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乱入、スターク救出部隊

 霆人ラムウの秘技、【生命放電(L・ディスチャージ)】によるエステルの雷撃は、およそ一般的な霆人ラムウではありえないほどの紫電となってスタークを貫く──。



 ──……筈だったのだが。



「な、何や? また小娘に見えてんけど……」


 実際に紫電が直撃したのは、スタークとよく似た顔立ちかつ同じくらいの歳に見える金髪碧眼の美少女であり、エステルが突然の事態にきょとんとした表情を浮かべる一方で。


(……あれ、あの子どっかで……)


 フェンはフェンで何やら今までとは違う神妙な表情を見せており、エステルの紫電に飛び込んできた少女──……フェアトをどこかで見たような気がしてならないようだった。



 ……ちょうど十五年前くらいに。



(そうなると、あの子も──……んんん?)


 そして突然飛び込んできたあの少女に見覚えを感じてしまうと、さっきまで戦っていた方の少女にも何やら既視感を覚える気がしてきてフェンはいよいよ首をかしげてしまう。


 気がするも何も、フェンが魔族だった頃に彼を討伐した者たちに瓜二つなのだが──。



 また、エステルも別の事を考えていた。



(……あれやと仕留められてへんやろな……いらん茶々入れおってからに、あの小娘が……)


 自らが放った極大の紫電と、その一撃で舞い上がった真っ白な雪煙のせいで、どうなっているのかもよく分かっていない筈なのに。


 十中八九、『一人目の少女』を仕留める事は出来ていないだろう──と確信していた。



 何故かというと、【生命放電(L・ディスチャージ)】には──。



 ──状況次第では長所にも短所にもなり得る、『とある性質』が存在するからである。



 それは──『生命力を持つ者への追尾』。



 生命力を源としている為か、たとえ躱されたとしてもそこで終わる事はなく、その一撃が生物に命中するまで絶対に中断されない。


 紫電と生物との間に、いかなる障害があったとしても、その全てを紫電は貫いていく。



 尤も、それは──。



 その障害が非生物であれば、の話だが。



 もし、その障害が最初に標的として定めた以外の生物だった場合、紫電はその生物を仕留めて──……そこで終わってしまうのだ。


 今回の事例で言えば、スタークを狙った筈の紫電が、いきなり飛び込んできたフェアトを生物だと認識してしまったのだろう──。


 事実、雪煙が晴れた事で見えてきた向こう側には、【白雪祭典ホワイトフェスタ】の影響で未だに動きが鈍いものの一切の被弾がないスタークと、エステルの一撃で消し炭となったフェアトが。



 ……いる筈だ、と思っていたのだが。



「──……はっ?」


「え、えぇ?」


 そこにいたのは、エステルの予想通り一切の被弾がないスタークと──……被弾どころか焦げ目一つなく、さも何事もなかったかのように身体を起こしつつ雪を払うフェアト。


 その紫電の一撃は、まず間違いなく文字通りの『必殺』だった筈であり、エステルだけでなくフェンまでもが困惑を露わにせざるを得ない中、雪を払い終えた少女が口を開く。











「──……並び立つ者たち(シークエンス)、ですか?」


「「!!」」


 疑問符こそついているものの、もう確信にも近い感情を秘める声音で告げられた、『元魔族ですか』という問いかけに、またも二体は表情を驚愕の色に染めざるを得なくなる。


「……図星みたいですね、その反応は」


「……だったら何や?」


 そして、そんな二体の反応から半信半疑が完全に確信へ変わったフェアトの態度にイラッときたエステルが、『あ"ぁ?』とやからみたいに凄んでみても、フェアトは表情を崩さず。


「ここで隠す意味はなさそうですし、ハッキリ言います。 私は……いえ、()()()は──」


 それどころか、その表情に一層の真剣味を帯びさせたうえで、ちらりと後ろで膝をつきかけている姉へ心配そうな視線を向けながらも、その少女を含めた自分たち二人こそが。


「──勇者ディーリヒトと、聖女レイティアの双子の娘。 並び立つ者たち(あなたたち)を討つ者です」


「はっ!? い、いや、そう言われたら──」


 かつて、カタストロを始めとした全ての魔族を殲滅せしめた勇者と聖女の双子の娘であり、エステルとフェンが属していた選ばれし二十六の魔族──並び立つ者たち(シークエンス)を討伐する使命を受けたと明かした事で、エステルが脳裏に浮かべた勇者や聖女の面影を探す一方。


(……どっかで見覚えあると思ったよ……じゃあ、後ろにいる【竜種あれ】はもしかして──)


 すでに、フェンは二人の少女が勇者と聖女の娘である事を看破していただけでは飽き足らず、その少し後ろから飛んできている二体の【竜種】の正体にさえ確信を持っており。


『『りゅーっ!!』』


「ん"っ!?」


「……やっぱりね」


 四枚の流麗かつ鋭利な翼を羽ばたかせ、その透き通った水晶の如き全身を隠そうともせず現れたパイクとシルドに、かたやエステルは今日何度目かも分からない驚愕を見せ、かたやフェンは予想が当たった事で息をつく。



