旅立ってすぐの
ここからが二章……のような感じです!
よろしくお願いします!
実に十五年もの間、家族三人で仲睦まじく暮らしていた双子の姉妹、スタークとフェアトが母親であるレイティアに別れを告げて、二体の仔竜に乗って辺境の地を旅立ってから──およそ数時間が経った頃。
「……なー、フェアトー」
「何です?」
自分のパートナーとして母から渡された双子の竜の片割れ、パイクの背に装着した鞍の上で胡座をかいていたスタークが、もう片方の竜であるシルドの背に行儀よく乗って地図を確認中のフェアトに声をかける。
その声は、いかにも退屈そうに間延びしていた。
「ぜんっっっっぜん……陸が見えてこねぇんだが」
それもその筈、決してパイクたちの飛行速度が遅いわけでもないのに、いつまで経ってもスタークたちの視界には青々とした海しか映ってくれないからだ。
強いて言えば──群れをなして飛ぶ渡り鳥や、その渡り鳥を餌とする空や海の魔物が織りなす自然界の捕食劇を目の当たりにする事はできていたが。
……それを愉しめるほど彼女の心は歪んでいない。
その一方、姉の飽き性を充分に理解していた妹は。
「そうですね」
「そうですねってお前……」
ここで取り合ってもいい事はない──と誰よりも分かっている為に随分と素っ気なく返答し、それを受けたスタークは真紅の瞳を細めてフェアトを睥睨する。
そんな風に拗ねた姉を見たフェアトは微笑ましげに笑いつつ、地図から目を離して視線を移し──。
「私たちが住んでいたあの場所は辺境も辺境、地母神様が私たち──というか、お母さんの事を思って人が住む大陸と正反対の位置に創造されたそうですし」
もう見えないほどに遠ざかってしまった故郷を振り返りながら、かの辺境の地が何者によって創られたのか、そして誰の為を思って創られたのかを説明した。
事実、レイティアを聖女に選定した地母神ウムアルマは、わざわざ彼女の為だけに外からは入れない光の結界で覆った不可侵の大地を創造していたのだった。
では、どうして不可侵の大地に元魔族で現怒赤竜だった並び立つ者たちのジェイデンが侵入できたのか?
そこには、それなりに重大な理由があるのだが。
それは──また別の機会に語るとしよう。
「あー……そういや、そんな事も言ってたか」
「もぅ、これだから姉さんは……」
翻って、スタークも先程の件については母から聞いている筈なのだが、これは彼女にとって『興味のない事』に分類されるらしく──今、思い出したようだ。
飽き性なうえに忘れっぽく、そもそも興味のない事を覚えようとしない姉の姿勢に呆れつつも、そんな姉だからこそ愛おしいのだと感じている自分にもフェアトが呆れて溜息をこぼしていた──その時。
『『りゅー!』』
突如、顔だけを自分たちの背に乗るスタークたちに向けたパイクとシルドが何かを伝える為に一鳴きすると、二人は会話を止めてそちらの方へ顔を向ける。
「……何だ? 何か見つかったか」
『『りゅっ!』』
スタークが栗色の髪を掻きながら鳴き声に込められた意味を予測して尋ねると、パイクとシルドは短く鳴きつつ首を縦に振りつつ顔を前に戻す事で──。
「……島、か?」
『『りゅー!』』
青々とした一面の海しか映っていなかった筈の彼女たちの視界に映る、この高度からだと緑色の粒のようにしか見えない数多くの群島を指し示していた。
それらの島々の間を縫うようにして、その大きさに差異はあれど共通して多くの人を乗せた船が海を渡っており、船が泊まる為の港も小規模だがあるらしい。
「沢山あるが……あれが目的地じゃねぇよな」
そんな光景を目の上に手を添えて見下ろしていたスタークが、視線をフェアトの方へと戻しながら自分たちの目的地があの島のどれかじゃないよなと尋ねる。
「えぇ。 あれは観光や遊覧でお馴染みの“シュパース諸島”ですから。 私たちの目的地は──」
一方、フェアトは『もちろんです』と首を縦に振ったうえで再び手元の地図に目を向けつつ、その地図に記された群島、もとい諸島の名と訪れる人々の目的を口にしてからスタークへと視線を戻し──。
「“ヴィルファルト大陸”。 世界で唯一の大陸ですよ」
この世界に一つしか存在しない大陸の名を告げた。
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