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金と欲望の溢れる街

 ──こちらは、スタークサイド。


「……何でこんなにギラギラしてんだ……」


 いざ街の方へと近寄ってみると、その眩しさは更に増していき、まるで太陽が目の前に顕在化しているかの如き様相に、これといって視力が優れているわけでもないティエントでさえ目を細めつつ困惑を露わにしている。


 街の門よりも背の高い建築物は巨大な松明だと言わんばかりに街の周辺を照らし、スタークたちが立つ辺りは──もう、ほぼ真昼。


 本来、夜行性となる方の砂漠の魔物たちも現在の時刻は夕暮れである筈なのに、その街の灯りに負けていそいそと砂に身を埋める。


 じゃあ逆に昼は誘蛾灯のように魔物を寄せ集めてしまうのでは、と思うかもしれない。


 しかし、どうやら魔物たちはズィーノの灯りが自分たちより遥かに強い存在の力によるものだと本能的に察しているのか、よほどの事でもない限り街には近づかないのだとか。


 ある意味、安全だと言えなくもない。


 とはいえ、それが並び立つ者たち(シークエンス)の力による束の間の平穏であるならば、たとえ一時ズィーノが恐慌に陥ったとしてもスタークは全力で以て並び立つ者たち(シークエンス)を排除しにかかる。


 それこそが、この双子の目的なのだから。


 そして三人が門の前に立ち、いよいよ金と欲望の溢れる街へと足を踏み入れんと──。


 ──した時。


「──お二方、()()()は大丈夫ですか?」


「「?」」


 あぁ、そういえば──という前置きから始まった、ポーラからの『軍資金』なる仰々しい単語を聞いた二人は首をかしげはしたが。


「……軍資金──……あぁ、賭博用のか?」


「あたしは問題ねぇけど、お前は?」


 スタークほど鈍くはないティエントは、すぐさま賭博の費用の事を言っているのだと察し、それに対して彼が答える前にスタークが眼帯をとんと叩きつつ、ティエントに問う。


 眼帯──要は、パイクの【風納ストレージ】の中に野盗やら魔物やらを【魔導国家】で討伐した時の金が割とたくさんあるから大丈夫らしい。


 そんな彼女とは対照的に、ティエントは少し気まずげに苦笑しつつ『実はよ』と言い。


「前にあの街ですっからかんになってから五年間、真面目に冒険者やってきたからな。 これでも同世代の獣人に比べりゃ金持ちだぞ」


「ほーん、じゃあ後で比べてみようぜ」


「……勇者と聖女の娘の財産と?」


「自信ねぇか?」


「──やったろうじゃねぇかよ!」


「……問題なさそうですね」


 五年ほど前、冒険者になったばかりで浮かれていたのか、まだ並び立つ者たち(シークエンス)の影響下になかった頃のズィーノでの()()()()()でさえ痛い目を見て以来、貯金はしっかりしているから全く問題ないと豪語する彼に、スタークは後ほど比較してみるかと愉しげに笑う。


 かたや真面目に五年間、冒険者稼業に身を費やして貯蓄してきた財産をもつ獣人──。


 かたや一週間程度、王族や騎士団からの厚遇の下、結構な報酬を受け取った少女──。


 どちらが上なのか──……それこそ比較してみないと分からないのは言うまでもない。


「では向かいましょう。 賭博の街へ──」


 そして、スタークとティエントが繰り広げる悪友のようなやりとりを見て溜息をつきつつ、これ以上ここで歓談する理由はないと判断したポーラは、すでに門での手続きを済ませていたようで、そのまま一歩踏み出した。


 ──その時。











「──Welcome! Ladies & Gentleman! ()()()()()()()()!!」


「「「っ!?」」」


 断言してもいい、この場には門の近くに立つ数人の衛兵たち以外は自分たち三人しかいなかった筈なのに、いつの間にか煌びやかかつ彩り鮮やかな服を召し、その整っているのであろう顔の目元を七色に輝く蝶々仮面(パピヨンマスク)で隠した背の高い男性が腕を広げて立っており。


「「「Yeahhhhhhhh!!」」」


「「「Foooooooooo!!」」」


「な、何ですかこれは……?」


 そんな男性の背後では、やはりいつの間にか揃いも揃って歓迎ムードを漂わせて笑みを浮かべる、バニーガールたちが踊っていた。


 おまけに、いかにも街をあげての歓迎だとばかりに管楽隊までもが音楽を奏でている。


 建物はおろか街道や、その街道を歩く人々さえも煌めいているその明るさも相まって。


 パレード、もしくはカーニバルでもやっていると言われれば納得できるし、ここは賭博の街なのだから儲けた金でそういった催し物を開催するのも決しておかしな話ではなく。


 ポーラはあれだが、スタークやティエントはこういう騒がしいのも嫌いではない──。


 しかし、聞き捨てならない言葉があった。


「……『待ちかねた』、ってのぁ何の事だ」


 そう、この男性は今──……スタークたち三人に向けて『待ちかねた』と言ったのだ。


 つまり、スタークたちが今日のこの時間帯にこの街を訪れるのを知っていた事になる。


 魔導師団が常駐、調査しているあちらの場合は、あらかじめ近衛師団長たるポールが先触れを出していたが、こちらには特に国の手が回っているわけでもない為、ポーラは自分たちが訪れる事を街の上役に伝えていない。


 ただ、これは決して彼女の怠慢や失態というわけではないし、こんな状況になるなどとは近衛師団の副師団長でも予想はできない。


 尤も、彼女でも予想できないという事は。


「くふふ! 何の事も何も! 私は皆様を──」











「──No! ()()()()()()()()のですよ! かの()()()()()()()()()()()たる貴女を!!」


「……まさか、お前は──」


「Yes! Yes!! Yes!!! 名乗らせていただきましょう! 私の名は“マキシミリアン”!! 偉大なる魔王様より、この素晴らしい名と【胡蝶之夢(マスカレード)】なる麗しい称号を授かった並び立つ者たち(シークエンス)! 序列十三位です!」


「「「……!!」」」


 つまり、そういう事だったのである──。

短編、初挑戦です!


竜化世界の冒険者〜天使と悪魔と死霊を添えて〜


https://ncode.syosetu.com/n7911hv/


史上最短で史上最強の座に到達した若き女冒険者、ユーリシアが天界・冥界・魔界のNo.2たちをお供に多種多様な竜を討伐しながら世界を巡る冒険譚です!!


ある程度の書き溜めができ次第、改めて新作として投稿させていただきます!!


続きが気になると少しでも思っていただけたら、ブックマークや↓の☆からの評価をどうぞよろしくお願いします!!

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