 ……別に彼も驚いていないわけではない。



 ただ、エステルのように驚いたところで状況は変わらない──……と悟っているだけ。


「し、神晶竜ちゃうか……!? いや、あれは勇者と一緒に死んだて魔王はんが……!!」


「言ってたよねぇ……どういう事だろ」


 翻って、まだまだ驚愕も困惑も抜けきっていないエステルは、この世に転生する際に魔王が言い遺した『勇者の最期』についてを思い返し、その中には始神晶製の剣──勇竜剣リントヴルム()()()()()も含まれていた筈だ、と叫び。


 また、その事を覚えていたフェンがスタークに寄り添い始めた神晶竜を改めて観察していると、その後ろから更に何者かが現れる。


「さ、寒ぃ……っ! 下層全部が雪景色になっちまってんじゃ──お、おいスターク!?」


「獣人……!? 何や次から次へと……っ!」


 一人は犬獣人のティエントであり、ある程度の寒さには種族柄強いものの、いくら何でも元魔族が発生させた極寒はどうしようもないのか、その口から白い息を吐きつつスタークに駆け寄っていき、それを見ていたエステルが『鬱陶しい』と言いたげに舌を打つ中。


「ほんとにいたんだねぇ、霆人ラムウ雪人イエティ! じゃあ、こいつは雪人あんたの【白雪祭典ホワイトフェスタ】かい!?」


「ご明察だよ、鉱人ドワーフさん」


 もう一人は鉱人ドワーフのガウリアであり、すでに臨戦体勢への移行を終えていた彼女からの問いかけに、フェンが答えたのも束の間──。


「そりゃどうも──……っとぉ!!」


「わぉ、あっぶな」


 ガウリアが、【銘名鍛治ネームドスミス】で矢毒蠍やどくさそりたちを強制的に変化させた武器の一部を【土強ビルド】にて鋼鉄の巨腕と化した右手で投擲したかと思えば、フェンは軽く驚きながらも梟狼ふくろうのそれとは比較にならない規模の【氷壁バリア】で防ぐ。


 突如として出現した巨大な氷塊に阻まれた事で、それらの武器が弾かれたり砕けたりする中、ガウリアは【土強ビルド】を解除してから。


「その子ほどじゃないけど、あたいも寒いのは苦手でねぇ……()()やめてくれるかい?」


「別にいいよ。 でもその代わり──」


 流石にスタークほど魔力を帯びた寒波に弱いわけではないものの、こちらも種族柄暑さの方が得意マシというのも事実である為、ど直球に【白雪祭典ホワイトフェスタ】を解除しろと告げたところ。


 意外にも、フェンはあっさりと彼女からの命令にも近い提案を受諾──……するかと思われたが、やはり何らかの見返りは求めたいらしく、かまくらに入ったまま指を動かし。


「──話をさせてほしいな、そっちの子と」


「……私ですか」


「おいこら! 何を悠長な──」


 その見返りとして、フェアトの話が聞きたいし、フェアトに話を聞いてほしいという旨の言葉をかけると、それを聞いていたフェアトが『序列一位アストリットみたいな事を』と呆れる一方で、エステルはフェンを強く怒鳴りつける。


 もう小娘の相手はしたくないし、これ以上に引き延ばすのは嫌だという感情からの怒声だったのだが、フェンは溜息をこぼしつつ。


「……気持ちは分からなくもないけどね、エステル。 もし本当にこの子たちが勇者と聖女の娘で、あれが神晶竜なんだとしたら──」


 ハッキリ言って短気な彼女の性格は分かっていても、もし少女の言に裏付けが取れて勇者と聖女の娘という事が証明されて、あの二体も神晶竜であると断定できたのなら──。











「あの扉の奥の()()を話さなきゃ、ね?」


「……っ、そりゃあ──……せや、な……」


「扉の奥の秘密……?」


 世界が終わっちゃうもんね、と独り言ちていた『扉の向こうに在る何か』についてを明かすべきだと告げると、エステルは若干の葛藤を見せるも、その言葉を受け入れてみせ。


 すぅっと臨戦体勢を解いたエステルを見たからか、フェアトもまた警戒を多少なり解いてみせた事で、とりあえず緊迫状態は解除。


 無敵の【盾】と並び立つ者たち(シークエンス)の話し合いが、この最深部で行われる事となった一方。











(……俺らも聞いてていいと思うか?)


(あたいに聞かれてもねぇ……)


 パイクやシルドの【ヒール】を受け、ようやくまともな睡眠を摂り始めていたスタークの傍にいた二人は完全に蚊帳の外となっていた。



 ……温度差で風邪を引きそうなくらいに。

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