513 見解
フィール視点です。
「お前に何が分かるっ! 俺は、俺達の故郷は! 人類種共に焼かれたんだぞっ!」
フェルルの悲痛な叫び……
簡単に気持ちが分かるなんて事、言ってはいけなかったのに……
「故郷を焼かれた……」
「そうだっ! 人類種達は、俺達の故郷を焼き尽くした! 生き残ったのは、俺とミララだけだ……」
人類種が妖精種達を焼き尽くすだなんて……
おそらく、ハンター達は妖精種が火を苦手なのを利用して、捕まえようとしたんだろう。
でも火が強すぎた事で、止められなかったんだ……
「ちょっとフェルルー、あんまり大きな声を出さないで。魔物に気づかれるわ」
「うるさいっ! お前みたいな人類種が、俺達の故郷を燃やしたんだっ!」
パシッ!
「うがっ!」
私とフェルルの方に近づいてこられたアキナ様に、フェルルが怒鳴り付けるように叫ぶと、アキナ様はフェルルの額を指で弾かれた……
軽く弾いたようにしか見えなかったけど、フェルルは体のバランスを崩してしまう程の衝撃を受けている……
「そんな無知な奴らと、一緒にしないでくれる?」
とても冷ややかな瞳……
アキナ様は怒っておられるみたいだ。
「私、無知は嫌いなの」
フェルルに向かってそれだけ仰られたアキナ様は、また歩き出された……
「フェルル、大丈夫?」
「別に……これくらい……」
「ごめんね……」
「なんでお前が謝ってるんだ」
「あ、その……気持ちが分かるなんて言ってしまって……」
「もういい」
フェルルもアキナ様を追うように歩き出した……
フェルルとミララは、大切な故郷の皆を人類種に殺されている……
だからフェルルはあんなにも人類種を憎んでいたんだ……
ミララだって間違いなく人類種を憎み、恐れている……
馴染んでくれればと思っていたけど、私の考えは本当にいつも甘過ぎるな……
「おい、行くぞ」
「えぇ」
フェルルは立ち止まっていた私に声をかけてくれているし、辺りも警戒している。
もう感情的にはなっていないけど、アキナ様の事を探っているみたいだ……
「フェルル。アキナ様はね、とても博識なのよ」
「……それがなんだ」
「魔法に詳しいのはもちろんだし、世界の事にも詳しいわ。各種族の事にも詳しくて、その種族の人でも知らないような種族の特徴までを知っておられるわ」
「……たとえば?」
「フェルルは、地霊種の魔力量が多いという事を知ってた?」
「何?」
「地霊種はね、魔神種に次いで魔力量が多いそうよ。魔力を感じる事は出来ないけど、術式は使えるから、相当高度な術式も使えるわ」
「まさか……」
やっぱりフェルルも知らなかったみたいだ。
地霊種達ですら知らなかったんだから、妖精種にも伝わっていなんだろう。
「だから、俺達が本当は火を苦手としていない事も知っていたのか?」
「そうだと思うわ」
「じゃあ、人類種共に知られてしまっている訳じゃなくて、あいつが知ってるだけって事か?」
知られてしまっている……?
「妖精種は、大火を苦手としている事を隠しているの?」
「あ、あぁ……」
「多少の火は大丈夫なのよね?」
「そうだ。多少の火くらいなら問題ない。でも俺達妖精種は、大火……火の海を見ると体が動かなくなるんだ」
体が動かなくなる……
それは燃える故郷を前にしても、どうする事も出来ない程の、本能からくる火への恐れなんだろう……
「でも、人類種達は勘違いをしている。俺達が火を苦手なんだと思っている。だから火を使い、脅してくる」
「私は以前、火を向けられて恐れていた妖精種を見た事があるわ。あれは……」
「本当に火が苦手だった可能性もあるが、まぁ演技だろうな。多少の火を向けられるくらいはどうってことないが、それに怯えておくことで、自分を守れるからな」
奴隷をダンジョンに行かせて遊ぶ人類種達がいるように、苦手なものを敢えて近づけ、その怯える様子で遊ぶ奴等もいる。
大して怖くはないものに怯えておくことで、それ以上のものが来ないようにしていたんだ。
妖精種……逞しい種族だな。
「俺達と違う故郷の妖精種だって、皆そうやって自分を守ってるはずだ。人類種が種族の特性を知るのに使う本は同じはずだからな」
「どういう事?」
「ティーチを知っているか?」
「ティーチ・トゥ・ルース?」
「あぁ。そのティーチが本を書いて知識を広めていた頃は、妖精種達は全員1ヵ所に集まっていたんだ」
それはおそらく、古の種族間戦争が人類種の勝利で終わり、ティーチが他種族に種族の特性についてを広めていた頃の話……
妖精種が1ヵ所に集まっていたというのにも納得ができる。
魔神種だって、現在進行形で1ヵ所に集まっているんだから。
「ティーチの本自体には炎魔法が苦手で覚えられないと書いてあるだけだが、それを読んだ他種族達は勘違いをするんだ。妖精種は火が苦手だって……」
「確かに、私達もそう思っていたけど……」
「そう思うようにするため、本ではないところでティーチが本人が広めてくれたんだ! 妖精種は火が苦手だって」
「……え? ティーチ本人が広めた?」
ティーチ本人の話なんて、初めて聞いた……
本が発見されるばかりで、どんな人なのかは何も分からなかったのに……
「俺の故郷ではそう言われていたぞ? ティーチはとても正直な男で、本に間違った知識を書く事は出来なかった。だから変わりに全世界を周り、妖精種は火を恐れているという認識を人類種に植え付けたんだって」
「正直な男なのに、嘘を広めて回ったの?」
「本に正直なだけだったんだろ? なんにせよ、凄い人だ。人類種の国々を旅するのは、相当に恐ろしいことだったはずなのに……」
「ちょっと待って! フェルルは、ティーチを妖精種だと思っているの?」
「あ? そりゃそうだろ?」
私とアズリィさんの見解では、ティーチは人類種だ。
そう考えるのが一番筋が通っていると思う。
でもフェルル達の故郷……いや、妖精種達には、ティーチは妖精種として伝わっているみたいだ……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




