落下中の──
ここからが七章みたいなあれです!
以降、投稿間隔が五日に一度となります。
ご了承いただければ幸いです。
ここは、【美食国家】──南ルペラシオ。
絶品砂海という名の、この国の生命線たる大砂漠。
いつもであれば、この世界のいかなる場所よりも盛んに食物連鎖が発生し、その食物連鎖に組み込まれている魔物や獣などを狩る為に冒険者や傭兵が力を振るう事でお馴染みの砂漠だが、この瞬間だけは異なり。
つい先程まで大規模な魔奔流が発生し、その魔奔流の原因──切っ掛けの魔物である超巨大な野蚯蚓が暴れていたという事もあってか静寂に支配されていた。
もっと言えば、その野蚯蚓は現世に転生を遂げた選ばれし魔族──並び立つ者たちの序列七位であり、ガボルという名であったらしいその元魔族を討伐する為とはいえ、スタークはとんでもない事をやらかした。
砂の海に穴を穿ち、この星の核──世界の心臓を剥き出しにするという他の誰にも成し得ない暴挙をだ。
その影響か、ヴィルファルト大陸に住まう一部を除いた生物は皆、世界の心臓より溢れ出した八色に煌めく魔素の光に目を奪われてしまっていたものの、それも世界の心臓を剥き出しにしていた穴が大量の砂に埋もれていった事で少しずつ元に戻っていたようだが。
そんな世界的規模の暴挙を引き起こした張本人であるところのスタークは、そうして世界の心臓を埋め直さんとする大量の砂とともに下へ下へと落ちており。
普段なら砂くらい腕を一振りすれば吹き飛ばす事はできるのだろうが、この時の彼女は──眠っていた。
……それはもう、すやすやと。
そんな彼女を救うべく立ち上がったのは、スタークの双子の妹であるフェアトと、たまたま序列七位の討伐に関わる事となった鉱人の傭兵であるガウリア、そして犬獣人の冒険者であるティエントの三人で──。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
世界の心臓の魔素を強く受けて育ったからか、この場に居合わせた誰よりも強い影響を受けた結果、空中に浮かんだまま動かなくなってしまった二体の神晶竜が擬態する怒赤竜と溯激竜から落下した三人のうち。
フェアトより少し先に飛び降りた二人、ティエントとガウリアは何やら落下しながら会話しており──。
「──おいガウリア! あんたが急かすから勢いで飛び降りちまったが、ちゃんと考えがあっての事なんだよな!? いくら何でも無策ってわけじゃねぇだろ!?」
真っ先に飛び降りたガウリアに名を呼ばれ、そして釣られるようにして後を追ったティエントは、『まさかとは思うが』と言わんばかりに彼女の無策を疑ってかかったものの、ガウリアは顔を下に向けたままで。
「当ったり前さね! あたいを誰だと思ってんだい!」
「っ、ならいいけどよぉ……!」
さも『心配はいらない』とでも言いたげな溌剌とした活気ある声音を以て叫んだはいいが、やはりティエントの憂慮が完全に彼の中から消えるわけではない。
何せ、ガウリアは傭兵──元の雇い主よりも相手側の方が金払いが良いと見るや、その場で裏切る事も厭わない連中ばかりだというのが彼のイメージであり。
……むしろ不安は増す一方というものだ。
ガウリアが、そういった類の傭兵ではないのだろう事は、さっき知り合ったばかりの女の子を助ける為に命を懸けんとしているのを見れば分かるのだが──。
「それより! フェアトは落ちて来てるかい!?」
「あ!? そりゃあ──」
そんな彼の葛藤をよそに、やはり顔をあげようとせず己の武器である巨大な斧に魔力を充填させつつ、ガウリアたちより後に飛び降りている筈のフェアトが本当に落ちて来ているかどうかを彼に問うガウリアの叫びに、ティエントは先程まで自分も居た空を見上げ。
「──っ!? あ、あぁ大丈夫だ! 問題ねぇよ!」
「? そうかい、だったら──」
一体そこに何を見たのか──どんな布を見たのかは分からないが、その犬面を随分とまぁ焦燥や羞恥で染めつつも金髪碧眼の美少女がちゃんと落ちて来ている事を伝え、そんな彼の応答にガウリアは一抹の違和感を覚えてはいたものの、それはそれとして息を吸い。
「フェアト!! 聞こえてるかい!? 返事しな!!」
「……っ、は、はぁああい! 何ですかぁああ!?」
自分よりも上にいる少女に聞こえるように声を張り上げ、もし聞こえていたら返事をしろとの彼女の叫びに対し、フェアトはスカートを抑えながら返答する。
飛び降りた時は背面──というか頭から落ちていた筈だが、どうやら自然と足が下になっていたらしい。
「これから、あたいが砂漠に向けて【土扉】を行使する! もしスタークが世界の心臓まで落ちなかった場合に流れ着く場所へ繋げる為に! 分かったかい!?」
「なっ、流れ着く……っ!?」
もちろん、フェアトの頑張りなど見えていないガウリアは、ぶんぶんと重そうな斧を片手で振り回しながら【土扉】を行使するべく両刃に魔力を集中させる。
スタークが、あのまま世界の心臓に呑み込まれていたのならそれまでだが──もし、もしも呑み込まれずにいてくれるのなら必ず流れ着くだろう、とある場所へ『砂漠そのもの』を触媒とした門を繋げる為にだ。
「は……っ!? お、おい、それって──」
「あぁ、あんたは知ってるよねぇ!」
無論、【美食国家】に着いたばかりで右も左も分からないフェアトが、この国の大砂漠の下にあるらしい何らかの場所の事など知る由もないが、そんな彼女とは対照的にティエントは思い当たる節があるようで。
「絶品砂海の下、世界の心臓の上に位置する──」
露骨に狼狽する彼を尻目に、ようやく顔を上の方へ向けたガウリアは何が愉しいのか笑みを湛えつつ、この大砂漠の下に位置している、だが一概に下と言っても世界の心臓とまではいかない位置に存在する──。
「──“迷宮”の事を!!」
「っ!!」
哺乳種、鳥種、虫種、魚種、果ては【竜種】といった魑魅魍魎が跋扈する──そんな地の総称を叫んだ。
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