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合流の少し前

 時と場面は、フェアトたちの方へと戻る。



「……霆人ラムウが……霊人が、ここに?」


「あぁ、間違いないよ」


 十五年近くあの辺境の地から出てなかった影響で、その存在を【始祖の武闘家】の体質や文献でしか知らなかったフェアトの、あの雷撃の正体を確認する旨の呟きに、ガウリアがしっかりとした確信を持って首肯する中。


「……確かに霊人特有の濃い魔力の匂いはするが、あの魔奔流スタンピード騒ぎで()()()()()()は封鎖されてた筈だ。 何だってこんなとこに……」


 辺りに死骸がないからか、ようやく調子を取り戻しかけていた自慢の鼻を鳴らす事により、ティエントは霊人が漂わせているという色濃い魔力の香りを確かに感じ取りつつも。


 前提として、つい先程まで絶品砂海デザートデザートを騒がせていた魔奔流スタンピードに対し、ここ南ルペラシオの王族は【美食国家】全域に可食迷宮エディブルへの立入禁止と念の為の出入口の封鎖を敢行している筈であり、そこに霊人がいるのはおかしい。



 ……と、そう主張する一方で──。



(……濃い魔力の匂い? 霊人特有……?)


 彼の主張の中にいまいち理解できない要素を感じたフェアトは、こっそり匂いを嗅いでみたが──……よく分からなかったようだ。



 もちろん、ガウリアの匂いを──。



「さぁねぇ、それは知らないけど──」


 そんな少女の奇行に気づかなかったガウリアが、ティエントの主張に対しての明確な回答を用意できずに首をかしげた、その瞬間。


『『りゅ〜……っ!!』』


「「!?」」


「……!」


 雷撃に驚いたかどうかはともかく一旦翼を休めていた神晶竜たちの、まるで仇敵か何かを前にしたかのような威嚇に二人が驚く中。


 フェアトだけは、その威嚇の意味を瞬時に察し、この先にいる存在の正体を理解した。


「な、何だ? 何に対して威嚇してんだ?」


「……そりゃあ、あの雷撃の主に──」


 だからこそ、こうやってパイクたちの威嚇の意味を理解できずに困惑する獣人や、おそらくはと推測を口にする鉱人ドワーフに対して──。


「──……違う」


「「え?」」



 ──と、ハッキリ告げる事ができていた。



「……さっき話しましたよね、この仔たちを連れて私たちが旅に出た理由について……」


「え、あぁ……」


 それを伝えるべく、まずはとばかりに中層へと至る階段付近で明かした自分たちの事情の中に含まれていた、『旅の目的』を覚えているかと問うたところ、ティエントが頷き。


「……並び立つ者たち(シークエンス)だったな。 十五年前に全滅した魔族が転生したから、それで──」


 並び立つ者たち(シークエンス)などと名付けられていたらしい、その名の通り魔王と肩を並べうるほどの二十六の魔族の転生体を討伐するのが目的だと語っていた事を思い返した──その時。


