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奴隷の国  作者: 猫人鳥
1章
7/1598

7 契約

 飼育係の男がこっちを見ている。

 手足が震えて、体が動かない……

 あの男を見るだけでも体がこわばって、上手く動かせない……

 それでも行かなければいけないっ! と、自分を叱咤して、足を動かそうとした時、


「よいしょっと」


と、アキナ様が飼育係の男と向き合う形で線の中に入った。


 この状況を、私も奴隷商達も、すぐには理解できなかった。

 何故、アキナ様がそこに?


「ちょ、ちょっと待ってくれお嬢ちゃん。まさかと思うが、君が戦うのかい?」

「えぇ」

「いやいや、あいつは?」


 私を指差しながらアキナ様に訪ねる奴隷商。


「フィーには後でやってもらいたい魔法があるから、こんなところで魔力を消費してほしくないの」


 さも当然だとでも言う様に、平然と答えるアキナ様。


「いや、だからって……大体、普通は奴隷を戦わせるもんだろう?」

「あなた達が出したコイツも、奴隷じゃないじゃない」

「で、でも……」


 ここで奴隷商達が困っているのは、アキナ様の出自が分からないからだ。

 あの財力に、この身なり。

 もし上位貴族とかだった場合、奴隷商達は間違いなく潰される。

 上位貴族の子供から、新しく買った玩具を取り上げたうえに、怪我までさせたのだから。


 玩具を取り上げただけなら、まだこの国から逃げるくらいできるだろうし、親達も新しい玩具を買ってあげたりして、子供を宥めるくらいだろうが、怪我をさせたとなれば話は別だ。

 例えこの国を離れようと、どんな手を使ってでも潰される事は間違いないだろう。


「いや、さすがに君みたいな可愛い子とは戦えないから」

「ん? フィーだって可愛いじゃない」


 さりげなく私の事を可愛いと言って下さった……

 でも今はそんな話をしている訳じゃない。

 アキナ様は、何処か感覚がズレているみたいだ。


「いや、そういうことじゃなくて……ほら、こんなところで怪我して帰ったら、お父さんやお母さんが心配するよ?」

「大丈夫よ。私強いし、私が勝つんだもの。怪我なんてしないわ」

「いやいや、怪我するって。危ないって。これじゃ何の為に奴隷がいるのか分からないよ?」

「私は戦闘用に奴隷を買った訳じゃないもの」

「でも、あいつは魔神種だぞ? 魔力も多い。折角なら戦わせた方が良くないか?」

「だからさっきから言ってるでしょ。フィーには後でやってもらいたい魔法があるって。ここで魔力を消費してほしくないのっ! 大体、あなた達がマジックキャンセラーでも使えば、フィーはか弱い女の子になっちゃうじゃない」

「いや、それはそうだが……ならマジックキャンセラーは使わないからさ」

「これは何でもありの勝負って言ったでしょ? だから別に使っていいわよ」


 どうにかして私と戦おうとする奴隷商。

 それを全く聞く気がないアキナ様。


「はぁ、もう仕方ないわね。じゃあ魔法契約してあげるわ」


 奴隷商との応酬に飽きたのか、アキナ様はついにそんな事を言い出した。


「魔法契約? 本気か?」

「えぇ、それなら問題ないでしょ?」

「確かに……」


 魔法契約は、この世で最も効果の強い契約書だ。

 自身の魔力を込めたインクで書き、そこに書かれた内容に背いた場合は、契約相手の自由な罰則を与える事ができる。

 もし契約相手が死ねと言えば、魔法が発動して死ぬという事もある。

 だからこそ、本当に契約をやぶる気がないという何よりもの証明になる。


「これから私とこの男が行う戦闘に関して……ルールは先に線を出た方が負け。武器等は何を使ってもいい。私が負ければフィーの契約はなかった事にし、私が勝てば金貨1000枚を貰って、もうフィーに関わるのはやめて貰うわ。そして、戦闘の結果がどうであれ、決して他言しない。この内容でいいわね?」

「あぁ……ん? いや、ちょっと待ってくれ」

「何?」

「これだと俺達も他言出来ないじゃないか。流石に俺達は戦闘の結果で勝ったから魔神種を取り返したのだと、他言しなきゃいけない時が来るからな。これだと困る」

「あなた達が勝つことなんてないんだから、そんな心配いらないのに……なら、私のみこの戦いで怪我を負わされたとしても、決してそれを他言しないっと、これならいいのね?」

「そうだな」


 アキナ様と、奴隷商はお互いに契約内容を確認している。

 魔法契約はインクに魔力を込めるだけなので、特別な紙とかも必要なく、適当な紙に書いても大丈夫だ。

 それに魔力が自身の証明となるため、契約内容がちゃんとしたフルネームとかでない、私とかこの男とかでも問題ない。


「なら、あなたの魔力もインクに込めて」

「ああ」


 契約内容の確認を終えたようで、お互いサインをしている。

 サインといっても魔力を込めたインクで書けば何でもいい。

 "あ"とかだけでもちゃんと契約書として効果が発動するものだ。


 そして、サインをし終えると、書かれた文字が光った。

 紙がただの紙ではなく、魔法契約書としての効果を発揮しだした事になる。

 これで本当にアキナ様が戦うしかなくなってしまった……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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