39 高配
「夜も更けた事だし、そろそろ魔物狩りに行きましょうか。フィー、魔力切れになっておいて」
「はい、アキナ様」
アキナ様の指示に従い、魔力切れになりそうな大きいものを≪アスポーツ≫で転移させてみた。
そして案の定の魔力切れに……
気怠さが強いけど、自分の魔力だけでこれだけ大きいものが動かせたという事実は、本当に嬉しく思う。
「何度も着替えさせちゃって悪いけど、やっぱりその服でボーアと戦うのは危ないから、動きやすそうなのに着替えておいてね」
私の為に着替えるように仰られているのに、"悪いけど"と気を遣って下さる。
それに、私ばかりこんなに色々な服に着替えさせてもらっている。
アキナ様はご自分の服を1着しか持ってないというのに……
しかも私は、折角の服をボロボロにしてしまうので、流石に申し訳なさ過ぎる。
「あの、アキナ様。昨日と一緒の服でもよろしいですか?」
「いいけど、ちょっとボロボロ過ぎじゃない? それは服っていうより最早布切れよ?」
「ですが、また新しい物をボロボロにしてしまうのは……」
「うーん……そうね、フィーがその方がいいのなら、それでいいと思うわ。それだけ防御力が皆無な服なら、基礎体力を上げるのに丁度いいかもしれないし。でも怪我をしやすいんだから気を付けるのよ?」
「はい」
買っていただいた服をこれ以上ダメにしたくはないので、昨日と同じ服に着替えた。
そしてまた上からローブを羽織って、アキナ様の重いリュックを背負う。
気のせいかもしれないけど、リュックが軽くなった気がする。
これは中のお金が減ったからなのか、私の力が増えたからなのか……?
「どうかした?」
「このリュック、軽くなりました?」
「あぁ、ポーションとかを買ったからね。お金は減ったわよ。あとはフィーの力が増えたんじゃないかしらね」
私の力は確かに増えただろうけど、ここまで変化を感じる程はいきなり増えないはずだ。
となると買い物で相当お金を使われたんだろう。
さっき転移魔法の練習でたくさん飲んでしまったポーションとか、実は高額のものだったのかもしれない。
金貨が減るくらいだし……
「あの、アキナ様? ポーションはおいくら位の物だったんですか?」
「……さーて、じゃあ今日はとりあえずこの片手剣で行ってみましょうか!」
私の質問はとてもわざとらしくスルーされてしまった。
きっとポーションはかなりの高額なんだろう。
私がたくさん飲んだ事を気にしないように、気遣って下さったんだ。
ここまでしてもらったのに、値段などを気にしていては逆に申し訳ない。
そのうちどこかで売っている時にでも値段を知ればいい事なので、今はもう気にしないでおく。
「えっと、片手剣ですか?」
「そうそう。簡単に言えば、私が使っているこの短刀の両側に刃がついているものね。使う時は大体利き手に片手剣を持って、反対の手に盾を持つのが一般的なんだけど、盾は私達にはあんまり必要ないからね」
「そうなのですか?」
そういえば、アキナ様は武器屋で盾は要らないと仰っていた。
マジックキャンセラーを使われたら≪シールド≫を発動出来なくなるんだし、盾にも需要はありそうなのに?
「盾っていうのは、知能があって、人の急所を狙ってくるような相手だと必要になるのよね。だから普通の魔物にはあんまり必要ないわ。特にボーア相手には、持っていても何の意味もないの」
「ボーアは考えもなしに突進してくるからですか?」
「そうね。ボーアは威力が凄いから、あの突進は相当鍛えていないと盾じゃ防げないわ。腕が痛くなっちゃう」
実際に昨日何度も突進されたから分かるけど、間違いなく腕は痛くなる程度では済まないだろう。
アキナ様なら本当に痛い程度の事なのかもしれないので、冗談を言っておられるのかが分からない。
「今は必要なくても、将来的には盾を使った方がよくなるかも知れないけどね」
さりげなくアキナ様はそう仰られたけど、それはつまり、将来的には知能があって、人の急所を狙ってくるような相手と戦わなければいけなくなるという事だろうか?
それこそ、ハンターのような……
そもそも、私が魔法に頼らずに戦えていたら、ハンターに捕まって奴隷となることもなかったはずだ。
これは多分私だけではなく、魔神種全員に言える事だろうけど、魔神種は無知過ぎるんだ。
マジックキャンセラーもポーションも知らないで、魔法を誇り、魔法に頼って生きているんだから……
……いや、今はそんな事を今考えている場合じゃないな。
私はアキナ様の為に、アキナ様の役に立つ存在になるって決めたんだ!
「さぁ、行くわよ。フィー」
「はい、アキナ様」
アキナ様から魔石をお借りして、昨日と同様に≪インビジブル≫を使い、警備騎士に気付かれないように門を抜けた。
森まで来たところで≪レリース≫で≪インビジブル≫を解除して、アキナ様に魔石をお返しする。
そしてすぐにボーアが出てきたので、私は片手剣を構えた。
「片手剣はやっぱり片手で扱える事に意味があるからね。昨日みたいに両手で力を加えたりしないで、できるだけ片手で頑張ってみてね」
「はい」
「そうしたら空いている方の手で魔法を使ったり、別の武器を持ったりとかできるからね」
「なるほど……」
ガァルルルルッ! フシュー!
アキナ様と悠長に話している余裕はなさそうだ。
ボーアは突進してくる気満々だったので、私も片手剣を構えて臨戦態勢に入った。
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