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奴隷の国  作者: 猫人鳥
1章

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49 遺憾

「大分長々と喋ってしまったわね。そろそろ行きましょうか」

「あ、はい。すみません……」


 とっくに食事は終わっていたというのに、ずっと食堂で喋っていた。

 昼時が過ぎていたことで人があまりいなかったとはいえ、食堂の店員さんにも迷惑だっただろう。


「別にフィーが謝る事じゃないわ。私が喋り過ぎただけだし」

「いえ、大変勉強になりました」

「そう? なら良かったわ」


 この世界の歴史、マジックキャンセラーや結界の事、私が知らなかった事をたくさん教えてもらった。

 アキナ様は何者なんだろうという疑問だけは残るけど……


 部屋に帰ってきたので、ここからは転移魔法の練習だ。

 でもその前に、アキナ様に紅茶を淹れてお出しした。


「あら、ありがとう」


 たくさん話してもらったし、喉も乾いておられたはずだ。

 笑って受け取って下さったし、喜んでもらえたようで良かったと思う。


 さて、私も転移魔法を頑張ろうか……と、意気込んでいると、


「フィー、もう不安要素はない?」


と、アキナ様に聞かれた。

 さっきあれだけ魔神種の国がどうだと話してしまったから、アキナ様も心配して下さっているのだろう。

 結界の凄さも分かったし、マジックキャンセラー等の存在すらも知らない魔神種の無知という弱点でさえ、私達の生活を守る為が故の事だったのだと分かった。

 だからもう大丈夫だ。


「私のように愚かでなければ、魔神種の国の結界は私達を守ってくれる強固なものだと分かりましたから。もう私が心配する必要はありません」


 私がそう返すと、アキナ様は少し悩まれてから、


「んー、フィーの不安を煽っちゃうかなーと思って、さっきは言わなかったんだけどね、結界は壊さなくても通る方法があるのよ」


と仰った。


「えっ……結界を通る方法ですか?」

「壊そうと思ったら魔力が足りないから無理なんだけど、通り抜けるだけならわりと簡単に出来るわ。式に干渉して、通れるように組み換えればいいだけだから」


 壊さなくても通る事ができる……

 そんなのは壊しているのと一緒だ。

 そんな事をされたら、結局魔神種は滅ぼされてしまう……


「ただこの方法は、相当結界について詳しくて、構造を完璧に理解している人じゃないと出来ないから、そこまで気にしなくていいわ。一応そういう方法もあるって事だけね」

「そうなんですか……」

「あぁ、ごめんね。やっぱり不安を煽っちゃった? でも魔神種の結界維持担当の人だって、定期的に式の暗号は変えているでしょ? ずっと同じ結界式を使うなんて危ないもの。そうなると、結界式をぱっと見ただけで理解しないといけないから、流石にそんな事ができる人はそうそういないわ。だから書き換えられる心配も必要ないから」

「そうそういないって事は、いるにはいるんですね」

「まぁね」

「つまり、アキナ様には出来ると?」

「……まぁね」


 やっぱりアキナ様には出来るのか。

 逆に言えばアキナ様だからこそ出来るという事でもある。


「フィー、大丈夫?」

「はい。アキナ様みたいな方がそんなにたくさんいる訳ありませんからね。大丈夫です」

「そうね。それは間違いないわ」


 ご本人もこう仰られた事だし、大丈夫だろう。

 通る方法があろうと、アキナ様がさっきからずっと心配ないと言って下さっているんだから、これ以上気に病む必要なんてない。


「ねぇ? フィーはあの魔神種の結界を作った人とか、維持している人の事は知っているの?」

「え、知りませんよ?」


 確かに、それだけの凄い結界を作った人は誰なんだろう?

 結界を維持している人ですら聞いた事がない。

 そんなに凄い人なら、魔神種の有名人でもおかしくないのに。


「アキナ様がご存知ないのは珍しいですね。結界を作った人が気になるのですか?」

「人が気になるというか、あの結界はちょっとおかしいと思うのよね。何であんなのにしたのか少し疑問だったんだけど……」

「あの結界がおかしいのですか?」

「本当に守るつもりなら、魔神種も出られないようにするべきだと思わない?」

「それは確かにそうですね」


 もし出られないのなら、私のような愚か者も存在しなかっただろう。

 魔神種のみが出入り可能なのには、何か理由がある筈だ。


「あれじゃまるで……」

「まるで?」

「ううん。何でもないわ」


 何かを言いかけてやめられたアキナ様。

 アキナ様は一体、何を気にされているんだろうか?


「えっと……気になりますか?」

「ううん、そんなには気にはならないわ。それに今私が関わる事ではないからね」

「そうですか……」


 なんだろう……

 アキナ様が"気にならない"と仰った時のこの遺憾は……

 私はきっと期待していたんだ。

 アキナ様が気にして下さったのなら、もしかしたら魔神種の国へ帰れるかもしれないという事を……


 本当にいつまで引きずるつもりなんだろうか。

 もう私はアキナ様にお仕えすると決めたんだ。

 これからはアキナ様の為だけに生きていく。

 だから魔神種の国の事なんて、思い出してはいけない!


 もう魔神種の国の事を考えるのは、これを最後にしよう……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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