「──……おい、まさか……」


 ……図らずも、ティエントは思い至った。


 このタイミングで、わざわざ旅の目的なんて思い返させる意味など、それしかないと。


「この反応は何度も見てます──この仔たちが並び立つ者たち(シークエンス)を見つけた時の反応です」


「「……!!」」


 そんな彼からの、できれば否定してほしいとでも言いたげな呟きに、フェアトは無慈悲にも現実を突きつけ、それを受けた二人は衝撃的な事実に目を見開かざるを得なくなる。


 それもその筈、魔奔流スタンピード騒動でほぼ全ての生物を喰らい尽くしたあの野蚯蚓のみみずもまた──。



 ──……並び立つ者たち(シークエンス)だったからだ。



「あの雷撃の主……霆人ラムウが元魔族って事になんのかい? こりゃあ迂闊に近づけない──」


 その事実を、かつて魔族と戦った事もあるガウリアは嫌というほど理解しており、だとしたら無策で突っ込んでいくのは危険かもしれないと考え、そこそこ深い溜息をついた。



 ……そんな中で。



「──……霆人ラムウだけとは限らねぇぞ」


「ん?」


「えっ」


 もはやパイクたちにも劣らないぐらい神妙な表情と声音による、ティエントの意図を掴みきれない呟きに対し二人が顔を向けると。


「人間の匂いもするが、こいつぁ多分スタークだろうし別にいいんだ。 それよりも──」


 どうにかこうにか匂いの判別を終えた彼の嗅覚は人間の少女の──……おそらく、スタークの匂いを感じ取る事に成功しており、それはそれで実に喜ばしい事ではあるものの。











「──……()()()()()()()の方が気になる」


「「もう一人……?」」


 スタークと霆人ラムウ以外に、あろう事か更にもう一人の霊人がいるという彼の言葉に、フェアトとガウリアは声を揃えて首をかしげる。


「覚えがある……多分、雪人イエティだな」


雪人イエティって、氷の……?」


「んん……?」


 多分だが──と前置きしたうえで彼の口から告げられたのは、フェアトも知る氷の精霊フラウから派生したと云われる雪人イエティの存在であり、それを聞いた二人は顔を見合わせる。


「……こんな蒸し暑い迷宮に──……っつーか、【美食国家】に雪人イエティがいるなんてのは」


「あぁ、俺も信じがたいが……」


 何しろ、ここは【美食国家】──絶品砂海デザートデザート以外の地域も常に暑く、とてもではないが寒冷地にのみ適応した雪人イエティが快適に暮らせる地ではないし、ましてや迷宮の最奥になんて。


 ……そんな風に考えてしまうのは至極当然の事であるのだが──……もし、もしもだ。


 その雪人イエティもまた並び立つ者たち(シークエンス)だったとしたら──この異常にも説明がついてしまう。


 元魔族だというのなら、それこそ種族ごとにおける『環境への適応能力』など無視して迷宮に居座る事も不可能でないだろうから。


 そして、もし霆人ラムウ雪人イエティの両方がフェアトの言う並び立つ者たち(シークエンス)だったとするのなら。



 ──スタークは今、危機的状況にある筈。



 彼女はまだ、眠ったままかもしれないのだから──そう考えたのは二人だけではない。


「……急ぎましょう。 姉さんが敗けるとは思えませんが、()()()となると話は別ですし」


『『りゅう!』』


「「……」」


 一度眠り始めたら早々起きる事はない、と誰より姉の生態を知っているフェアトもまた急いだ方が良いと判断し、パイクたちにもガウリアたちにも『並び立つ者たち(シークエンス)は二体』という最悪な事態を前提として声をかけ──。



 それに気づいた二体と二人は、かたや決意を秘めた鳴き声を上げ、かたや覚悟を決めた無言の首肯を返して戦場へ赴かんとするも。



 三人と二体の予想は裏切られる事になる。











 ……良い意味で、裏切られる事になる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 何せ、スタークと交戦中の霆人ラムウは──。



「──っ、何やねんこいつは……っ!! こちとら元魔族やぞ!? 何で眠っとるまんまの小娘に苦戦強いられなアカンねん……っ!!」


 そう悔しげに叫んでいる通り、まだ起きていなかった少女を相手に苦戦しているのだ。


 とはいえ彼女も傷は殆ど負っておらず、せいぜい少女が時折放つ不可視の斬撃を避けきれずに肌の表面に切り傷ができている程度。



 ……それでも『苦戦』と称したのは。



「……」



 未だに少女が、全くの無傷だからである。



「ふざけとんちゃうぞ……!! ウチらを誰やと思うてんねん!! 並び立つ者たち(シークエンス)の──」



 ガウリアたちはもちろん──フェアトやパイクたちでさえ予想できなかった事だろう。



 あろう事かスタークが並び立つ者たち(シークエンス)二体を相手に善戦している事と──……そして。



 その二体が並び立つ者たち(シークエンス)の中でも──。











()()()()()()()やぞ!? なぁ“フェン”!」


「……ほんと、傷つくよねぇ。 “エステル”」



 最上位に位置する存在だという事を──。

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