」」」


「ヒャハハ! 聞こえるぜェ、性的弱者どもの囀りがァ!!」


 かたや、魔闘技祭史上においても類を見ないほどの大ブーイングに曝されてもなお下卑た笑みを絶やす事なく闘技場へと足を踏み入れていく、まだ捕まった事もないのに囚人の如くボロボロの服を着こなしている金髪の外道、ロブフォス。


『西門からは、まさかまさかの第一試合に優勝候補最右翼が登場! 瞬きは後にしろ、一瞬たりとも見逃がすな! 麗しき処刑人の断罪を! 【真紅の断頭台】、セリシア!!』


「「「うおぉおおおおおおおおっ!!」」」


「「「きゃー! セリシア様ー!」」」


「……」


 かたや、魔闘技祭史上においてもやはり類を見ない大歓声に包まれようと表情一つ変えず、そして足音さえも立てずに闘技場へと歩を進める、紅の外套に身に纏ったセリシア。


 正義と悪、美麗と醜悪、女と男──。


 あらゆる面において正反対な二人へ向けられた、とても同じ観客層から発せられているとは思えない正反対な激情に会場全体が彩られる中、一際大きく聞こえてくる声があった。


「セリシア様! どうか……ッ、どうかその外道を貴女様の手で! 私の妻を散々嬲った挙句に殺した外道に神罰を……!」


「私の娘もよ……! 今も自分の部屋で怯えてるわ……!」


「俺の妹もだ! このクソ野郎が、どうせテメェは今まで傷つけてきた人の事なんて欠片も覚えちゃいねぇんだろ!?」


 以前、魔導国家の港町にてセリシアに処刑された元魔族の一角、イザイアスにも劣らない件数の性犯罪を引き起こしているロブフォスによって家族を傷つけられた者は、この場にも多く居たようで、そんな彼らの怒号めいた声に対し。


「オイオイ、そいつは酷ぇ誤解だなァ? 俺はよォ、ちゃあんと覚えてんだぜ? これまで犯してきた女の名前も顔も──」


 当のロブフォスが返したのは、これまで彼が引き起こしてきた性犯罪の犠牲になった女性たちについて、ロブフォス自身は彼女らの名前も顔も全てを明瞭に記憶している事実と。


「──……ッく、ヒヒ! 俺に組み敷かれて泣きながら良がる女の喘ぎ声も! ぜぇーんぶ覚えてんだからよォ! ヒッ、クヒヒヒッ! ヒャーッハッハッハッハッハッハァァァァ!!」


「「「……ッ!!」」」


 そんな彼によって心を壊された被害者と、その家族を煽るのが愉しくて仕方がないといった具合に会場中に下卑た想い出を語りながら嗤いを轟かせる外道に、いよいよ被害者たちの怒りは悪い意味で彼しか見えなくなるほどに高まり。


「ふざけんなァ! 死ね! さっさと死ねやァ!!」


「セリシア様、可能な限りの苦しみを奴に……!」


「お姉ちゃんの仇を、取ってください……ッ」


「……」


 その怒りは祈りや願いとなってセリシアに向かい、どうか奴の首が落ちるところを見せてほしいと被害者のみならず会場中の誰もが強く願うも、セリシアは微動だにしない。


 ……答えるまでもない、そう思っているなら良いのだが。


『会場は今までにない殺伐とした雰囲気と罵声、そしてセリシア様への声援と嘆願に包まれ、かつてない異様な空気となっておりますが、この空気が勝敗に影響する事はあるのでしょうか!? それでは参りましょう、一回戦第一試合──』


 そして二人が各々の指定された位置についたのを見届けた司会者の煽りとともに、ちょうど中間となる位置に控えていた審判が手に持った小さな銅鑼へ木槌を振り下ろした事で。


 カァンッ!!


『──今、ゴングですッ!!』


 試合開始を告げる、甲高い金属音が鳴り響いた。

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